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モンスターを鎧にする仕事  作者: タック
第二章

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お前をモンスター素材にするけど良いか?

 グラウ・グスタフは人型形態に戻って、ニヤリと笑っていた。


「あ、アイゼンシルトさん!! まだグラウ・グスタフが!!」


 鋼鉄の守護者メンバーたちが指差して叫ぶが、アイゼンシルトやイストにはわかっていた。

 すでにグラウ・グスタフは瀕死だと。

 それに油断したところを攻撃してくるような女ではないことも。


「あーあ、負けちまったぜ……」

「…………ごめん、グラウ・グスタフ。致命傷を負わせてしまいました」

「それはアタシが強かったってことかい?」

「…………はい、手加減できずに。ちゃんと線路が敷かれていたところで戦っていたら勝敗がどうなっていたかわかりません」


 グラウ・グスタフは仰向けにバタンと倒れ込み、両手両脚を広げながら満足げで優しい表情をしていた。


「そっか……それなら最後に夢を叶えられた」

「…………夢?」

「言わせんなよ、恥ずかし――」

「お前をモンスター素材にしていいか?」


 今生の別れの良い雰囲気なところにイストが割り込んできた。

 周囲の人間も『さすがに空気を読まなさがすごい』とドン引きだ。


「カッカッカ! 面白い男だな! ああ、よく見たら洞窟で腕を吹き飛ばしたはずの人間か……。今、理解した。装備、素材……なるほどな」

「俺の勘が言っている。お前で作る装備は強い」

「強い……か。いいねぇ。強いのは好きだ。でも、どうせならレイリに着られてぇ」

「なぜレイリなんだ?」


 イストからしたら、さらっただけで関係が無いレイリの名前が出てきて疑問に思うのは当然だろう。

 グラウ・グスタフは頬を赤らめながら言う。


「す、好きになっちまったからだよ」

「お前、そんな感じなのに恋多き女なのかよ」

「うるせぇな! 別に良いだろ!! 断るならこの場で自爆してやってもいいんだぜ!!」

「それは素材にならないから本当に困る。良いだろう、レイリ用にお前を使うと約束しよう。良さそうな装備アイディアも浮かんでたしな」


 イストはそう言い放つと、グラウ・グスタフの返事を待った。

 だが、その時は訪れなかった。

 黙祷する。

 彼女は機能停止していたからだ。


「人間も機械も、普段はしぶとい癖に死んじまうときは一瞬だな……。列車砲子爵グラウ・グスタフ。お前の素材は大切に使わせてもらう」


 そこへ解放されたレイリが走ってやって来た。


「イストっち!! 勝つと信じていたよ!!」

「俺が作った防具が負けるわけないからな」

「ヘラクレスの籠手の方はフツーに破壊されてたけどね」

「う、うるさい! アレは一点物じゃない!」


 レイリは気が付いた。

 グラウ・グスタフが動いていないことに。


「そっか……。あーしはあんまり考えたことがなかった……。戦えば相手も死んじゃうんだよね……」

「まぁな。今まで相手は喋らない奴ばかりだったしな」

「ちゃんと弔ってあげなきゃ……。あーし、捕まってるときに優しくしてもらったし……」


 レイリの眼から大粒の涙がこぼれ落ちそうになっていた。

 それに対してイストは真顔で一言。


「いや、コイツもモンスター装備の素材にするぞ?」

「……え?」

「大丈夫だ! ちゃんと本人から了承ももらったし、気持ちよく素材として使える!」

「そ、そういうことじゃ……!? ああ、でもイストっちだもんね……涙が引っ込んじゃったよ……」

「好きなレイリの防具になりたいってさ」

「バカ……死ぬまで戦わなくてもよかったじゃん……」


 そこへようやく王国軍とライリオン王も駆け寄ってきた。


「おぉ、レイリ!! 無事だったか!!」

「パパ、こんなところまで来たら危ないっしょ。王様なんだから」

「馬鹿者ッ!!」


 大声が響き渡った。

 レイリはビクッとしてしまう。


「娘が危険なときに何もしない親がいるものか!!」

「だ、だからって王国軍まで率いて……」

「彼らは有志だ」

「……まだいたんだ、そんな気概がある人たちが軍に」

「お前から見たら気概のない王国だったかもしれない。だが、それはしたくてもできなかったのだ……。それを情けなく思い、最後に一矢報いてやろうと……」

「イストっちたちがいなかったらどうなっていたことやらだね」


 レイリの笑顔はイストに向けられた。

 それに気が付いた王が頭を下げる。


「い、いや、王様にそんなことをさせるわけには……」

「イスト殿!! 貴方は娘の……いや、この国の恩人だ!! 王である余が頭を下げるのも当然であろう!! ここに感謝の意を表する!! ありがとう、人類の英雄!!」

「そこまで言われると照れるな、悪い気はしないかも!」


 イストは、ふふんと調子に乗った。

 しかし、レイリオン王は気が付いてしまった。


「そういえば、イスト……? イスト……。失礼ながらイスト殿、其方の名字は?」

「え? レイリがヒューランドって付けてくれたけど」

「お前だったのか!! 結婚は許さん!!」

「突然なに!?」


 状況が分からないイストは、ただ驚くばかりであった。

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