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モンスターを鎧にする仕事  作者: タック
第二章

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モンスター防具は各国のバランスを崩す

「それじゃあ、ウーちゃんは怪我で本調子じゃないからハビリスの町の防衛兼休息で残って、それ以外はグラウ・グスタフが占領するローデシエンシス村へ直行でいいのよね?」

「ああ、アルプス。それでオッケーだ。俺はヘパイストスの移動工房の中で作業を続ける」

「本気? 移動できる工房って言ったって……ようするにあたしが収納して運んでいるだけだから、何かあったら一生出られないかもしれないのよ?」

「お前を信じているから大丈夫だ」


 アルプスはまんざらでもなさそうな表情をして、工房の外へ出て行ってしまった。

 少しだけ揺れたので、空間収納されて移動開始したとわかった。

 これで内部にいるのはイストと、アイゼンシルトだけだ。


 イストは装備の図面を眺め、モンスター素材を加工し始めた。


「なぁ、アイゼンシルト。お前は元は機魔国の人間――もとい機体なんだろう? グラウ・グスタフって奴も知り合いじゃないのか?」

「…………少し前の知り合いではありますね」


 アイゼンシルトは70年前に人王国にやってきたので、時間感覚が随分と人間と離れているようだ。

 下手したら一世紀前の知り合いだろう。


「そいつと戦って平気なのか? 俺だったら友達と戦うような感じになったら嫌だけどな」

「…………友達、ではありません。同じ十機人だった姉妹のようなものです」

「なおさらダメだろ」

「…………元々、機魔国の女王であるロート・フロッテに忠誠を誓う者がいても、十機人同士の仲間意識というのは薄かったですから」

「仕事の同僚的なものか」


 その割にはアイゼンシルトの表情は複雑そうだ。

 いつもは機械的なポーカーフェイスなので、少し新鮮ではある。


「…………当機に一番近いフレーム――ようするに兄であるアイゼンファウストのことを、グラウ・グスタフは気に入っていました」

「気に入っていた?」

「…………人間の言葉で言えば、一方的に恋愛対象として見ていたということです」


 イストは驚いて噴き出してしまった。


「あ、あの男勝りのメカ巨女が? そもそも、機械にもそういうのはあるのか?」

「…………個体差があるようです」

「アイゼンシルトもあるのか?」

「…………マスターに対しては比較的ありますよ」

「そ、そうか。ありがとう」

「…………どういたしまして」


 アイゼンシルトのような相手から、割とストレートに好意を伝えられるのは悪くはないが、何か照れくさいものがある。

 それは無意識の内にウリエルとアルプスのヤバさが身に染みていて、アイゼンシルトの方はかなり性格がマトモだからだろう。

 しかし、こういう話を聞くと少し思うところが出てきた。


「なぁ、アイツらは人間と戦うことを止めたりってできないのか? それだけの知性を持ってるように思えるんだが」

「それは無理です」

「なぜだ?」

「神がそう運命を定めたからです」

「は?」


 イストは一瞬、何を言われているのか理解できなかった。


「…………この世界は地母神マザーバビロニアが創造したと伝えられています。そのマザーバビロニアからの神託を受けた機魔国の女王が、人王国を攻めているとのことです」

「地母神……マザー……? なんだって? えーっと、つまりその神様に言われたから、人王国が攻められているということか?」

「…………らしいです。女王以外は神託を聞いていないので正確なところは不明ですが」

「もしかして、他の蟲魔国や、不死魔国もそんな馬鹿馬鹿しい理由で……」

「…………神の言葉とはそういうものです。同時に、人王国の古き王も国を守れとの神託を聞いたとかで、正義は我にありと主張をしていますね」

「どっちも正義を主張……? つまり誰かが嘘を吐いていたりする可能性があって……すげぇややこしくないか?」

「…………そこからはもうシンプルに力で決める――つまり戦争ということでしょうね。長い時間戦い続けているので、今さら止めることも難しいでしょう。むしろいつでも滅ぼせるような戦力差なので止める意味がありません。イストさんが来るまでは、ですが」


 イストは頭が痛くなってきた。

 大昔に地母神のお告げ複数あって、主張が異なるから戦争をしているというのだ。

 転移前の現代世界でも『お菓子屋が窃盗に遭って、フランス王に陳情してそこから戦争のキッカケになった』という歴史もあるくらいだ。

 意外と戦争のキッカケはこういうものなのかもしれない。


「何かもう色々と面倒くせぇな、国同士のことは国同士でやってほしい感じだ」

「…………そのパワーバランスを崩すのがマスターですね」

「はぁ~……。もういい、作ることに集中するか。図面通りレオタード部分は変更無し、腕部、頭部のパーツもそのままだ。ただし、列車砲子爵グラウ・グスタフの主砲対策に脚パーツと、両手のダブルシールドの部分を急ぎ改良するぞ」

「…………改良?」

「アイツをぶっ倒す秘密兵器ってやつだ」


 ――そんな中、移動工房の中に魔術経由でアルプスからの通信が入った。


「イスト、大変よ!! ヒューランド軍がレイリを奪還するために先に出発してるみたい!! それも王様が直々に指揮を執って!!」

「おいおい、マジかよ……」

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