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モンスターを鎧にする仕事  作者: タック
第二章

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両腕を失ったら? 両腕を防具として強化する

「い、イストさんの両手が!?」


 マティスの背中で死にそうなイストを見て、ウリエルが悲鳴を上げていた。

 作業小屋にいた他のギルドメンバーたちも大騒ぎとなっている。


「わ、私が付いて行かなかったから……私さえ付いて行けば……」

「おい、ウリエル。泣きながら抱きつくな。お前らしくもない」


 いつもだったらイストはベタベタされたら両手で引っぺがすのだが、今はそれもできない。

 顔色は土気色に近く、瀕死の状態だと誰から見てもわかる。


「ウーちゃん、どいて! 混乱するのはわかるけど……!」


 文字通り飛んできたアルプスが、ウリエルを躊躇なく引き剥がした。


「アルプス、別に俺は死なないぞ。両腕が千切れ飛んだだけだし」

「結構な確率で死にます!! もうあたしの大切な人を失わせるなんて看破できませんよ!」


 アルプスは傷口の確認をし始め、そこへ袋に入れて冷やしていた両腕を持ったマティスが憔悴しながら声をかける。


「イストさん側は回復魔術で消毒もしておきましたが……器用貧乏の俺じゃ重傷は治療できなくて……」

「初動としては充分! そっちは千切れた腕ね。あとはくっつくかは時間との勝負よ……!」


 そこへイストが待ったをかけた。


「ちょっと時間をもらっていいか?」

「いいわけないでしょ!!」

「なんかその手、防具な気がする」

「……は?」


 そのイストの信じられない発言に、一同は呆然としていた。


「だって、レイリを守ったんだぞ? つまり防具と言っても過言ではない。異世界人なんてモンスターみたいなものだし、これはもうモンスター防具だな」

「な、何を言って……こんな状況だから気が動転して……いや、いつも頭がおかしかったわね……」

「ちょっとそこにいあるナイフを口に咥えさせてくれ」

「それどころじゃー――」


 いち早く治療したいアルプスだったが、泣き止んだウリエルに止められてしまう。


「イストさんは一度言い出したら、本当に死ぬまで言うことを聞かないと思うので……どうぞ、ナイフです。両腕はこのくらいの位置に固定でいいですか?」

「うむ、ウリエルは俺のことがよくわかってるな。さすが最初の実験体だ」

「冗談を言う暇があったら早く終わらせて、みんなを安心させてあげてください」


 イストは口に咥えたナイフを器用に動かし、ウリエルに持ってもらっている自分の千切れた腕の骨にスマイルマークを刻んでいく。

 正気の沙汰ではない。

 一般ギルドメンバーたちはドン引きして、外で嘔吐してしまう者までいた。


「よし、これでモンスター防具になった気配がするぞ。それじゃあ、アルプス。俺の腕をくっつけてくれ」


 呆然としていたアルプスだったが、はっと気が付いて急いで上級回復魔術を使うのだった。




 ***




 イストは元に戻った両腕でガッツポーズをしていた。


「よし、元通り! 楽勝だな!!」

「何日も意識不明で生死の境を彷徨っていた人とは思えませんね……」

「まったくだわ。治療魔術は傷を治すことはできても、体力を消費するからそのまま死んじゃうケースも多いのよね……」


 ベッドの横で苦笑いをするウリエルとアルプス。

 他にも大勢の人間が覗き込んでいるので、プライベートというものはないらしい。


「こんなにも楽しそうなモンスター防具作りがありそうな世界に来たんだぞ? そう簡単に死ねるかよ。それじゃあ、さっそく取ってきたサイバーカメレオンを素材にして――うおっ、クラクラする」


 イストはベッドから出て立ち上がったのだが、フラッと倒れそうになってしまった。

 それをウリエルとアルプスが左右から支える。


「さすがに体力が戻ってないというか、物理的に血が足りないと思うのでいきなりはダメだよ」

「そうですね。まずはいっぱい食べて寝ること……それと……臭いのでお風呂に入りましょう」


 そう言われてイストは自分の身体を嗅いでみるも、自分ではあまりわからない。


「風呂か……。たしかに身を清めてからモンスター防具を作らないと、汚れが移ってしまうかもしれないな……」

「基準そこなんですか。一人じゃまだお風呂は危ないかもしれないから手伝いますよ」

「さすがに異性に手伝ってもらうのは俺でも恥ずかしいぞ……」

「さぁさぁ、遠慮せず!」


 ウリエルとアルプスの眼が若干怖い。

 そこへ丁度良く、ユーダイとマティスが目に入った。


「よし、ユーダイとマティス。風呂を手伝ってくれ!!」

「えっ!? イストさんってもしかして……男の方が好きなんですか!?」

「そ、そんな……だから今まで……」


 なぜかショックを受けているウリエルとアルプスはスルーしたのであった。

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