監獄ヤドカリで絶品料理の宴
後書きで重要なお願いがあります。
ご協力をお願い致します。
「さてと、とりあえずやることは色々あるぞ」
「おっ、イストっち。やる気だねぇ~☆」
イストはリストを書いた紙をバッと見せた。
ちなみに現地文字は少しずつ教えてもらいながら書いている。
「監獄ヤドカリの解体と運搬、食べられるかの調査、新工房作り、防具作り……とまずはこんなところだな。解体と運搬はすでに済ませているか」
イストたちがボロ工房に戻ってきているということは、そういうことである。
現地で監獄ヤドカリを倒したあと、その場のマンパワーを使って迅速に解体して、運搬もしている。
かなりの部分はウリエルの馬鹿力による物だが、冒険者数十人というのも使い勝手が良かった。
監獄ヤドカリだった素材は外に置かれている。
「あとは食べられるかの調査だが――」
「あ……、やっておきました。毒は無いのは文献で知られてたので、とりあえず焼いたり、煮たり……どうぞ。毒味済みです」
「お、ありがとう。えーっと、名前は?」
「自分はユーダイ・コールマンです。元兵士でクビになって、貧乏新人冒険者として落ちぶれてたんで、モンスターも料理し慣れてます」
金髪のロン毛をしたユーダイという冒険者は、苦労が顔に出ているような痩せ型の男だった。
「ユーダイ……何か俺が元いたところの名前っぽいな。雄大とか知り合いにもいたし」
「自分、異世界からの人間の名前からあやかって付けられたそうなので、その通りかもしれませんね」
「へぇ~、親しみが湧くなぁ。よろしく、ユーダイさん」
「あ、それなら呼び捨てでユーダイで結構ですよ」
「じゃあ、俺のこともイストと呼び捨てにしてくれ。ギルドリーダーとかになっても、堅苦しいのは嫌だしな」
イストはそう言いながら、ユーダイが持って来てくれた皿に載っていた監獄ヤドカリの肉を焼いた物と、煮た物を食べてみることにした。
「モグモグ……カニだこれ!! うっまっ!!」
「でしょう? モンスターの肉って不味い物だと思っていたのですが、それは普段食べている倒しやすいモンスターが不味いだけだったのかもしれませんね」
レイリは信じられないという表情をしたあとに、恐る恐る皿に残っていた肉を食べてみた。
「た、確かにちょーおいしい……! お城の料理に出される食材にも勝ってるよ、これ。もしかしたら……大型の強いモンスターを狩れば食糧不足も解決するんじゃ……監獄ヤドカリ一匹でもかなりの肉があるし……」
「可食部はそんなに興味ないから、そこはレイリに任せる」
「えっ!? 良いの、イストっち!? これを国に売るだけでも一財産稼げるっしょ!?」
「何度も言うが、ある程度の金があればあとは興味はない。防具に使える素材さえあれば良い」
「その変態性助かるぅ~☆」
「本当にコイツ姫か……」
イストとしては、今までのウリエル、アルプス、アイゼンシルトと違って、このレイリ姫は何かあるように思えてしまうのだ。
こっそりとアルプスに聞いてみた。
「なぁ、アルプス。レイリ姫ってヤバい奴だったりするのか……?」
「うーん、精霊眼で見たけど、善性の人ではあるよ。ただ――」
「ただ?」
「欺瞞、懐疑の精霊が少し寄ってきてるかも」
「嘘と疑い……か。まぁ善性の人間なら別に良いか」
「良いの?」
「別に良い人間だって、それくらいの感情は持つだろ。他の冒険者も念のため、ヤバそうなのがいたら教えてくれよ。防具作りに支障が出そうなレベルのがいたらで良い」
「ほーい」
イストとしては別に周囲の人間が〝完全なイエスマンでなければいけない〟というわけではない。
今までも、一癖も二癖もある奴らが集まっている。
「さて、素材狩りのあとだから腹が減ったな!」
イストの経験的に、腹が減っているとロクなことにならない。
それは異世界だろうと、全人類同じだろう。
「よし、みんなで監獄ヤドカリの祝勝会でもしようぜ!」
「イストさん、良いんですか? 自分たちには勿体ないくらいの美味い食材ですが」
「冒険者のお前らも遠慮するな、食い切れない量があるしな!」
冒険者たちはワァッと大盛り上がりだ。
疲れも溜まってきていたし、腹も減っていたところだろう。
「監獄ヤドカリに閉じ込められ続けて、ロクな食い物を与えられてなかったから助かります!!」
「さっすがギルドリーダー!!」
「うっひょー! ご馳走を食いまくるぞー!!」
「ちょっ、みんなさすがにお行儀が――」
レイリが一応お姫様っぽく止めようとしたのだが、グゥ~っとお腹が鳴る音がした。
その大きな音は明らかにお姫様のお腹から聞こえたのだが、さすがに指摘しにくいのでみんな黙ってしまっている。
「あ、あーしは全然お腹空いてないし……」
「レイリ。人間、嘘を吐かない方が楽だぞ?」
「う、うっさいっての!! そんなの言われなくてもわかってる!! イストと違っていつもあーしは――」
「ほら、食え」
最初に焼いたのがあったので、レイリの口に突っ込んでやった。
「むぐっ……モグモグ……」
「よーし! じゃんじゃん焼いて煮て作ってくれ!! 近くに川があるから、水浴びをしてきてもいいぞ! 風呂は沸かすのに時間がかかる!」
その一言で、数十人もギルドメンバーがいるのだから大賑わいだ。
何か言おうとしたレイリの声もかき消されてしまう。
そこから宴の時間となった。
酒はないのだが、肉さえあればどうにかなる。
焼いたり煮たり、生で食べ始める者まで現れる始末だ。
もう、まるっきり蟹である。
冒険者たちで盛り上がる中、レイリはイストを探していた。
「うーん、ギルドリーダーになったのなら決めてもらいたい事が結構あるんだけどなぁ……。あ、ウリエルっち、どこかでイストっち見かけなかった?」
食いしん坊なウリエルは、ハムスターのように口いっぱいの料理をゆっくりと飲み込んでから喋った。
「見てませんが、何となく見当は付きますね」
「教えて、お願い! イストっちさ~、何か抜けてる感じがするから、ちゃんと決めておかないといけないと思って――」
「まぁ、確かに抜けてるところはかなりありますね。でも、物作りへの情熱だけは尊敬しますよ。ほら、あそこ」
ウリエルが指差したのは、ボロボロの工房の片隅にいたイストだ。
よく見ると、皿に盛られた料理も食べずにアイゼンシルトの応急処置をしつつ、設計図に何かをすごい勢いで書き込んでいる。
レイリはそこからなぜか目が離せずにいて、ウリエルはそれに対して冷たい口調になる。
「レイリオン姫様」
「あ、あはは……教えてくれてありがと……もう友達だしレイリでいいっしょ……」
「私、王族とかそういう立場が嫌いなんです。特にお姫様とかが大嫌いです」
「えっ」
「ナチュラルに人を見下して、本人はそれに気付いてませんから」
「あ、あの……ウリエルっち……?」
「イストさんは確かにバカでマヌケでデリカシーも無い悪魔ですが、見下されるような人間種族ではないですよ」
「え、ええと……何を言っているかわからないな~……」
「出過ぎた真似でしたね。レイリオン姫様、お許しください。失礼致しました」
ウリエルは慇懃無礼に告げると、料理の皿だけ持って誰もいない森の奥へと行ってしまった。
レイリはそれを呼び止めようとするも声が出ず、その手は宙を彷徨うだけだった。
「あー、レイリ。ウリエルのこと許してやってくれよな」
いつの間にか工房からイストが出てきていた。
「イストっち、今の話を聞いてた……?」
「いや、何か喧嘩してたっぽい雰囲気なのはわかった。たまにあんな感じになるんだよな、ウリエル。普段はあっけらかんとしてるのに、何か誰にも話せない重い荷物を抱えてる感じ――って、おぉ!?」
イストの身体に、レイリが突然抱きついてきたのだ。
顔を押しつけていて、どうやら泣いているようだった。
「ど、どうした?」
「なんでもないよ……」
「わ、わけがわからん……」
姫と言っても、その身体は小さく、柔らかくて、ただの少女だ。
さすがに冗談ではなさそうだったので、いつものように引き剥がすこともできない。
しばらく、そのままでいるのであった。
面白い!
続きが気になる……。
作者がんばれー。
などと感じて頂けましたら、下の方の★★★★★をポチッとして評価をもらえますと作者が喜びます!
「ブックマークに追加する」と合わせて合計12ポイント追加になります。
ぜひ、この作品を多くの人に広めるためにご協力お願い致します。
<(_ _)>ぺこり




