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モンスターを鎧にする仕事  作者: タック
第一章

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少女の中身

後書きで重要なお願いがあります。

ご協力をお願い致します。

「ワクワク」


 イストはつい、口からオノマトペまで発してしまっている。

 それも仕方が無いのだろう。

 男子の憧れである人型ロボットの中身を見られるのだから。


「あ、あのイストさん……さっきはアイゼンシルトさんの裸を見るのはNGみたいなことを言ってませんでしたか?」

「アイゼンシルトは稼働して70年……つまり70歳なんだぞ!? 充分に成人だ!」

「趣味に走ったらダブスタになるという、幸せすぎる性格ですね……」

「そもそも俺が言っていたのは人類種同士の話で、機械種族という奴には当てはまらないからな! しかも、これは医療行為だ! 崇高なる行為なのだ! さぁ、見せてくれアイゼンシルト!!」

「何という早口なの……」


 ウリエルとアルプスがドン引きしている。

 しかし、イストはそんなことは気にしない。

 男の浪漫が止まらない。


「…………では、見せますね」

「うおおおおおお!!」


 アイゼンシルトは手で胸を隠しているが、表情的に恥ずかしいと言うより対人用のコミュニケーションのテンプレのようだ。

 イストも興奮しているが、その姿に興奮しているのではなく、その次に来るモノを予想してだ。


「もう見た目がやばいわね……」


 さらにドン引きするアルプス。

 アイゼンシルトは空いている方の手で脇腹辺りを探り、一気に〝開けた〟――。


「ひえっ」


 その光景にウリエルが違う方向でドン引きしている。

 人工皮膚であろう場所がミヂミヂと破れ、アイゼンシルトの内蔵であるパーツ類が露出しているのだ。

 血や臓物などは存在しないのだが、躊躇なく人間型の機械がそんなことをすれば驚くのも当然である。


「ほう、これはこれは……ぐへへ……」


 イストは涎を垂らしそうなくらいにイヤらしい顔をして、そのパーツ類を眺めていた。


「い、イストってこれで興奮するの……? 変態じゃないの……」

「アルプスさんも、何気ない文字で興奮したりするので〝おま言う〟ですよ」


 おま言うとは、お前が言うなの略である。

 どんぐりの背比べ、同族嫌悪、ろくな人間が集まっていない防具工房。

 ただイストはそういうのを気にせず、今はアイゼンシルトの中身を食い入るように見ているだけだ。


「パッと見ただけでもわかるな、これはかなりの年代物だ」


 アイゼンシルトの中身は現代人でも驚くような技術の集まりだった。

 人と同じ可動をできる金属フレーム骨格、筋肉の代わりとなるシリンダー、神経や血管のように全身に張り巡らされている光ファイバー的なケーブル類、心臓辺りにある大きな宝石。

 そのどれもがサビなどで汚れていて、歪んでいるところや、欠損しているところもすぐわかってしまう。


「なぁ、アイゼンシルト。質問いいか?」

「…………どうぞ」

「外装は自然修復されるんだろ? 内装は違うのか?」

「…………なぜ外装が自然修復されると気が付きましたか?」

「いや、腕がポロッと取れたら人工皮膚部分も一緒に破けるだろう? それがもうくっついていたからな」


 そのマジメなイストを見てウリエルとアルプスは感心しきりだった。


「すごい、よく気が付きましたね……」

「好きなものに対してだけ観察力が高くなるオタクあるあるね」

「だけってなんだよ、だけって」


 割と図星だが、一応のツッコミは入れておいた。

 そんな三人のコントをスルーしてアイゼンシルトが答える。


「…………外装の人工皮膚は時間で修復されますが、内装はメンテナンスが必要です」

「うーん、応急処置くらいはしてやれそうだけど、工具がないんだよなぁ。せめてレンチやドライバーとかが欲しいな……」

「…………それなら少しお待ちを」


 アイゼンシルトがそう言ったのでしばらく待つと、一匹の不細工な犬がやってきた。

 不細工すぎて魔物かとも思ったが、なぜかウリエルとアルプスはその犬に対して『可愛い!』と言っているので、ただの不細工すぎる犬なのだろう。


「この犬がどうしたんだ? お前のペットか?」

「…………これは博士が当機とセットで作った工具犬です」

「工具犬」


 あまりにも突拍子がなさすぎてオウム返しになってしまった。


「…………必要な工具に変身してくれる工具犬です」

「えーっと、お手」

『ワンッ!』


 手の平を出すと、ちゃんと前足の肉球を載せてきた。

 犬並みの知能はあるようだ。

 試しに頼んでみることにした。


「レンチ」

『ワンッ!』


 工具犬の前足がレンチになった。


「うお、すげぇ! ……けど、これ前足がレンチになっただけでどうすれば」

「…………工具犬ごと持って、回してください」

「なんで工具を犬にしたんだ……博士ってやつは……」


 きちんと犬のズッシリ感があって、これをレンチとして使うのかと考えると頭が痛くなる。


「とりあえず、これで緩んでいるところを――って、サイズが違うな」

『ウォフッ!』


 工具犬の前足レンチが少し小さめに変化した。


「すげぇ! 見た目とか、重さとか色々あるけど、すげぇな!!」


 それでアイゼンシルトの内装をレンチでギュッと締めていく。

 この締める作業も全力でやればいいというわけではなく、ほどよい力で締めないといけない。

 それと一ヶ所だけ先にキッチリ締めてしまうとフレームに歪みが出るかもしれないので、なるべく均等に少しずつ締めていく。

 初めてのロボットメンテだし、これくらい慎重でいいだろう。


「し、しかしこれ重いな……」


 インドア派のイストにとって、犬一匹を持ちっぱなしというのもつらい。

 手元がフラフラになってしまいそうになる。


「…………気を付けてください。下手なところを破損させると当機は重大なエラーが発生します」

「なんでお前の博士はこんな工具にしたああああああ!!」


 さすがに正論を叫んでしまう。

 悲しいかな、叫んでもパワーが出たりはしない。

 そんなことができるのはファンタジー世界の住人であるウリエルとかだけだ。


「仕方がないから私が手伝いますよ」

「う、ウリエル……お前……!!」

「メンテとかわからないから、重さを支えるだけですけどね」


 イストの後ろからウリエルが両手で腕を支えてきてくれている。

 微かに背中に対して、その大きな胸の気配を感じてしまう。

 ギリギリ当たるか当たらないかの奇妙な感覚で、むず痒いような気がする。

 そんなことよりもメチャクチャ腕が辛かったので助かるし、メカパーツに興奮しているのでどうでもいい。


「うおおおお!! (はかど)る!! これが筋肉ある奴のパワーか!!」

「私が筋肉ダルマっぽく聞こえるじゃないですか! 魔力強化ですよ、魔力強化!」


 レンチ、ドライバーで締められるところは締めていく。


「ふぅ~……。サビ落としとかもしたいけど、それは時間がかかるか……。オイルは手元にないしなぁ……。欠けたり歪んだりしてるパーツもどうにかするのは難しい。となると、残る修復箇所はあそこか……」

「あー、アレね。町で最初見たときはビックリしたわ」


 イストとアルプスが言っているのは、町で助け起こされるときに片腕が外れたことだ。

 さすがに人型のモノの片腕がボトンと落ちたら驚いてしまうし、脳裏に焼き付く。


「構造的には……腕の肩側の球体を、胴体へ填め込んで、そこに色々と補助のパーツが連動している感じか」

「…………その肩パーツは、当機が〝人類の盾〟として酷使してしまって、他よりもすり切れるのが早いんです。プラプラして、強い力を加えるとすぐ取れてしまいます」

「うーん、何か覚えがあるような……」


 そのとき、脳裏に浮かんだのは子供の頃の記憶だ。

 世界一有名なロボットのプラモデルをブンドドしすぎて、関節部が緩くなって悲しい思いをしてきた。


「って、ガン○ラの古いポリキャップかよ!!」

「ガ○プラ?」

「それなら直す方法がある」


 イストはこの前使った素材の残りを持って来た。


「イストさん、それって」

「〝アポロンの太陽鎧〟でも使ったにかわだよ」

「それをどうするのですか? 接着剤だから、外れちゃう腕と胴体を接着するんですか? でも、そうしたら肩関節が固定されて動かなくなっちゃうような……」

「こうするんだ」


 イストはアイゼンシルトの腕をもぎ取り、球体の方になっている軸へと膠を塗り込んだ。


「…………イストさん、固めてしまったら〝人類の盾〟としての役目が果たせなくなってしまいます」

「別に胴体にくっつけたりはしない。このまま離しておいて乾燥させるんだ」


 そこでアルプスが『あっ』と気が付いた。


「もしかして、緩くなった分、接着剤で面積を大きくして元通りにしようってことね!!」

「その通り。関節部が緩くなったとき、よくやる手法だ」

「…………なるほど、たしかに単純ですが合理的です」

「耐久度的にもたぶん大丈夫だろう。何かアイゼンシルトって存在自体が防具っぽいイメージできるから、モンスター素材とも馴染みやすそうだし」

「イストさんのこういうときの勘()()は当たりますからね」

「だけってなんだよ、ウリエル。まぁ、これで短時間に出来る応急処置は完了した」


 アイゼンシルトは胴体カバーを閉めて、服を着てからお辞儀をしてきた。


「…………ありがとうございます、名工イスト。最期に貴方のような存在に会えて幸運でした」

「最期って……縁起でもないな。でも、行く気なんだろう」

「…………はい」


 二人のマジメな雰囲気に、まだわかっていないアルプスが訊いてきた。


「行くってどこへ……?」

「決まってるだろ、スーパーロボットは自分の身を犠牲にしてでも仲間を助けに行くもんだ」

「ま、まさか一人で冒険者を助けにいくってこと!? 状況的に他の冒険者と一緒でも負けたのに、再び一人で!? 無茶よッ!!」

「…………たしかに無茶です。当機にインストールされたロボット三原則でも、自壊しにいくようなものだと停止命令が出ています。でも……」

「ロボット三原則じゃなくて、アイゼンシルトの気持ちが優先されたということだな」

「…………はい」


 アイゼンシルトは無表情でコクリと頷いた。

 それとは逆にウリエルは感情的に言う。


「それなら私も一緒に!!」

「…………ウリエルさん、貴方は強い。でも、冒険者たちを捕らえている敵は物理攻撃を与えると、冒険者ごと自爆してしまう機魔国の特殊賞金首モンスターです」

「……ッ」


 物理攻撃しかできない自分では役に立たない。

 ウリエルもバカでは無いのでそれくらいわかっていた。


「…………今この瞬間も時間が惜しいので失礼します」


 隻腕のアイゼンシルトは片腕を持ちながら、スタスタと作業小屋から出て行ってしまった。

 アルプスが恐る恐る手を上げてから発言をしてきた。


「あの~……あたしも魔術使えるから行った方がよかったのかな~……って……?」

「お前の魔術でどうこうなるくらいなら、アイゼンシルトが頼み込んでるだろう」

「だよね~……。だから攻撃魔術が得意なクララお姉ちゃんがいる〝鋼鉄の守護者〟に救助を頼みに来たんだし……。う~ん……無力感……何かできることがあったらいいのにな……」


 そのとき、イストは職人モードの真剣な表情で告げた。


「アルプス、あるぞ。お前にできることが」

「えっ、なに?」

「太ももを見せることだ!!」

「……は?」

面白い!

続きが気になる……。

作者がんばれー。

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<(_ _)>ぺこり

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