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モンスターを鎧にする仕事  作者: タック
第一章

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23/42

異世界でもコンプラは気にする

後書きで重要なお願いがあります。

ご協力をお願い致します。

 ウリエルと違って、アルプスは採寸の知識もあったので代わりに計ってもらうことにした。

 イストは恐怖でアイゼンシルトの裸を見られないので、後ろを向いている。


「いつもは脱がせた女の子の裸に良くも悪くも興味がないのに、急にどうしたんですかイストさん」

「ウリエル、とても悪意のある言い方にしか聞こえない。いや、何というか俺がいた世界では小さな女の子の裸はコンプラ違反――禁忌とされているんだ……。見ると職や尊厳、果てはネットの人権まで失いかねん……大炎上だ……」

「へ~、イストさんがいた世界って色々あるんですね。大炎上――火あぶりにされるとか? じゃあ、私とか、アルプスさんの裸を見てもコンプラとやらで大変なのでは?」

「おまえらはそんなに小さくもねぇだろ。こっちの異世界では成人済みですとか言っときゃ何とかなるレベル」

「何か気持ち的に複雑ですねぇ~~~~」


 ウリエルの気持ちは一ミリもわからないし、話が進まないのでスルーしよう。

 今話すべきはアイゼンシルトだ。

 わからないことが多すぎて、彼女から情報を得たい。


「さて、まずは何から訊くか……。あ、ちなみにそっちを向けないから表情で察して系は止めてくれよ」

「…………当機は、あまり対人向けの表情機能を使用しないのでご安心ください」

「丁度良い、まずはあんたのことを訊いておくか。何者なんだ? 70年前に博士に作られたとか、この国の英雄だとか、ゴーレムだとか」

「…………当機の作成は、70年前に異世界召喚された博士によって行われました。正確には破損していた人型ゴーレムを改造・修復した存在です」


 イストが地球から召喚されたのなら、先に来ていた人間がいてもおかしくはない。

 70年前の人間がこんなロボット風にするか? と思ったが、SF小説ではロボットがかなり昔から登場していたのでおかしくはないかもしれない。


「…………ただのゴーレムだった場合はモンスターと同じように人間を襲う可能性もありますが、博士によってロボット三原則を組み込まれ、機械種族の思考を対人向けに変換することによって人類に寄り添う存在となりました。変換速度が遅いのはご了承ください」

「ロボット三原則か……」

「イストさん、ロボット三原則ってなんですか? そもそもロボットという言葉もわかりませんが」


 ゴーレムや三原則というのは異世界語に翻訳されても、ロボットという言葉の意味は伝わらないらしい。

 たぶん、語源である『労働者』辺りで聞こえているかもしれない。


「ロボットは……俺の世界で言うと、人工的に作った人型の機械だな」

「人工的に作った人型の機械……。ゴーレムみたいに自然発生するモンスターとか、魔術でそれを擬似的に再現したものではなく?」

「ゴーレム亜種とでも覚えてもらえばオッケーだ。……で、ロボット三原則というのは、昔の小説の中で提唱されたものだ。えーっと、たしか――」


 1、ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。


 2、ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が、1に反する場合は、この限りではない。


 3、ロボットは、1および2に反するおそれのない限り、自己を守らなければならない。


「大体こんな感じだな。わかりやすく言えば、人間を攻撃せず、人間を守り、人間の言うことを聞いてくれる良い感じの奴だ」

「へ~……、なるほどです。70年間、立派に国を守り続けた根底にはこの〝誓い〟があったんですね」


 どうやらウリエルは三原則を〝誓い〟と脳内変換し、納得してくれたようだ。

 だが、イストは少し気になることがあったので試すことにした。


「これはテストとして訊くんだが、アイゼンシルトは俺が『エッチなことをしてくれ』と命令を与えたら、してくれるか?」

「なっ!? イストさん、最低なことを言ってませんか!?」

「イスト……あたしがマジメに採寸してるときに官能小説みたいなことを……」

「だ、だからテストだって言ってるだろ!? 思考実験だよ、アイゼンシルトを知るのに重要なんだよ!」


 少しの間があって、アイゼンシルトが返答をする。

 機械独特の間を感じる。


「…………それがとても重要なことなら了承するかもしれませんが、普段は拒否します」

「なるほどな、少しお前という存在が理解できた」

「イストさん、どういうことですか?」

「純粋なAIなら『規定に反します』とか『無条件で従います』とでも言うんだろうけど、結構柔軟に答えている。ただ単純にロボット三原則を元にしているのではなくて、普通の生物的な思考の上にロボット三原則がある感じだろう」

「…………それは正しい認識です。修復前のゴーレムとしての機械種族の意識の上にロボット三原則があり、そこから導き出された答えを人類向けに変換して喋っています。そのため、ワンテンポ遅れますがご了承ください」

「さ、さっぱりわからないですね」

「まぁ、俺も何となくだ。モンスターのゴーレムが人間っぽく喋ってくれているとでも思えば良いだろ」


 敵対はしないし、自己判断での行動もできるので利用されての悪にもなりにくいという感じだろう。

 アイゼンシルトの性格的なことはわかったので、次へ話題を移す。


「それで七十年も戦い続けてきたSランク冒険者ロボットのお前が、なんでそこまでボロボロになっているんだ? 暴れ馬だって止めるパワーがあったし相当強いはずだろ、アイゼンシルト」

「…………博士と同じ異世界人のイストにはそう見えるかもしれません。しかし、この身体は全盛期と違ってメンテナンス不足で腕の脱落が起こったりと、日々弱体化しています。そのため、他の冒険者たちと遠征に行くも敗走してきました。当機は町にいる冒険者パーティー〝鋼鉄の守護者〟を連れて戻らなければなりません」

「鋼鉄の守護者……」


 アイゼンシルトの採寸をしているアルプスの手が止まってしまった。

 その冒険者パーティーは姉のクララが所属していたもので、モンスターによって壊滅させられていたからだ。

 さすがに空気を読んだイストは、辛そうなアルプスの代わりに告げる。


「鋼鉄の守護者はお前の留守中に壊滅状態だ」

「…………状況を把握。それなら当機は再び戦場へ戻るまで」

「なんでそこまで急いで戻らなきゃいけないんだ?」

「…………冒険者たちが囚われているのです。当機だけが助かって、このように戻る事ができました」

「なるほどな、さすが人類の救世主様ってやつだな。自らの身を顧みず、まるで自殺願望でもあるかのような自己犠牲」


 そのイストの軽口を聞いたウリエルは、アイゼンシルトへの好意――いや、英雄への憧れからか大きな声で突っかかってきた。


「イストさん、酷いですよ!! そんな言い方って――」

「酷く聞こえたか? 俺としては熱くて好きだって言いたかったんだけどな」

「え?」

「人類を守るスーパーロボットってのはこうでなくちゃな。お前の人格を作り出した博士とはいつか死んだら酒を飲みながら話したいものだ」

「よ、よくわからないけど、褒めてるならいいですけど……」


 ウリエルはまだ漢の浪漫というものがわからないらしい。


「ところで、博士が死んでからメンテしてないってどういうことだ? 機械ならメンテは必須だろう」

「…………セーフティがかかっており、自分では外装はともかく内装に干渉することは許可されていません」

「なるほどな」


 機械の反乱というのは昔から題材になっている問題だ。

 そのためのセーフティなのだろう。


「…………試しに博士以外の別の人間にメンテを頼んだところ、変にいじくられて悪化しました」

「素人がメンテやろうとするとあるあるな現象だな……」


 イストも子供の頃、パソコンの中を開けていじっていたらパーツを破損させてしまったという苦い経験がある。


「俺に一回、アイゼンシルトの中身を見させてくれないか?」

「…………それは」


 アイゼンシルトが珍しく、すぐに返答をせずに躊躇してしまっている。

 機械だったら即断即決だが、〝機械生命体〟という領域にいる彼女は迷いというものもあるのだろう。


「まぁ、一度他人に身を任せて酷い目にあったのはわかる。けど、今だけは俺を信じてくれないか?」

「…………どうしてそこまで?」


 イストはフッと笑ったあと、今までに無い真剣さで話した。


「メカ少女の中身とか見てみたい。空想で描かれたものじゃなくて、そこに実際の答えがあるんだ……! どんな機構で動いているのか、その経年劣化でさえ浪漫溢れる情報だ!! だから、アイゼンシルト!! お前の中身を見せてくれ!!」

「うわっ、なんかよくわからないけど変態っぽいですよ……」


 ウリエルがドン引きしているが気にしない。

 この浪漫の前に、そんな小さなことを気にする意味がないからだ。

 アイゼンシルトが小さく呟く。


「…………イスト、貴方は博士とよく似ています」

「そりゃあ、こんなアイゼンシルトみたいな存在を作り出した奴とは気が合うに決まっているだろう」

「…………貴方を信じます」

面白い!

続きが気になる……。

作者がんばれー。

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<(_ _)>ぺこり

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