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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第十章 新たな物語の始まり
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第319話 スパイ大作戦 前編

 退寮後、春風が同棲していると噂を聞きつけた総長が、真実を確かめるべく刺客を送り込む。

さてさて、どうなることやら。

 ところで、皆さんは覚えているだろうか?

 早乙女春風がつい数日前まで鎌倉学院女子寮で、健気にも寮長を務めていたことを。

 そして女子寮生のドンとも言える総長・華宮麗香が寮長のとある噂を聞きつけたことに端を発する。

 

 学年長と寮長と親交があったものが、総長の指示で食堂に集められていた。

「寮長が何やらえらいことになっていると小耳に挟んだのだが、この中で近況を知っている者はいないか?」

 麗香が音頭を取り、周りに問いかける。

「私、知ってます!」

 と挙手したのは、山科学長の娘・山科楓であった。

「楓さん、それじゃあ、あなたが知っていることすべて、教えてもらえるかしら?」

 と麗香は耳を傾けた。

 

「はい、早乙女先生は、どうやら女子大生と暮らしているみたいなんです」

  

 女子大生と同棲しているって噂、嘘じゃないの?

 

「それは、間違いないことなのですか?」

 楓は平手で机を叩き嘆く。

「先生が、どうして女子大生に囲まれて生活をしなければならないの!」

 えっ?

 どう言うこと?

 この「囲まれた」と言う言葉に、その場にいた者は皆、ビビットに反応した。

「楓ちゃん、それって女子大生と同棲じゃなくて、シェアハウスなの?」

「はい、多分そうだと……思いますが」

 

 麗香が周りに問いかける。

「名門鎌倉学院の優等生にして、気高き女子寮生の世話役であった彼が、不埒な女子大生どもの餌食と化しているこの嘆かわしき惨状を、我々がどうして看過できましょうか? 真実を突き止め、寮長・早乙女春風を我々の手で救出せねばなりません!」

 

 この意思表明に、高等部第二学年長の朝倉美穂が提案する。

「まずは現状を偵察して来てはどうでしょうか?」

 それに高等部第一学年長の石原雪乃が名乗りをあげる。

「同級生でありますから、私が確認して参ります」

「私も一緒に行きます」

 と同級生の朱鷺谷ララも声を上げる。

「ちょっと待った! この芸能科田中エリー様を差し置いて、スッパ抜くなんて許しません。僭越(せんえつ)ながら、わたくしがこの偵察の指揮を取らせてもらいたい」

 エリーはマウントを取りながらも、一肌脱ぐことを表明した。

 そして総長・麗香は、エリー、雪乃とララに調査を託し散会した。

 

   

 偵察の決行日の朝

 

 

 エリーが偵察の陣形を説明する。

「三人のうち一人は寮長の尾行役、残りの二人のうち一人がアパート前で張り込み役、そしてもう一人が宅配業者を装いアパートの中を覗き見るのよ」

 ララがエリーに問う。

「宅配に意味があるのですか?」

 その疑問を投げかけられた瞬間、エリーが嘲笑う。

「これだから素人は困るのよね」

 

 エリーさん、それはどう言うことなんですか?

 

 雪乃とララは固唾を呑んでエリーに食い入る。

「中に入るのよ、受け取り印を取りに行った瞬間を狙って中の様子を確認するのよ」

 

 ええ……そんな落語の小噺に出て来そうな古典的手法が、この現代でうまく行くかしら?

 

「それ、なんか不法侵入で訴えられたりなんかしませんか?」

「本当、キミたちは心配性なんだから」

 

 ええ?

 そう言うことじゃないんでは?

 流石に違法行為でしょ。

 今の時代、未成年だからと言ってなんでも許される訳ではありませんよ。

 

「私たちは宅配は嫌です!」

 

 するとエリーがなんの躊躇いもなく、プランBを語り出す。

「警備保障会社ならどうだ?」

「警備保障会社?」

 とララはサラリと変えられた宅配業者と警備保障会社にどう違いがあるのかを汲み取れず、悶々とした顔を見せた。

 これに対し、なんとなくその意図を汲み取れた雪乃が、こんな感じで説明した。

 

「アパートのセキュリティーが発報し、それに駆けつけた警備員を装って、まんまと部屋に入り込み、あちらこちらと安全確認のため歩き回る、と言うプランなんですよね?」

 

「雪乃ちゃん……あなた絶対この手の洋画を見たことあるよね?」

「あはっ、わかりますか?」

 なんだか盛り上がってきた!

「そんな好きそうな匂いがしたから。まぁ、余談だけど、スパイ映画みたいなので好きな作品は何? もちろん私は、トム様のMI2よ。アクションがたまんないわ! 雪乃ちゃんは?」

「私は……MIシリーズなら、デ・パルマ監督のMIかな。スパイ大作戦のリメイク的作品と言われてるけど、デ・パルマ作品の「殺しのドレス」で見せた視聴者を幾度となく欺くスリルな展開はMIでも多用され、ハラハラさせられたわ。さすがサスペンスの巨匠と呼ばれるだけあるわ」

「な、なんか詳し過ぎませんか? 雪乃さん?」

 と驚くララ。

「じゃあ、雪乃ちゃんは日本の作品なら何が好きなの? 私はスパイ・ゾルゲかな」

 

 この時点でエリーは、すでに本文である寮長の偵察のことをそっち除けにして、盛り上がってしまっていたのであった。

 

「私は雷蔵主演のスパイ映画、陸軍中野学校が好きかもね」

 雪乃ちゃん、

 それ渋すぎる〜。

 

「あの、ふたりとも、寮長のこと、どうするんですか?」

 ララは呆れながらふたりに問いかけた。

「おお、すまん、すまん」

 と頭を下げながら、エリーは本文に戻って来た。

 

「では、名付けて『寮長の私生活を暴いちゃう大作戦』を放課後に決行します。私とララちゃんで警備員に扮して部屋の偵察をするから、雪乃ちゃんは原付で寮長を追いかけて下さい」


「な、なんで私が原付に乗れることを?」


 目を細めながら得意げにエリーは語る。

「芸能科随一の情報網を持つエリー様よ、自分の生活圏にある女子寮生の情報くらいは把握しているつもりよ」

 

 えええっ?

「当たり前よ」

 と言わんがばかりに、

 個人情報を、

 握っているかのように語るエリーさん、

 何か怖すぎる!

 人の口に戸は立たないと言うが、

 気をつけないと、

 丸裸にされちゃうわ。

 

 雪乃は聞き返す。

「ところで肝心な原付は用意できるの?」

「うふふ、ご心配はござらぬよ。レンタバイクを手配してござるよ」

 

 エリーさん、それらしく話しているみたいですが、語尾に()()()()とつけたら、忍者ハットリくんみたくなっちゃうから。

 残念!

 

「では放課後に会いましょう!」

 

ララ  エリーさん、ただトムが好きなだけ?

エリー ただではないが、好きだ!

東堂満 満を辞して登場!

雪乃  なっ何者?

エリー この男、ウィルスみたいなヤツよ!

東堂満 ウィルス扱いすな!

春風  仕方ないね、ウィルスくん。

雪乃  次回「スパイ大作戦 後編」お楽しみに!

東堂満 こうなりゃ俺もスパイになるぜ!

春風  スッパイことになりそうだ!

東堂満 何!

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