第320話 スパイ大作戦 後編
いざ稲村ヶ崎へ!
エリーたちは制服に着替えて寮長の新居へと向かう。
授業後のホームルームが終わり、担任の香川から春風はこと付けを受ける。
「早乙女くん、市川先生がこのあと職員室に来るようにって話されていたわ」
「あっ、そうなんですか……」
新居、見つかったのかなぁ?
それにしても、
やけに用が重なるな。
姉さんから買い物頼まれてるし、総長からも女子寮に寄るよう呼ばれ、それに市川先生だ。
どれから取り掛かる? 忙しいな。
——朱鷺谷です。
——寮長はいろいろ足止めがある模様。
——お二人とも、計画よりも時間に余裕があるかも。
——了解。
——雪乃さんは、寮長の自転車置き場付近で待たれし。
——了解。
うちの学校は原付登校はOKなんだけどね。
とは言いつつ、校内で原付乗っているの見られたら恥ずかしいな?
だって……この原付のマフラー、パリパリ音が凄いんですもの。
雪乃がエリーから借りた原チャは、女の子が乗るような優しいタッチではなく、どちらかと言えばヤンキー中坊が乗るような紫色の原チャである。
一方、エリーとララは授業後いち早く寮に戻り、警備会社のコスチュームに着替えていた。
「さあ、行きますか、ララちゃん」
「はい、先輩」
ちょうどふたりが出て行こうとした時、ふらりとやって来たパーラー七里ヶ浜の店長・市川美涼が呼び止めた。
「あなたたち、気が早いわね? もう仮装大会の準備? それとも……バイト?」
当然のツッコミ、
こんな物々しい格好見れば、そうなるよね。
「さすが美涼さん鋭いですね。これは仮装というか、コスプレと言いますか……ちょっと急ぎなんで失礼します」
エリーがそう答えたあと、ララも苦笑いして、
「似合いますかね?」
と咄嗟に聞いたその答えに美涼はニッコリ笑ってこう言った。
「なんだかララちゃん、頼りがいありそうね」
ララは足を止めて、
「お仕事行ってきます」
と敬礼したあと、先を行くエリーのところまでかけて行った。
しかし、今時はああ言うのもコスプレって言うのかしらね?
「エリーさん、寮長の新居の稲村ヶ崎までは、流石にこの格好はどうも……」
「心配ご無用、この先で車待たしているから」
「車って、誰なんですか?」
するとエリーはこう言った。
「話してなかったっけ?」
「えっ、何をですか?」
「あたしんち、何でも屋をやっててね」
「何でも屋?」
「まぁ、わかりやすく言えばイベントやと言うか、レンタル業と言うか」
任侠を売ってるなんて言えないしな……。
「じゃあ、警備会社の車に乗っていくとか?」
エリーは一つ咳払いをしたあと、
「お察しがいいわね」
と笑った。
あははは……。
「あの車よ」
「あれれ、運転手さんも一緒の制服なんだね」
「あははは、もちろん制服もうちの小道具よ」
運転手は乗り込んだエリーに「ではお嬢様、シートベルトをしっかりしておくんなさえ」と言った。
「ええ、わかってるわ、銀次」
あれれ、エリーちゃん、なんかやばそうなお嬢様だったりして?
「そちらのお嬢さんも、しっかりシートベルトをして下さい。何かあららましたら親方に顔向けできませんから」
やっぱり怖ーい!
「ララちゃん、このことは寮のみんなには内緒ね。こういうの噂が立つと、後が面倒だからね」
「はっはい!」
銀次はシーサイド稲村ヶ崎の前で車を停めた。
「お嬢、着きやしたぜ」
「ご苦労、じゃあ銀次、上手くやりなさいよ」
えっ、この銀次さんと一緒にいくの?
大丈夫なのかしら?
三人は銀次を先頭に玄関先に立ち、インターフォンを押した。
「はい、どちら様?」
「あの、こちらの住宅の警備保障会社なんですが、異常を知らせる通報がありまして」
「異常ですか?」
「はい、どこかの窓か、ドアの締め忘れか誤作動か……こちらのホームセキュリティ契約により、屋内外の確認をいたしますので、入らさせていただきます」
「ちょっと待って下さい」
と言いももは七瀬を呼びに行った。
「七瀬先輩、なんか大半なことになってるから、どうしよう?」
しばらくして七瀬が玄関にやって来た。
「警備会社がいったい何のようじゃい!」
銀次が再び説明を始めると、七瀬はこう言った。
「おい、うしろのおふたりさんよ、テメェら、警備員って面してねえし、随分と若そうじゃねぇか、新入りか?」
七瀬の際どい問いかけに、ふたりはただ頭を頷いてみせた。
「こちらは仕事で来ていますので、どうかご理解いただきたい」
と銀次は語る。
「はあ? こちとら事知ったこっちゃねぇわ!」
な、なんだ、この女?
「お嬢さん、随分な言いようですがその行為、威力業務妨害になりますよ」
銀次らはそう言って七瀬の次の一言に備える。
「ははーん、さては儂と一戦交えるつもりだな?」
こ、こいつ、どこの組の荒くれ女だ。
「いや、争うつもりはありませんが、ただ、私たちに仕事をさせて欲しいのです」
その言葉に七瀬が食いつく。
「じゃあ、身分証と通報して記録を見せな!」
きゃあ、銀次、どうするつもりあたしたちなにも……。
その時であった。
「これが身分証で、こちらが本部から連絡があったメールです。ご確認を」
七瀬は銀次が提示した身分証とスマホの通報メール記事を読む。
「ん、どうやらあんた方は仕事に来たらしいな」
「もちろんです」
「だが……」
「だが?」
「その通報は誤作動に違いないから、帰っていいぞ!」
こいつ、正気か?
い、いや、
俺たちのこの手の込んだ準備も意味のないほど、コイツ、いかれてやがる。
「では、どうしたら仕事をさせてくれますか?」
こら銀次、なんという下手を打つんじゃボケ。
「ハハーン、この七瀬様にお願いをするつもりか?」
銀次は渋々答えた、
「ええ、まぁ、そうでもしないと仕事にならないみたいですから」
七瀬のうしろに立っていたももがこう声をかけた。
「あっ、すみません。彼女のこと気にしないで、仕事を済ませて下さい」
その言葉に便乗して、銀次は一礼して部屋に入り込む。
エリーたちも入り込み、ここアパートは構造的にシェアハウスだとわかり、部屋の中を確認するふりをして回った。
「わかりました。あの天窓だと思います。雨漏りなんかはないですか?」
ももは首を傾げながら、
「あったかしら?」
と話した。
エリーとももは、春風の部屋を特定したが、鍵がかかっており入れなかった。
「そう言えばあんた、どっかで見た顔に見えるが、うちの若いもんでいた銀次に似てるが?」
「いやぁ、まさか……」
やばい、こ奴、破門になった前の組の相沢組長の娘の七瀬お嬢じゃねえか。
「おい、お前、銀次だな? 若頭の鉄心を裏切った」
と問い詰めると、
「お嬢さん、ご無沙汰しております」
と銀次は吐いた。
「てめぇ、ここがわしの宅だと知っての押し込みか?」
「いやいや、滅相もない。私も改心しまして、今や堅気でやんす」
「本当か?」
「ええ、もうあっしはとっくに堅気です。こうやって真面目に働いております」
「おうおう、今の言葉、二言はねえだろうな?」
いやぁ、こんなところで相沢七瀬か、ついてねぇ。
「ええ、神に誓って」
「……仕方ねぇ、今日は目を瞑ってやるが、こんな詐欺まがいの仕事はもう辞めるんだな」
「ええっ?」
「おめえ、頭が空か? なんで犯歴あん奴が、警備会社で働けるんじゃ、ボケ」
「お嬢さん、ほんとあっしは今は堅気なんです」
「まあ、いいけどよ。もしテメェが嘘かましてたら、許さんからな!」
「すんません」
ねじ込んでくるところ、相沢組長そっくりだ!
「そう言えば若頭の堂島さんはお元気で?」
「鉄心はお前のせいで務所暮らしだよ、ボケ!」
「そう、でらしたか……」
あいつが務めから帰ったら、おいら真っ先に殺されるな……。
三人はそんなこんなで部屋を出た。
その時、雪乃から連絡が入った。
「今、そちらに寮長が向かいました」
「お疲れ様、こちらの偵察は終了よ。尾行は終えてていいわ」
とエリーが声をかけたが、
「私尾行してないわ。だってパリパリうるさいんだもの」
と雪乃は言い訳しながら悪態をついた。
七瀬 そう言やぁ、堂島鉄心か、懐かしい?
春風 堂島を知っているの?
七瀬 ちいせぇ頃、遊んでもらったぞ。
もも そうだったわね。
春風 ももさんは七瀬さんのことを知ってたの?
七瀬 ももにだけは話してあるぞ。
春風 なるほど。
エリー ところで七瀬さん、おいらとは敵か味方か?
七瀬 何を言う、人類皆姉妹じゃねえか!
エリー へえ、言うじゃないですか。
ララ エリーさん、目がケンカ売ってますよ。
春風 次回シェアハウスの攻略でまた逢おう!
七瀬 次回、それは任侠ものか?
春風 違いますから!




