第314話 憧れの男
女子寮では紗矢香と交際を続けられないとして退寮をしたんだ。
それはある意味自由な生活のためでもあった。
シェアハウスではプライベートは守れない。
僕はやっぱりあそこを出たいんだ。
「この転居は本意ではなかったから、近いうちに出て行くつもりさ」
「……そうだよね。それがいいと思う。紗矢香さんのためにもね」
そっか。
常盤さん、
紗矢香のこと心配してくれて、ありがとう。
「さあ、行くよホームルームが始まっちゃうよ」
「本当、遅刻しちゃうよ。急ぐよ!」
「うん」
ねえ常盤さん。
話せてないけど、
紗矢香との関係は、
微妙なところなんだ。
彼女は君に話したかい?
もしも話していたなら、
彼女の今の想いをさ、
伝えているはずか。
いずれにしても、
このままじゃ、
良いはずがない。
彼女に会いたいな。
「常盤さん!」
「えっ、何?」
「ありがとう!」
「……まぁ、世話が焼けるね、ふたりとも」
そしてもう一つの現実
「ふたりとも遅刻よ!」
「すみません」
「良いわ、罰を与えましょう」
香山先生、罰ゲームなんてやめて欲しいんですけど。
「罰って何ですか? 一週間掃除当番とか?」
「そうね……クラス文集の大事な表紙と裏表紙をお願いしちゃおうかしら?」
「えっ? そんな大変な作業を罰ゲームだなんて、先生酷いですよ」
「ふたりで協力すれば、きっと良いものできるわよ」
「それ、どう言う意味ですか?」
「ダブルスって言うのかしら? ほら卓球の……優勝者さんだから」
先生の話と春風たちの表情を見て、クラスメイトたちは笑いながら拍手を贈った。
結奈はしょげた春風の顔を覗き込み、
「じゃあ、頑張りますか?」
と笑いながら声をかけた。
「へい」
と力の入らない返事をしながら席へと着いた。
弱目に祟り目だね。
まったくさ。
——そんなこんなで時間が経過し、舞台は帰りのホームルーム——
「おい、この遅刻魔王!」
ん?
この声、
この、人を喰ってかかる物言い……そうか、奴か?
そして奴の周りの空気は体感で三度ほど高く、肌で感じる空気温の変化で、振り向かずとも分かってしまう。
奴だ!
間違いない!
「おい、死んだ振りにしては、演技がお粗末だな、早乙女魔王!」
やはり、
コイツには話す気になんねーや。
相沢七瀬さんとコイツをぶつけて見たいな。
「羽柴秀一郎、良いかよく聞け! お前の相手してるほど時間は持て余しちゃいねえから、いちいち構うなよ!」
……ど、どうだ?
リアクションは?
「うるさい! 俺はお前に定期テストで勝つまで、まとわりついてやる!」
ダメか?
秀一郎 俺はお前のことが好きだ!
春風 俺はお前のことが大嫌いだ!
秀一郎 嫌よ嫌よも好きのうち!
春風 次回「私たちの未来」よろしく!
秀一郎 お前は俺の好敵手、だから好きなんだ。
春風 何だそいつはさ!




