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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第十章 新たな物語の始まり
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第309話 ゲルニカ 前編

いざ、ゲルニカへと春風たちは川崎の車に乗り込む。

時同じく紗矢香が江ノ島にやって来たが、ふたりの恋の行方は? そしてゲルニカで待ち受けるものは?


 引き続き江ノ島


 ちょうどその頃、申し合わせたかのようなタイミングで、バイト帰りの紗矢香がライメイ650の運動不足解消の意味で、江ノ島までやって来ていた。

 

 あっ、

 ペアブレスが騒つき出した。

 春風、

 近くにいるの?

 

「あっ、春風くんだ」

 

 紗矢香が見たのは、春風がまさにバンに乗り込むところであった。

 そして、スモークが入ったバンの窓ガラスの先に、紗矢香は春風の姿を見つけることはできなかった。

 

 最近、私、サーフィンのことばかり考えていて、彼にラインすらしていなかったから、お互いに何をしているか知らないでいるけど……私たち、どうしたら?

 

「紗矢香ちゃん、どうしたの?」

 とバイクの後ろに乗っていたバイトの先輩吉野かおるがメット越しに声をかけた。

 

 ん? まだ、ペアブレスが騒いでるわ。


 ペアブレスの騒つき、紗矢香だ!

 

 春風は直様窓ガラス越しに辺りを見回したが、紗矢香を見つけることが出来なかった。


「早乙女くん、どうかしたの?」

「あっ、なんでもないです」

 でも確かにプレスが共鳴したんだが……。

 まあ、紗矢香さんにラインすらしていないし……どうもできない。

 

「ラララ、ララララララ……」

 

「なんか機嫌良さ気だね、川崎さん」

 サザンの曲を鼻歌混じりで歌う川崎の様子を、春風はみなみの顔をチラッと覗き込むようにしてそう呟く。

「パパはね、浮かれ気分の時は、決まってサザンのノリのいい曲を歌うのよ」

「そうなの、でも見かけとは随分違う感じだね?」

「そう、なのかしら? まあ、私が女の子らしく男の子とこうやって過ごしているのを見れて、嬉しい気持ちになったことは間違いないと思うよ」

 そう春風に小声で答えた。

 

「おいおいお前たち、ふたりでヒソヒソと何いちゃついてるんだ?」

 

 と思いきや、女の子の父親らしいお言葉をいただきました。

 

 男と女の関係って本当に不思議なほど、誤解が誤解を生んでいくような、コントロール不能な展開に引き込まれる、そんな感じだ。

 

「みなみ、いつからお前たちはそんな関係なんだ?」

 

 ほら、誤解のセンサー発動!

 

「いつからって、出会って二日目だよ」

「……たった、二日だと!!!」

 

 川崎パパは一人グロッキー。

 と思いきや、

「そ、そうなのか、二日目にして……まぁ、ラブストーリーは突然にって曲もあるしな……」

 と独り言を呟き出した。

 

 ちょいちょい川崎さん、誰もデートしてるなんて言っちゃいないよ。

 

「早乙女くん……」

 

 今度はみなみさんの方、何ですか?

「ごめんね」

「えっ?」

 みなみの一言に、僕は瞬間、固まる。

「私の自転車愛が強すぎて、パパ、とても心配していたと思う」

 ふむ。

 なるほど。

 そう言うことか。

 兄の大河さんも、

 誤解というか、

 心配していたな。

 綺麗な顔立ちで、スタイル良くって、健康美と言うか……。

 

 みなみさんと紗矢香が重なる。


 やはり思い出されるのは紗矢香さんのこと。

 江ノ島にいたのか?

 そして今、

 キミは今この僕を探しているのか……?

 すれ違う日々。

 思えば思うほど、

 なんか……、

 泣けてくる。

 

 

 到着の箱スパ本拠地 ゲルニカ

 

 気がつけばバンは、箱根の麓まで来ていた。

「ここが、ゲルニカなのか……」

 

 車を止め建物に入ると、受付で女性スタッフが出迎える。

 三階の会議室に案内され、ゲルニカ自転車競技部の部長を待つこととなった。


 そしてしばらくして、部長らしき人物について眞露主将が入室して来た。

 

「お待たせい致しました」

「お忙しい中、お時間いただきありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ、いつも川崎さんにはお世話になりっぱなしで……」

「それはこちらの方ですよ。大河も本格的にこちらで練習を始めているようで……」

 隣にいた眞露が大河の様子を語りだす。

「かつて、世界最高峰のレース、ツール・ド・フランスで優勝したドイツチームの立役者、川崎浩市の遺伝子を、彼は引き継いでますよ。近いうちに、私を超える選手になるでしょう」

「なんと。嬉しいことを言ってくださるね、眞露くん」

「いえ、そんな」

 部長が口を挟む。

「おふたりは初めてお会いしますね。私は部長の十文字と言います」

 咄嗟に眞露がふたりを紹介し始めた。

「部長、こちらは大河くんの妹の川崎みなみさんです」

 眞露さん、私を知ってるの?

「は、初めまして、川崎浩一の娘で、大河の妹のみなみです」

「眞露くんは面識があるのかね?」

 と十文字は尋ねる。

「いいえ。ただ、彼女はインカレ男子の部で入賞している選手ですから、大学生で知らない人はいないですよ」

「そうだったんですか? みなみさん」

 と春風も驚きを隠せない顔つきで呟いた。

「そして彼が今回のトライアルで上位に食い込んだ、高校生の育成選手・早乙女春風くんです」

 部長はこれにはビビットに反応し、こう話した。

「鎌倉学院高等部一年でERCのクライマーだろ?」

「はい」

 と春風は知っていてもらえたことに感激し、笑顔で答えた。

紗矢香 春風を遠く感じるよ、波の先の先にいるよ。

春風  寂しい表現で胸が痛む。

眞露  この作品のタイトルをご存知かね?

春風  男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ、では?

眞露  そのとおり。語っているぞ、知ってたか?

紗矢香 次回、ゲルニカ後編。お楽しみに!

みなみ 女の底力、見せてあげるよ!

浩市  みなみ、春風くんをゲットだぜ!

眞露  オチがポケモン? まぁそれも良しか。


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