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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第十章 新たな物語の始まり
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307/312

第305話 関係ないね!

 シーサイド稲村ヶ崎が女性専用シェアハウスであることを知った春風。そして彼は受け入れられるのか?

「カシャ、スーッ」

 扉がゆっくりと開きだす。

 それに気づいたシェアハウスメイトは息を呑む。

「えっ?」

「ええっ?」

 春風もつられて息を呑む。

 扉の奥にある人の気配に、女子大生たちは目が点になる。

 そして「あなた誰?」と七瀬が口火を切る。

 春風は、尋ねてきた七瀬にオドつきながら口を開く。

「えっと……初めまして……早乙女……」

「早乙女さんの彼氏なの?」

 と七瀬の後ろにいたこころが、春風に問いかける。

「えっ、彼氏なの?」

 ひなも身を乗り出すようにして、春風に食い入った。

「あっあの、彼氏じゃなくて……」

「何よ、彼氏じゃなきゃ兄妹とでも言いたい訳?」

「ちょっちょ、七瀬さん、そんなにせっついたら、彼が上手く話ができなくなっちゃうから」

 普段は大人しくしているひなが、少し声を張りながら七瀬をなだめた。

「ねぇ、部屋には早乙女さんがいるのかな?」

「……えっ?」

 困った。

 部屋にはいるけど、

 この質問はそうではない。

 事実を伝えるんだ! 

 その時、みなみが漸く気づいた。

「あの時の高校生くん、だよね? あっ、早乙女春風くんじゃ?」

「はっ、はい、早乙女春風です」

「えええええー」

 ハウスメイトたちは驚きに加え、みなみの知り合いだと聞き、春風の両脇を抱えて、リビングのソファーに連行しそのまま彼を取り囲んだ。

 

「ねえ、彼とはどう言う関係なのよ?」

「ちょっと待ってよ、ももちゃん」

「みなみの彼氏なの?」

「七瀬さん、待って待って。そう言うんじゃないよ」

「じゃあ、説明しなさいよ。自転車一途のあんたに恋バナ、なんかくすぐるんだよね」

「もう!」

 みなみは大きく深呼吸をした後、春風との出会いを話し出した。

 

 それは、みなみは失くしたスマホを春風に見つけてもらったエピソードであった。

 

「そうだったんだね。でもさ、自転車にしか興味がないみなみだから、みなみとの会話、よく成立したね? 早乙女くんは自転車とか興味あるの?」

 ひながみなみの変わりっぷりを問いかけた。

「ひなさん、どう言う意味ですか? 私、なんか変わり者って扱いになってません?」

 こころがすかさず突っ込む。

「美人にミスマッチな性格ですよ! それは女子スキルの最高峰、謂わゆる褒め言葉ですから」

 顔が赤くなったみなみを見ながら、そこにいた五人は大笑いをした。

「僕も自転車好きなんで……」

 春風がそう言った瞬間、周りの笑いが収まった。

「無理して合わせることないよ」

 ももがそう言ったあと、もう一度笑いが起きた。

 

「では改めて、私がここの主の相沢七瀬だ! 通称は()()()()だ。まぁ、新米の君は年長者に敬意を示して、七瀬さんと呼ぶがよい! アッハッハ!」

 春風はこの口上を笑うことなく聞き上げ、

「よろしくお願いします、七瀬さん」

 と挨拶をしてみる。

「よく言えたな、こちらこそ宜しくな! 若輩青年よ」

 さすがの春風も、周りの笑いに誘われ笑みをこぼした。

 あれ?

 この人どこかで見たような?

 七瀬七瀬七瀬……何だったかな?

 

「あ、あの、私は久留米ひなっていうの。宜しくね、春風くん」

「あっ、早乙女と言います。宜しくお願いします」

「あっ、えっと、私、これでも北海道小樽出身だから、九州みたいな苗字だけどね。それと私がお料理の担当しているから、リクエストあれば教えてね」

「はい、わかりました」

 えっと、七瀬七瀬七瀬……誰だ?

 

「川崎みなみさんですよね」

「春風くん、凄い記憶力ね、自転車が恋人の国大二年生よ。そうそう、七瀬さんとひな先輩は国大三年生よ」

「へー、同じ国大なんですね」

「まあね」

「リドレーですよね、自転車、ベルギーの」

「うわぁ、よく見てたね、凄ーい」

 んー、

 七瀬って、

 ダメだ。

 思い出せん!

  

「私ね篠田ももって言います」

「よろしくお願いいたします」

 ええと、

 あっ、

 由比ヶ浜の、

 ショップナツカワに来てた、

 サーフィン参加者だ。

「あっ、あの、七瀬さん」

「えっ?」

「由比ヶ浜のナツカワで……」

 七瀬が急に春香の口を両手で塞ぎ、耳元で囁いた。

「その話は何も話すな。命が惜しければな。まあ、私には関係ないがな。もし話したら、末代まで祟ってやるよ!」

 春風は口を抑えられたまま、首を大きく二回上下に振った。

 七瀬さん、

 関係ないとか言ってるけど、

 ないはずないよ。

 本当、

 わからん。

 

「七瀬先輩、何を脅してるんですか? 怖すぎです」

「何にも怖くないだろ? なぁ、早乙女くんよ」

「も、もちろんです……末代までですけど……」

 ひなが七瀬に問いかける。

「またナナちゃん、末代まで呪いをかけるなんて恐ろしい言葉を掛けたんじゃないよね?」

「言ってない言ってない、呪うなんて……」

 末代まで祟ってやるぞって言ってましたけど。

 ようは一緒のことですから。

 

「最後になりますが、常盤こころと申します。キミだったんだ。母の言ってた早乙女くんって」

「僕のことを?」

「卓球道場の」

「ええっ? え、えええ? じゃあ、常盤結奈さんの……」

「姉だよ、よろしくね」

「はい、妹さんにはお世話になっています」

 狭い世界だ。

 本当に。

 スマホを失くしたみなみさんに、常盤さんのお姉さん。

 そして、サーフィン習ってたことを隠す七瀬さん。

 ひなさんやももさんも、優しそうで助かる。

 

 春風とそのハウスメイトの女子大生たちは、春風のこれまでの経緯を聞きながら、またもや女学生に囲まれた生活に逆戻りしたことをネタにしながら笑い合い、夜遅くまで談義を楽しんだのだ。

七瀬 サーフィンしてたことは言わないように!

春風 どうしてなんですか?

ひな それはね、

七瀬 言うなよ、ひな!

春風 次回をお楽しみに!

ひな 泳げないのにサーフィンやるなんてね!

七瀬 言っちゃいよってからに! もう!

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