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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第九章 僕が誇れる僕になる
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第296話 四番手の男

 先頭の早坂選手が、チラリと後方の戦況を伺うように振り返った。

 後方の選手たちは早坂選手が「逃げる!」と直感したが、このハイペースな展開で最高地点までの一〇キロを、更にレンジを上げて逃げ切るなんてことはあり得ないと追走を思い留まる。

 それを逆手に取るかのように早坂はまさかのギアを上げた。

「この戦況で行くのか?」

 と二番手に着けていた成田は渋い顔で言い放った。

「あいつのブログにさ、書いてあったんだよね」

 とすかさず天野が成田に切り込んだ。

「何てさ?」

「今日のトライアルは展開がどうであれ、ロングスパートをかけると。また、秘策があると書いてあったかな?」

「それって速いペースでも逃げ切るってことか。まぁ、奴が視界から消えたらモチベが下がるから、奴の真偽を見るために追走するとしよう」

「確かに行かれてしまっては話にならないしね」

「他の選択肢はないよな」

 と成田は早坂の飛び出しに身構えた。

「仕方ないですね」

 と天野も飛び出しに備えた。


 その後方の選手たち

 

「早乙女ちゃん、先頭の御三方は、臨戦態勢に入るみたいだぜ!」

「そんな空気感ですね。でもここで踏み込んで持つのか?」

 と僕はエディに投げ返した。

「心肺機能が高い俺でも、一〇キロを超えるスパートなんて体が持たんちゅうのに、このハイペースに更にロングスパートなどと正気の沙汰じゃおませんな」

「僕も同感ですね?」

 そんな戦況を読んでいる最中、前から降りて来た四番手の選手が声をかけて来た。

「あんなん相手にしたらあかんて。自殺行為やで!」

 僕とエディは声をかけて来た選手に投げかけ返した。

「そんな選択肢は、この局面でありですか?」

その時、エディが何かに気がついたように口を挟んだ。

「箕浦さん? あの山神の箕浦さんですか?」

 僕はエディが尋ねた名前に聞き覚えがあったため、あえて声をかけてみた。

「あの、この局面で飛び出さないことでの勝算はありますか?」

「あるね! まぁ、これは先頭にいる三選手の能力を加味して初めて成り立つ方程式になるんだがね」

 箕浦選手は三選手の情報をすべて把握しての勝算と言い切った。

「聞かせてもらえますか?」

 と僕は一刻を争う中、事もあろうに他人の見解を聞いてしまった。

「早乙女、お前はアホか? 人に戦況を聞いてどうするんや? 自分で判断せな! だからお前はダメなんや!」

 と僕はエディにダメ出しされてしまった。

「まぁまぁ、せっかくやから聞いても損はないと思うがな」

 と箕浦は二人に声をかけた。

「そう言うて、あんたが戦況を作っているんやろ! 箕浦さん?」

 とエディが指摘した。

「ふふふ、あんた賢いな。けど、あんたらの実力は知らん故に、キミの言う戦況何ぞは作れとらんよ」

「じゃあ、あんたの勝算とやらを気かけてもらおうか?」

 とエディが上から目線で話すと、箕浦は笑いながらこう答えた。

「なぜキミに教えなあかんの?」

「何だと?」

「俺はあんたのサポーターじゃあらへんで。そんで持ってな、お人よしでもおまへんよ」

「話にならんわ、じゃあな、先行かせてもらう!」

 とエディは先頭との距離を離されないため、いや、縮めるため、ギアを上げて加速した。

「あの派手男、頭悪すぎやて」

 と箕浦が捨て台詞を吐いた。

「教えてもらえますか? あなたの読む戦局を!」

 エディにダメ出しをくらい取り残された僕は、向学のためにそう声を出した。

 すると箕浦はこう語り始めた。

「キミは欲深なんだね?」

「えっ!」

「いいよ、キミは賢明だから教えてあげよう」

 と箕浦は、前に出たエディを加えた四人の展開を話し始めた。

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