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三話 道を進めば野盗

おはよう、こんにちは、こんばんは、猫屋です。

引き続き、読んでくださりありがとうございます。


残念、打ち切りません。

前回はチルのターンでしたが、今回は熱くダークな展開になります。


整ってますか。覚悟はいいですか。


それでは、どうぞお楽しみください。


こんな伝承があったのかもしれない、無かったのかもしれない。


女神イロン・ミトメルは言いました。


全ての人に自由と権利があります。

何をしても良いのです。

これは他者の自由を妨げてもよいという意味ではありません。

話し合いなさい。

お互いに譲り合いなさい。

自由とは分かち合うものなのです。


女神アー・ソレナは言いました。


与えなさい。

与えたなら受け取りなさい。

働きには対価を。

対価には誠意を。

与えるだけでも、受け取るだけでもいけません。


女神シラン・ケドは言いました。


盗賊は殺せ。慈悲をかけるな。


~~


村を出た葛谷は道を進み、町へ向かっていた。

そして今。


「ひーーーーはーーーーーっ!汚物は消毒だぁあああ!苦しんで死ねぇええええ!!」


盗賊を燃やしていた。


~~


時は遡る。


村でナタリーさんの調理助手をしていた時。

いつものように火打ち石と藁で火種を作り窯の中へ放りこむ。

火は薪へと移り、パチパチと音を鳴らし始める。


「ありがとね~、火を起すのが一番大変なのよ。雨の日なんて湿気ちゃって特に大変」


葛谷は話を聴いていて閃いた。

そういえば火はアイテムボックス(仮)に収納できるのだろうか。

これから火を使う時、アイテムボックス(仮)から火が取り出せるなら便利じゃね?と思った。

葛谷は燃え上がる炎へと手を伸ばす。


そして葛谷は火傷した。火傷で済んだ。

突然の奇行に驚いたナタリーさんは葛谷に向かって水をジャバジャバかけてくれた。

ナーシャちゃんが大泣きした。

ロベルトさんにバチボコに怒られた。


村の薬師さんによれば数日で快癒するらしい。跡もほとんど残らない。

でも、ロベルトさん一家には申し訳なかったなと思う。本当に思う。


~~


同じく。


森でナーシャちゃんと野草を摘んでいた時。

どこかで嗅いだことのある匂いがした。

向こうの世界で嗅ぎ慣れたツンとくるような匂いだ。


匂いの方向へ歩く。


「おじさん、そっちは危ないよ。

 この匂いがしたら近づいちゃダメなんだよ」


葛谷は立ち止まった。


「えっとね、この匂いがあるところには、燃える黒い水が湧き出してるんだって。

 黒い水はネバネバまとわりついて、一旦燃え始めると燃え尽きるまで消えないの。怖いよね」


ナーシャちゃんが大人から聴いた話を丁寧に教えてくれた。


「…それは怖いね。ありがとう、教えてくれて」


ふーん…燃える黒い水ねぇ。


後日、真っ黒に汚れ、ツンと異臭を放つ葛谷がいた。

ナタリーさんは遠くからハラハラと心配そうに見ていた。

ナーシャちゃんが大泣きした。

ロベルトさんにバチボコに怒られた。


村から一瞬で火が消えた。鐘が鳴らされ村人全員が水場に避難した。村人総出で水をぶっかけられた。

村中からバチボコに、それはもうバチボコに怒られた。

でも、最後には皆が無事で良かったねと声をかけてくれた。


葛谷は泣くしかなかった。

ごめん、本当にごめん。

こんな大騒ぎになると思ってなかったんだ。

大人になってこんなに泣いたのは初めてだった。


~~


時は戻り、今。


葛谷はアイテムボックス(仮)の中で燃える水と火を混ぜられることを発見した。

燃えず、消えず、そこに在り、混ぜることも出来る。

混ざり合った燃える水と火は、アイテムボックス(仮)から出た時、空気と反応する。


葛谷は疑似的な火炎放射を使えるようになっていたのだ。


使えるようになった時は新たな発見への感動があった。

そして恐ろしい武器を持ってしまったことに大きな不安を感じた。

けしてこれは使うまい。墓場まで持っていこう。

そう思っていたはずなのだが。


村での苦く恥ずかしい記憶を思い出しながら、盗賊を燃やしている。


「なんでこんなことに…」


盗賊たちが武器を捨て降伏し、冷静さを取り戻しつつある葛谷は発端となった出来事を思い出していた。


~~


村を出た葛谷は道を進み、町へ向かっていた。

この後、テンションハイで盗賊を燃やすなんて全く予測も考えもしていない。

いい天気だなとか、

村仕事で多少は身体が鍛えられて良かったなとか、

野営の食事は何にしようかなとか、考えながら歩いていた。


事件は向こうから飛び込んできた。

葛谷は即座に荷車を置いて茂みに身を隠す。


幌馬車が停まっていた。

馬は興奮し足を踏み鳴らしている。

馬車の持ち主であろうオヤジが護衛っぽい人々に何か叫んでいる。

護衛っぽい人々は幌馬車に背を向け囲うように展開。

刃物をちらつかせたガラの悪そうな連中が、その外側を更に取り囲んでいく。

物陰には矢をつがえ弓で狙う者がいる。

これは、商人を襲う盗賊団の図ではなかろうか。

まだ断定できない。もう少し近づいて話を聴こう。


「貴様ら、何者だ!ゲドー商会の馬車であると知っての狼藉か!」


護衛のリーダーらしき女騎士が剣を鞘から抜きはらいながら叫ぶ。

仲間の護衛たちも各々武器を構え取り囲む賊徒を警戒している。


「お嬢さん別嬪さんだねぇ、俺たち金に困っててよぉ…どうか恵んでくれねぇかなぁ?」


賊徒の首領らしき者がニヤつきながら話す。

女騎士に向かって粘つくような視線が集まった。


「女神アー・ソレナ様は対価を求めることを奨励なさっている!貴様らは何を差し出すのか!!」


視線など気にもせず女騎士は交渉を始める。


「お嬢さんよぉ、この状況分かってんのかぁ?

 逆だろ逆、ここを通るのにお前らが何を差し出すのかって話だよ。

 そこの商人からは荷車全部いただくとして、お前らには何を差し出してもらおうかぁ?」


舐め回すように女騎士を眺める首領。

馬車と護衛を取り囲む賊徒は多い。物陰から護衛を狙う弓兵もいる。


「私の馬車を差し出します。そして私の手持ちの財産は全て差し上げますのでどうか穏便に…」


馬車から顔を覗かせて商人が声をかける。


「うるせぇよ!黙ってろ!お前が置いてくもんは決まってんだ!おぃ女ぁ、お前は何を差し出すんだ?」


首領の言葉に盛り上がり、囃し立てる賊徒。


「クサレ様、顔を出してはいけません!陰から狙っている輩がいます!

 お気持ちは有難く思いますが、盗賊への譲歩は悪手です。

 彼らは何も与えない、与える気がない。

 そして女神シラン・ケド様はおっしゃっています。盗賊は殺せ、と」


女騎士は賊徒への警戒を向けたまま、馬車へと声をかける。

他の護衛たちは武器を握りしめ、賊徒の下劣な目をギンと睨み返している。

賊徒たちは護衛たちの態度に怯みはしたものの、包囲を解く気は無い様子だ。


「へぇ…何も差し出さない気かぁ?女神様は言ってんだろぉ?与えろってよぉ」


賊徒に殺気が宿り始める。戦闘が始まる。

女騎士は剣を構え直した。


「よろしい、こちら(剣)で交渉しようか。

 総員、迎撃せよ!賊徒どもを馬車に近づけるな!

 隣の仲間と組んで相対せよ!クサレ様は絶対に馬車から顔を出さぬように!

 皆、死ぬなよ!!」


金属同士がぶつかり合う音。

剣閃と怒号が飛び交う。ここはもう戦場だ。


~~


一方、葛谷は茂みの中を幌馬車に向かって進んでいた。

話が聞こえ辛いので、もう少し近くへと寄っていく。

そして目と目が合った。


「なんだ、ここは俺の持ち場…あん?お前、見ない顔だな…」


葛谷は弓を構えた賊徒と遭遇した。

葛谷の判断は早かった。


「ごめんっ!俺には好きな人がいるんだ!!」


タッチ!次はキミが鬼だ!

賊徒の姿は一瞬でアイテムボックス(仮)の中へと消えた。


「うわー…一瞬死ぬかと思った」


葛谷は壊れそうなほどに激しく鼓動する心臓を抑え、深く静かに息を吐いた。


~~


冷静に考える。

葛谷のアイテムボックス(仮)の中には先程収納した賊徒がいる。

顔も見られている。

最早、賊徒との敵対は避けられないだろう。

仮に賊徒と和解したところで、アイテムボックス(仮)をどうやって説明するのか。

どう考えても良い未来は想像できない。

取り込んでしまった賊徒の処遇にも悩む。

そして客観的に見て100%賊徒が悪い。


「いやだなぁ、怖いなぁ、やばいよなぁ。でもなぁ…」


葛谷は商人側に立ち、戦うことを決めた。


~~


どうやって戦うのか。

多少村で鍛えられたとはいえ、葛谷の貧弱な身体では瞬殺だろう。

さっきのは上手くいった。

でも、次も上手くいくとは限らない。

むしろ失敗して返り討ちにされる未来しか想像できない。

直接触れて収納するのはもう無理だ。

葛谷のとれる戦法は多くはない。

茂みの向こうでは剣閃と怒号が飛び交い始めた。


~~


馬車を守るように賊徒と剣を交える護衛たち。

倒しても倒しても次がやってくる。


「我らは『自由の盾』!調和の女神イロン・ミトメル様の忠実なる信徒!

 信仰と誇りにかけて、クサレ様と仲間を守り通せ!!」


女騎士は自らも剣を振るい激励を飛ばす。

仲間たちの様子を探る。皆、疲労が溜まっている。

幸い怪我人や死者はまだ出ていないが、それもいつまで保てるか。

絶望的な戦況の中で女騎士は剣を振るい続ける。


「女は殺すんじゃねぇぞ!使い道があるからなぁ!抵抗するなら指を落としてやれ!!」


賊徒の首領は包囲の外から下衆な指示を飛ばしている。

殺意と熱気に酔った賊徒は歓声に沸き、我先にと武器を振り回し迫ってくる。


女神イロン・ミトメル様、どうか我らをお助けください。


~~


葛谷は茂みの中を進む。

葛谷がとれる行動は少ない。道に出れば瞬殺を免れない。

剣閃と怒号の外、茂みや木の陰などから矢が放たれているのが見える。

葛谷が狙っているのは奴らだ。


「使うまい…そう思ってたんだけど、意外と早く使う羽目になったな」


賊徒の弓兵を発見。

火炎放射を放つ。

燃え盛る黒い水は賊徒の身体にまとわりつき、逃れることを許さない。

突然の出来事への混乱、熱さ、痛み、訳も分からず武器を取り落とし、転げまわる。

助けを求める断末魔。賊徒が寄ってくる。

あとは繰り返す。探し、燃やし、寄ってきたらそれも燃やす。


アイテムボックス(仮)の中にいた彼は火炎放射と一緒に出してあげた。

目撃者を処せばステルス、秘密は守られるのだ。

人を殺すのは嫌だ。

しかし、この力を知られることはそれ以上に恐ろしい。

そして知られた相手は賊徒。何をするか、されるか分かったもんじゃない。

葛谷の取れる安全策はこれしかなかった。

敵を生かしたまま安全に生きられるなんて、そんな都合の良い世界は無い。


最初は兎を殺すのだってしんどかったのに。あの頃が遠く懐かしい。

知らなかった頃にはもう戻れないのだ。こんなのはシラフではやってられない。


さぁここからはパーティの始まりだ。


「ひーーーーはーーーーーっ!汚物は消毒だぁあああ!苦しんで死ねぇええええ!!」


~~


回想は終わる。


限界突破していた葛谷のテンションは急速に落ちていく。

賊徒と思われる黒焦げ死体が散乱していた。

この光景は葛谷が作り出したものだ。

炎は消え、葛谷の目は死んだ魚のよう。

そんな葛谷の様子を知らずに、賊徒を拘束し終えた女騎士が駆け寄ってくる。


「魔導師殿、助太刀感謝いたします!あのままでは我らの仲間に犠牲が出ていたことでしょう。

 我らの主人、クサレ様が是非そなたに礼をしたいと…どうされましたか、魔導師殿?」


葛谷は茂みに駆け込み嘔吐した。


~~


葛谷は消耗していた。とても消耗していた。

声を出す気力も無く、魂をどこかへ置いてきたかのよう。

女騎士の誘いは、また後でと断った。

向こうにも無理強いする気はないようで、引き止められはしなかった。

彼女たちも今日はここで野営するそうだ。


自分の荷車へと戻り、熊の毛皮を広げ横たわる。

この毛皮、ちゃんと処理されてたっけ。

限界を超えたテンションは下がり、マイナスの域まで落ち込みかけている。

首痒いな。

良くない妄想が頭に浮かんでは消える。

耳も痒い。

この感覚には覚えがある。

腕も痒い。

この世界に来るまで葛谷自身が感じていたものだ。

なんか全身痒いんだけど。

このままではいけない。

やばい(精神的に)死ぬ。

葛谷は飛び起きる。よし、忘れよう。


「…話を聴きに行こうか。それにしても身体痒いな。毛皮使うの失敗だったわ」


葛谷を救ったのは女神か騎士かシラミかダニか。

痒い背中を搔きながら葛谷は商人たちのキャンプへと歩き出した。


~~

お疲れ様です。

読了ありがとうございます。


満足いただけましたでしょうか。


熱い、チル、そしてまた熱い。

どうですか、整ってきましたか?

次はチルのターンですよ。


ご感想やお気づきの点などがありましたら、どうぞコメントにて教えていただけると嬉しいです。


※本作は制作過程において、AIから文章の添削や創作上の助言を受けています。

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