↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い目の子どもたち ーーマリー・アントワネットと、⾰命の時代に⽣きた⼦らの物語  作者: はまゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/19

第17話 ゾ エ — — 名 前 を 変 え た ⽇

⾰命の嵐が激しくなって、私はパリを離れました。

王妃陛下とも、シャルル殿下とも、別れなければならなかった。

別れの⽇のことを、詳しく話すことはできません。今でも胸が痛いから。

ただ、王妃陛下が最後に私の⼿を握ってくださったことは、覚えています。

「⽣き続けなさい」と王妃陛下はおっしゃいました。

アルマン様と同じ⾔葉でした。

⽣き続けること。それが、あの時代に⼦どもたちに残せる、唯⼀の⾔葉だったのかもしれません。

私は名前を変えました。

ゾエ・ベルサン・マルタンという名前では、危険だった。王家と関係のある者として知られていたから。だから別の名前を名乗って、別の場所で⽣きました。

名前が変わると、⾃分が誰なのかわからなくなる瞬間があります。

朝、⽬を覚まして、⾃分を「ゾエ」と思ってしまう瞬間。すぐに別の名前に切り替えなければならない。その切り替えの瞬間に、あの頃のことがよみがえってくる。

チュイルリーの庭。積み⽊の笑い声。王妃陛下の温かい⼿。アルマン様の⻘い⽬。

それらを、胸の奥に閉まって、別の名前で歩いた。

⼈間は、名前が変わっても、記憶は変わらないのです。

むしろ名前が変わった分、記憶がより鮮明になる気がしました。失ったものの重さが、より⼤きく感じられた。

⽣き続けることは、時に苦しいことでした。

なぜ⾃分だけが⽣き続けているのか、と思う夜がありました。シャルル殿下は収監されて、幼くして亡くなった。王妃陛下は断頭台に。アルマン様は戦場に。なぜ私だけが、こうして⽣きているのか。

そういう夜には、アルマン様の⾔葉を思い出しました。

「何があっても、⽣き続けなさい。それが、⼀番⼤切なことだから」

その⾔葉が、私を⽀えました。

⽣き続けることが、彼らへの答えだと思うことにしました。⽣き続けることで、あの⼈たちの記憶を持ち続けることができる。覚えている者がいる限り、彼らは消えない。

それが私の、⽣きる理由になりました。

⽼いた今も、それは変わりません。

私が覚えている間、あの⼦どもたちは⽣きている。

王妃陛下は⽣きている。

アルマン様は⽣きている。

それだけが、今の私の仕事です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。