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青い目の子どもたち ーーマリー・アントワネットと、⾰命の時代に⽣きた⼦らの物語  作者: はまゆう


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15/19

第15話  ア ル マ ン — — 最 後 の 冬

チュイルリーの最後の冬、僕はよく庭に出た。

⼈⽬を避けるために、早朝が多かった。夜明け前の庭は冷たく、静かだった。霜が降りていることもあった。

パリの空が、少しずつ⽩くなっていく。

その時間が、好きだった。

宮廷でも、街でも、⾰命でも、まだ何も動き出していない時間。ただ空が⽩くなる。それだけが起きている。

その庭で、ゾエと会うことがあった。

彼⼥も早起きだった。眠れない夜が多いのかもしれない。

積み⽊の話をした。シャルルの笑い声の話をした。他愛ない話を、冷たい朝の空気の中でした。

ゾエは賢い⼦どもだった。問いを⽴てる⼦どもだった。

「アルマン様は、⾰命が正しいと思いますか」とある朝、彼⼥が訊いた。

僕はしばらく考えてから答えた。

「正しい、という⾔葉は難しい。でも、変わらなければならない、とは思っている」

「変わることで、みんなが幸せになりますか」

「わからない」

と僕は正直に⾔った。

「歴史はそう約束してくれない。ただ、変わらないことの⽅が、もっと多くの⼈を不幸にする、とは思う」

ゾエは考えていた。⼦どもが真剣に考えるときの顔。額に少しだけ皺が寄る。

「でも、王妃陛下は」

と彼⼥は⾔った。

「王妃陛下は悪い⼈じゃない」

「そうだ」

と僕は⾔った。

「悪い⼈じゃない」

「じゃあなぜ」

「ジャックという庭師の息⼦が、昔教えてくれた⾔葉がある」

と僕は⾔った。

「個⼈とし

て悪い⼈かどうかと、⽴場として正しいかどうかは、別の話だ」

ゾエはまた考えた。

「難しいですね」

とようやく⾔った。

「そうだ」

と僕は⾔った。

「でも、難しいことを、難しいままにしておくことも、⼤切だと思う。簡単な答えで⽚付けると、誰かが傷つく」

その朝の会話を、今でも覚えている。

あの⼦はちゃんと⽣き延びてほしい、と思っていた。⽣き延びて、難しいことを難しいまま考え続けてほしいと。

それが僕の、彼⼥への願いだった。

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