↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元婚約者とその友人(女性)は、ある種お似合いのベストフレンズです(あなたに奪われたものを数えましょう)  作者: 暁
《5》ひとつひとつ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/43

ひとつひとつ【9】ルスカ・魔道具学会懇親会② 

「ミリアム・パークレスターさん?パークレスター子・爵・家・の方ね。」


わたくしの後ろから、声が掛かりました。


 振り返ると、黒髪の綺麗なお姉様です。ダークカラーの細身のスーツがスタイルの良さを引き立てていて、洒落た眼鏡の美人さんです。


確か、先ほど研究所の方々のグループにいらっしゃいました。



「はい。パークレスター子爵家の者です。」


胸を張って答えました。パークレスター領はわたくしの誇りです。


お姉様は上から下まで値踏みするかのような視線をわたくしに投げかけ、その視線を隠しもしません。


「わたくしは、カレン・アランデル、ダスラウ王国の伯爵家の者よ。大学の研究室に在籍中で学会正会員。グレンとは、研究室で懇意にしているの。一緒に食事にも行くし、共同作業も多くて。気が合うのかしらね。」



これは、ソフィア様の言っていたあれですね。


グレンがこの大人っぽいお姉さまとカフェで食事をしたり、並んで資料を検討している場面が浮かびました。


甘酸っぱいという、青春というものなのではないでしょうか。


わかりました。


グレンが我が国でどう過ごしているか、ご心配なのですね。


「グレンは元気です。マイベスト猫をお迎えするとかいう巨大な部屋に、資料を取り散らかして仕事に励んでいます。」


「マイベスト猫・・・。」お姉様は少し鼻白んだようでした。


あら?猫は苦手な方かしら?


人それぞれです。


「婚約のピアスはつけておられないのね。」


「はい。現在婚約しておりませんので。」


「そう。まだなのね。」


「はい。まだです。」


 再確認されました。まだ婚約者はおりませんが、今のところ困っておりません。


こ、これは、遠回しにお前は地味だ!とおっしゃりたいのでしょうか。


地味だから婚約者もいないのだ!と。


わたくし自身は気に入っていても、わたくしの容姿は、一般社会的に不評の様です。


綺麗なお姉様にまで指摘されると若干へこみます。



お姉様は続けます。


「分かってらっしゃるのかしら?グレンは先々を期待されていて、高等部を出れば大学に進学するでしょうけれど、その先はダスラウ王国の研究所での将来が決まっているの。この国には長くは留まらないわ。」


「そうなんですね。グレン優秀ですものね。」


ぶすくれ少年のくせに。



 いきなり肩を抱えられました。グレン?


わたくしの体がかしいでしまう勢いです。


「カレン。そんなことは決まっていない。勝手なことは言わないでくれ。」


大声は出したくないのでしょう。声量は押さえていますが、怒りがこもった声です。


「あら、ほぼ決まったことでしょう?」


「決まってなどない。これ以上いいかげんなことを言うなら、俺にも考えがある。」


あらあら。


お姉様は不服そうな顔で、不機嫌なグレンを見つめました。


グレンはお姉様を不機嫌なままにらみつけると、わたくしの手をとりました。


「ミリアム行こう。」


手を引かれてその場を後にします。


わたくしの季節のきのことチーズ掛けお肉が遠くなる。さようなら。

赤身だったのかしら・・・。それとも霜降り・・・。


「良いの?仲良しさんではないの?一緒にごはんに行ったり、共同作業したりして気が合うっておっしゃってたわよ?」


グレンを見上げます。


グレンは顔をしかめました。


「何言ってんだ!カレンは!食事は大学のカフェテリアか研究所の簡易食堂でみんなで食べてる。そうじゃなきゃ自分の机でなんかかじってる。共同作業っていったい何のことだ?」


首をひねります。


「あ、ひょっとしてあれか?実験器具の配達があって、補助研究員が運んだんだけど、あの運搬作業のことか?何もないから。誓って何もないから!婚約打診されたけど断ったから!!

他の女の子とも何にもないから!!!」


グレンは慌てますが、慌てる必要はありません。


残念ながらわたくし同様、グレンも青春とは縁遠いようです。


ただ、わたくしは地味ですが、グレンは。


つやつやの輝くミルクティーベージュの髪に琥珀の目。整いすぎた容姿の大きくなった「窓辺の少年」。


「そういえばグレン、美少年だったわね。もったいない。」


これだけの美少年なのに、青春と縁遠いとは何か理由があるに違いありません。


・・・きっとアレです。


女の子に対して、「お前は〇〇(お好きな虫の名前)だ!」と虫認定しているのではないでしょうか。


わたくしにやったように。


虫認定されて喜ぶ女子は稀です。わたくしは女子寮在住ですのでよく知っています。


グレンは知らないのでしょうか。


哀れです。


「グレン、虫好きの女の子は少数派なのよ。」


「ミリアムはこうだから。必要なところに使えない遺伝的ツールって意味ないわ。ホント。」


何かぶつくさ言っていますが知りません。



 移動途中、少々お酒をたしなまれたのか、


「LなのかRなのか。RなのかLなのか。」


とつぶやきながら、何もないはずの空中をにらむエミリ様に遭遇しました。



 グレンに手を引かれながらふと思いました。


グレン、ダスラウ王国の研究所に就職を望まれてるのね。


不思議ではないけれど、何も不思議はないけれど。喜ばしいことだけれど。


もしそうなったら・・・何と寂しいことでしょう。


 ここ数年の経験から、思うようになったことがあります。


気の合う人、信頼のできる人に出会ったとしたら、それはとても貴重なことで、その人をできる限り大切にしたいということです。


グレンは一緒にいるととても楽しい人で、信頼できる人です。


グレンを大切にしたい。


その気持ちに嘘はありません。


もしも、グレンがダスラウ王国の研究所への就職を望むなら、笑顔で祝福しましょう。


しかしきっとその時、わたくしは寂しくてならないでしょう。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。