↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元婚約者とその友人(女性)は、ある種お似合いのベストフレンズです(あなたに奪われたものを数えましょう)  作者: 暁
《4》婚約解消の後先

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/43

婚約解消の後先【3】 マリエル様①


 アレックス・ゴードン様が久しぶりに学園にいらっしゃったのは、フィリップ様とわたくしの婚約解消が成立した後の、学園のお昼休みの時間帯でした。


 その日はグレンが研究室に顔を出していて、昼休みに高等部のカフェテリアに一緒に来ていました。以前グレンから卒業試験のご褒美カフェテリアクーポンを譲ってもらっているので、わたくしのおごりです。

学園に来る用事はあまりないかも、とグレンは以前言ってはいましたが、2,3日に1回は学園に来ているのではないでしょうか。


 寂しい人数になりましたが、マリエル様とフィリップ様とお友達もカフェテリアに来ていました。

ここのところフィリップ様は生気が抜けた状態。周囲を取り巻いていた信奉者も欠いて、一人で場を明るくし続けるのはいくらマリエル様でも苦行でしたでしょう。自慢の明るい笑顔も、維持できない瞬間を見せることが多くなっていました。全体的に光の行き届く明るいカフェテリアのその場所だけ、どんよりと何かが停滞していました。


 婚約解消後、フィリップ様から届いた不快な手紙には、伝わらないとしても、わたくしの心情を整理して返信いたしました。これ以上関わり合いになることもないでしょう。


 マリエル様はわたくしとグレンを見て咄嗟に顔しかめました。以前のマリエル様なら、こんな表情を表に出してしまうことなどありません。 


間が悪く、お昼休みが始まったばかり、カフェテリアはちょうど注文で込み合う時間でした。


 わたくしはグレンと一緒に注文と会計を済ませたばかり、本日のランチにショコラクラシック、アイスコーヒーです。

このショコラクラシックは、月に一日限定、学園カフェテリアのシェフがパティシエを兼ねて作ってくれる至高の一品です。

カフェテリアのメニューが発表になると、スケジュール帳のこのショコラクラシックの予定日に2重丸をつけています。うっかり忘れると次の月まで味わえないのです。

ダニエルズのオーナーが、市場に最近出回っているカカオ豆をチョイス中の学園カフェテリアのシェフを目撃したことがあるそうです。

「なかなか渋いチョイスだった。」

そうで、本当に美味しいクラシックショコラなのです。

一人1つまでのオーダー制限がうらめしい。

今日はグレンと一緒ですので、グレンと1個ずつオーダー。

日当たりの良い、端っこのテーブル目指して歩いていきます。

窓が大きくとってあり、明るいスペースです。


「ねえ、ミリアム。」


「何?」


「俺のケーキ、分けてやろうか?」


「え、いいの?」

遠慮などしません。遠慮は人生の損失です。



 その時、わたくしは見ていませんでしたが、ソフィア様から聞いたところによると、ちょうどマリエル様が向かいからすれ違いになるところでした。

マリエル様は持っていたトレイとご自身の体で、グレンとわたくしのトレイを、ちょうど上からはずみをつけて抑えるように、傾けました。大きな動作ではありません。たまたま、と言って言えないことは無いくらいの程度でした。

 しかし、被害は甚大でした。


 本日のランチはトマトソースのパスタでした。サラダ付きで。

お皿からトレイに流れ落ちたトマトソースパスタの一部がマリエル様の制服に。レタスの緑とコーンの黄色が映えます。

それから、重心が傾き皿から転がったわたくしのショコラクラシックと一部はわたくしのものになるはずだったグレンのショコラクラシックがマリエル様の制服の上に落ちて行きました。その瞬間はスローモーションの様でした。

どのような技なのか、トマトソースの一部がはねてマリエル様の美しいピンクブロンドをトマト色に彩っています。色目的には可愛らしいかもしれません。


 「なんてこと!」


 「なんてこと!」


 マリエル様とわたくしが叫びました。


 「月一度のショコラクラシックが!」


 「わたくしの制服が!濡れて気持ちも悪いわ。ひどいわ。どうしてこんなひどいことをなさるの?」


 嘆く対象が違ったようです。責任の所在の認識も違うようです。


 「そんなにわたくしが憎いのね。わたくしは何も悪いことなどしていないのに、誤解から嫉妬なさるなんて。嫉妬からこんなことをなさるなんて。なんて醜い心根なの。」

 

 確かに信奉者を減らしたかもしれませんが、マリエル様は人目をひく美少女です。人目を惹く美少女が目に涙をためていれば、同情の念が湧くのが一般的でしょう。


 マリエル様は信奉者を減らしたかもしれませんが、わたくしの方にはもともと信奉者などいません。

ダニ友はいますが、そのダニ友ソフィア様が、色とりどりのマリエル様を見て、余裕の表情でげらげら笑っているのを目の端で確認しました。


ほんとにもう。


 わたくしの斜め後ろにいたグレンが怒気を発しながら、一歩踏み出そうとしたのを止めました。留学先のダスラウ王国研究所研究員の立場でここにいるのです。何かあっては困ります。

 


 その時周囲のざわつきの色合いが変わり、何だろうと振り返ると、アレックス様がカフェテリアの入り口のところにいらっしゃっていました。隣には何故か、いつも通り緩い笑顔のフランツ様がいらっしゃいました。

アレックス様は大股でカフェテリアに入ってくると、マリエル様の前までやってきて立ち止まりました。アレックス様の気迫がなせるのか、込み合うカフェテリアなのに入り口からマリエル様の前まで道ができていました。


 マリエル様はアレックス様を嬉しそうに、不思議そうに見上げました。


「アレックス。帰ってきてたの?連絡いただいてないわよ。」


 アレックス様はマリエル様をじっと見つめます。マリエル様に付着している本日のランチもショコラクラシックも気にならないようです。流石です。


そして、しばし後、アレックス様は切り出しました。


「マリエル、君はしくじった。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。