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ゼムナ戦記 ストレイドッグホープ  作者: 八波草三郎
違うようで同じ二人

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GPFの犬(1)

 ロゾー・ハレハンタは星間(G)平和維(P)持軍(F)パイロットである。駐留艦隊所属パイロットは二日間の待機任務と次の一日が非番という三日周期のくり返しとなる。

 楽に聞こえるかもしれないが、待機任務中は星間銀河標準時間の一日二十六時間すべてが待機であり、なにかあれば出撃を命じられる時間になる。ただし、待機中の睡眠は当然認められており、体力的に厳しくはない。


(とはいえ、非番明けはダレる)

 特に楽しい一日を過ごした彼は憂鬱に感じていた。


 戦闘艦一隻の搭載アームドスキンは三十機。ローテーションで常に二十機は動員できる状態をキープしている計算だ。ベッフェルベリ駐留艦隊の場合、それが三隻六十機が稼働状態に置かれていて、非常時は非番隊員も動員される。

 これは比較的少ないほう。最低二隻単位で運用される戦闘艦なので奇数であることは考えにくい。特殊事情における措置なのだ。他の宙区の国家駐留となると四隻から六隻が通常運用。それがゴート宙区となると二隻から多くて四隻となっている。


(まったくもって頼りになんかされてないもんな)


 非番に上陸すると肌で感じる。一般的には加盟国民はGPF艦隊の存在を頼みの綱としている。星間法に触れる事案が発生すると、国軍などより迅速に対応してくれるからだ。だから宇宙の警察などと呼ばれる。

 ところがベッフェルベリを含めゴート宙区の駐留艦隊は、まるでいてもいなくても同じ存在として扱われていた。なぜなら、航宙安全保障においても国家間紛争においても絶対的に機能する戦力を備えているからである。


(ガルドワ軍とブラッドバウがいるかぎり安心安全ってな)

 聞きかじりの知識であるが、この二つが挙げられる。


 この両陣営が連携してゴート人類圏の安全を管理しているといって過言ではないのだそうだ。それだけの戦力を有し、宇宙警察として機能している。

 そして、この両軍にプラスして協力する各国軍が加われば、星間銀河の誇る(G)(F)と同等か、しのぐほどの強さだという。信じられないが、そう噂されていた。


(事実の一端を見た気がしたけどな)


 昨日入れてもらったミレニティの家を思いだす。そこに置かれていたアームドスキンはとても個人所有のものとは思えない。スクラップのパッチワークなどではない。立派に稼働するであろう機体だった。


(俺の見間違いじゃなきゃあれは……)

 星間銀河でも最新鋭機に該当する技術が用いられている。


 推進機構として搭載しているのは重力波(グラビティ)フィンだと思われる。プラズマスラスターのノズルなどどこにも配されていない。推進用端子突起(ターミナルエッジ)が機体各部に備えられていた。


(あれをレニーが理解してるだけでなく組み立ててるだって? どこの笑い話かと思った。言わなかったけど)


 実際に彼女は親族を喪って一人で生きている。隣のメーダ家には多大に世話になっているとしても、とてもではないが考えにくい状況だ。それを許した後見人など正気を疑う。さっさと放りだしたとしか思えない。


(気丈に振る舞っているが、絶対に不安なはずなんだ)


 だからこそ肩入れしたし再訪の約束もした。ロゾーがまたどこかに飛ばされでもしないかぎり関わっていきたいと望んでいる。一人生きていくのは精神的にかなりきつい。彼だからこそ知っている。


「そういえば誰かさん、昨日は上陸申請でお休みだったそうだぜ?」

「あの惑星(ほし)に上陸だって? さすが(G)(F)出身の優秀なパイロットさんは俺たちと違う」

「未開人のお相手もしてくださるんだろうさ」


 考え事がしたくてトレーニングルームで無心に身体を動かしていると聞えよがしに皮肉を言われる。駐留艦隊の隊員はほとんどと言っていいほどベッフェルベリに上陸をしない。彼らは住人を未開人と馬鹿にしている。


(同じ加盟国民だってのに。だから「艦隊の人」なんて揶揄される)


 他では考えられないほど関係性が悪いと聞く。頼りにされてしかるべき隊員たちが半ば無視されているのも不服なのだろう。言葉があまり通じないというのもある。

 しかし、住人が一方的に悪いのではない。ここは質の悪いGPF隊員が吹き溜まっている。規定上、派遣されているだけで必要とされていないのも管理局は把握している。なので、左遷先にされてしまっていた。


(オレも他に行くとこないからここに飛ばされたようなもんだけど)


 駐留艦隊に関してなにもかも伝聞なのは彼が他を知らないからだ。GPFへの転属辞令を受けて初めて配属されたのがこの地なのである。耳障りの悪い噂ばかりが聞こえてきて上陸を躊躇っていたが、艦内で待機していてもこうして皮肉られるばかりなのに耐えかねて一年越しで上陸してみたのである。


(オレ、なんのためにここにいるのかわからなくなってた。とりあえず気を紛らわせるつもりで上陸しただけなのに)

 そこでミレニティやメーデ一家と出会った。

(なんだか、やっと時間を有効に使える機会が来たような気がする。これからは上陸一択だな。ちょっと勉強しないと)


 σ(シグマ)・ルーンにゴート語習得カリキュラムをダウンロードする。器具トレーニングしながら耳コピから始める。


 ロゾーは少しは前向きな余生を過ごせそうな気がしていた。

次回『GPFの犬(2)』 「(おか)にいい人でもできたの、ロゾー?」

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