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薄らと朝霧が煙る砂地を走る。
行く先は決まっていない。ただ、バシュクが去った方角に向けて進むしかなかった。
『運が良ければまだ生きている……』
今となっては、ザルハンのその言葉だけが希望だった。
「あんたたちの目的は聖域だろうに……」
先を進むナイザが前を向いたまま誰に言うでもなく呟いた。
確かにオリーとフレアが目指しているのは聖域だ。サマルを追う必要はない。
必要はないかもしれないが、聖域へは全員が揃っていてこそ意味があると思えた。
サマルが洗礼を受けることも、ナイザがそれを見届けることも、そのどちらも、ここで途切れて良いはずがない。
「ナイザさん、バシュクの行き先に心当たりは?」
ナイザの独り言が聞こえなかったふりをして、オリーが話しかける。
このまま進み続けても、バシュクに追いつけるとは思えなかった。
ナイザはオリーの問いに「ああ」と答えて、西の方角を指差した。
「バシュクの領域は砂漠の西側だ。このまま西に進めば、奴らの根城に入る」
ナイザが指差した先に視線を移す。辺り一面砂地しか見えない場所では、今いる場所さえ知ることが困難だった。
「バシュクに襲われたのは砂漠地帯の中央だ。
あそこから北に向けば、数日で高原地帯に入れたんだがな……」
あと少し……、聖域は目と鼻の先にあったのだと知った。
しかし、今はそれどころではない。
「このまま西に進めば、バシュク族に遭遇するのですね」
フレアが果てしなく続く砂漠を見据える。
いつ遭遇するか分からない、できることならば、こちらが先んじてバシュクを見付けたいところではある。
「そのうち砂丘が見えてくる。そこに奴らはいるはずだ」
前方に目を凝らす。
すっかり朝霧は晴れ、日の出に伴って気温が上がってくる。
遠くに蜃気楼が見えた。
砂上に揺らめき、浮かび上がるように砂丘が見えた気がした。
どれほど離れているかわからないが、目的地はしっかりと目に焼き付けた。




