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フォニには何かが欠けている。
そう思えてならない。
情などという言葉で済まされるものではない、何か、根本的なものが抜けているような気がした。
自分たちの勝手な想像で作り上げたものとはいえ、フォニという少女像が、目の前で音を立てて崩れていく。
修復などできそうになかった。
「ここまで来て無駄にはできないでしょう。
おじさまは気を失っているし……、ネコテコさん、聖域へ行きましょう」
今度はしっかりと笑みを浮かべている。
冷酷というわけではなく、単に、聖域へ行くことが目的なのだと言っているのだ。
「いや、サマルさんが……」
ネコテコが言い淀む。
フォニの刺すような視線に、ネコテコは目を合わせられず視線を揺らす。
「さっきも言ったけど、サマルは仕方がなかったのよ」
考え方は人それぞれだ。それを他人が曲げようとすることは間違いであると理解しているつもりだ。
それでもサマル救出を優先したいと考え、それに手を貸して欲しいと願うのは、考えを強いることになるだろうか。
言葉を失うネコテコの後ろから、絞り出すようなナイザの声が聞こえてきた。
「サマルは、バシュクに連れて行かれたか……」
サマルの姿が見えないことと、フォニとナイザの会話で全てを悟ったのだろう。砂を握りしめたまま微動だにしない。
どう声をかけたら良いのか、言葉が浮かんでこなかった。
慰めるのも違う。元気付けるのも違うだろう。
どうして良いか分からない、ぼやけた思考だけがぐるぐると巡る。
「フォニの言う通りにしろ。お前さんらは聖域へ向かえ」
掠れるような声。
その言葉で、ナイザの意思は伝わった。
その後に訪れた短い沈黙を破ったのは、フレアの一言だった。
「ネコさんはその子を連れて行って」
その視線は真っ直ぐで、至極冷静なものだった。
「私とオリーはサマルちゃんを助けに行く。
これは決定。
──覆らない」
フォニがフレアを見て、一瞬息を飲むような声を上げた。
何か恐ろしいものを目の当たりにしたような表情だった。
誰もが誰かに無理強いすることはできない。それがわかっていても、フレアには耐えられなかったのだ。
ナイザも言葉を失いながらフレアを見つめていた。
静かな圧がその場を包んだ。
オリーの思いはフレアと一緒だ。ナイザと共にサマルを救いに行く。
「ごめん、ネコさん」
きっとフォニの気持ちは変わらない。それはどうしようもないことだ。
オリーの声に、ネコテコが静かに頷いた。
それを見て、フォニが震える声でネコテコを催促する。
「い、行きましょう、ネコテコさん」
少しの間地面を見つめたままのネコテコだったが、やがてゆっくりと立ち上がると、ナイザに向かって深々と頭を下げた。
静かに、けれども、避けようのない別離が目の前に横たわっていた。




