3-19
ガシュル族の移牧地境界に着いたのは、砂嵐の日から三日後だった。
旅は順調だった。
行程の半分を過ぎ、これから先はザルハンの移牧地になる。
前日にガシュルの水場に立ち寄り、食料と水の補充を行ったのは、他部族の水場に立ち寄らないためらしい。
「こっから先はザルハンの領域だ。
なるべく目立たないようにと言いたいところだが、それは無理な話だ」
ナイザの言葉に、身が引き締まる思いがした。
黄金の王の民と呼ばれるザルハン族。聞いた限りでは心象は良くないが、それほど害はないという。
ナイザが言う通り、見つからずに進むことは難しいかもしれないが、それでも、なるべくなら出会いたくはない。
「食料と水、それと、目につくようなものはなるべく隠しておけ」
食料や水は隠しようがないと思ったが、それ以外の貴重品の類は、できるだけ目につかない場所に持っておく方が良さそうだった。
ナイザの忠告を聞いて、フレアは慌てて腰に下げた短刀を懐にしまい込んでいた。
アウギュリエスから贈られた卒業祝いの短刀だ。
アウリスフレランス一の鍛冶屋の一級品だ。目をつけられて奪われてもおかしくはないかもしれない。
ザルハンに出くわさないのが一番だが、この先どうなるかなど知る由もない。
「ザルハンならまだましだが……」
ナイザが言い淀む。
おそらく、以前話していたバシュク族のことだろう。
食料や水、酒や金品だけならまだ良い方で、場合によっては、生命さえ奪われかねない。
「バシュクに他部族の移牧地など関係ないからな」
それはつまり、この旅を続ける以上、バシュク族に鉢合わせる可能性があると言うことだった。
バシュク族がナイザの言うように蛮族であるならば、出会った際にはこちらも相応の対応をする他ないだろう。
ただの蛮族ならばやりようはあるかもしれない……。
いずれにせよ、ザルハンともバシュクとも出会わずに、無事聖域に辿り着けることを願うばかりだった。




