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私と彼女の物語 -Travelers of the Far Green Road-  作者: ORSBN.shu
第三部・盛陽
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80/104

3-10

──翌早朝


オリーとフレアは親子に連れられて村まで戻った。

死を覚悟した昨日の道のりを、いとも容易く、安全に、危険を一切感じることなく到着したことで、遊牧民や砂馬の重要性をひしひしと感じることとなった。

やはり昨日のような行動は無謀であり浅はかなのだ。


親子は一度ガシュル族の野営地に戻り、諸々の用事を済ませた後で、オリーとフレアを迎えにきてくれると約束してくれた。

出発まではまだ数日かかるが、聖域への道筋は立った。

二人はその足で宿屋へ向かい、旅の支度を整えることにした。


二人を出迎えた宿屋の主人は、一瞬驚いたような顔をしていたが、どこかホッとしたような表情を見せた。


「無鉄砲に砂漠に入って、野垂れ死んでるかと思ったぜ」


冗談にしてはキツい言葉だったが、ほとんど冗談ではなかったことに、笑うに笑えない二人だった。

その後、遊牧民に出会えたことと、さらには彼らが聖域に連れて行ってくれることを主人に伝えると、まるで自分のことのように喜んでみた。


「しっかし、遊牧民に会えるとは、よほど運が良いんだな。

 幸運の神ってのもいるもんだ」


そう言いながら今度は豪快に笑い声を上げる。

残念ながら幸運を司る神など聞いたこともない、今回の一件については『いたずらと変化』を司る、カリメラの気まぐれのような気もする。


「まず、遊牧民に会えること自体が稀なんだよ。

 その中から、聖域に向かう連中に会えるなんてのは、砂漠の砂の中から希少な一粒を見つけるくらいなもんだぞ」


主人の話は、言い得て妙だと思った。

それほどまでに、サマルとナイザとの出会いは奇跡的なのだ。

その奇跡を噛み締めつつ、これからの旅の支度について主人に相談を持ちかけた。


「食料や水、旅の道中の必需品は用意してくれると言っていましたが、私たちは何を用意したら良いですかね?」


オリーの問いに、店主が少しニヤリとして見せた。


「手ぶらで砂漠に入る怖さは身に沁みただろう」


店主の言う通り、何の用意も無しで砂漠に立ち入ることの厳しさは、身をもって実感したばかりだ。


「その上でだ、こっから高原に抜けるまでに、食料と水は最低でも一月分は必要になる。

 遊牧民が用意するとしても、あいつらはその場で何とかしちまうからな、最悪、砂食い虫を食うことになる。

 それが嫌なら、自分の食糧はある程度用意したほうが良い」


何となく嫌な予感がする言葉が聞こえた。

遊牧民は虫を食べるのかと考えると、背中がゾワゾワとするのがわかった。


「荷を運ぶ砂馬はあいつらに任せるとして、あんたらが必ず用意しなきゃならんのは、夜間の寒さに耐える防寒具だろうな。

 凍りついて自分が『荷物』にならないように気をつけるこった。

 昼は暖かいから腐るのも早い」


またもや豪快に店主が笑う。

彼の言う『荷物』という言葉が、決してただの比喩ではないと寒気が走る。

オリーとフレアが急いで防寒具の準備をしようと相談していると、それを聞いていた店主が人差し指を立てて得意げな顔をする。


「防寒具の他にも、必要なものは旅慣れたやつに聞くのが早い。

 ここを出て数軒先に何でも屋がある。今から行ってみな」


主人はそう言って不敵な笑みを浮かべる。

それはさておき、店主の言う通り、旅の支度は旅慣れた人物に聞くのが合理的ではあった。

オリーとフレアは宿屋の主人に小さく頭を下げて、無意識に早足でその店に向かった。

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