3-6
どれくらい待っただろうか。
少女が建ててくれた簡易の日除の中で、二人は少しばかり眠っていた。
「来たわ」
少女の声で目を覚ました。
少しばかりの休息だったが、頭の痛みはすっかり取れていた。
立ち上がって、両手を振る少女の後ろ姿を眺めた。
所々に見える仕草が少女然としていて、見た目によらずまだ幼いのではないかと思えた。
「父さん!こっちー!」
少女が声を上げて父親を呼んでいる。
そういえば──神父が話していた親子を思い出した。
自分たちは、この親子を探して砂漠に踏み入ったのではないかと閃いた。
馬の背に瘤がついたような、四足の生き物が複数頭やってくる。
背には沢山の荷物が積んであった。
馬車を引く馬とは顔つきが違う。眠そうな目に長いまつ毛が印象的だった。
これが砂馬なのだと目を見張った。
荷物を背負った砂馬は、少女のそばまで寄ると足を止め、それを折り畳むようにしてその場にうずくまった。
「何事かと思ったぞ!」
砂馬を降りた男が、開口一番少女に詰め寄る。
少女はちろりと舌を出して見せ、それからオリーとフレアについて話し始めた。
「旅の人が行き倒れ寸前だったの」
事実ではあったが、改めて説明されると何とも気恥ずかしい話だった。
少女は二人に視線を向けながら説明する。
咄嗟に姿勢を正して深々と頭を下げた。
「助けていただき感謝いたします。
私はオリビア・オースバン、ユースガリア王国所属の冒険者です」
「私はフレイア・レイシアナ、同じく冒険者です!」
男はチラリとこちらに視線を向けたが、特に何を言うでもなく小さく頷いただけだった。
浅黒い肌、短く刈りそろえた黒髪と太い眉毛。
精悍な顔つきに似合わない笑い皺が刻まれている。
──あの眉毛は父親譲りなのだ。
「まったく……」
男はそれ以上口を開くこともなく、砂馬の背から荷物を下ろすと、何やら準備を始めた。
それを見ながら、少女が二人に話しかけてくる。
「もうすぐ日も暮れるし、今日はここで野営しましょう」
野営自体は初めてではないが、砂漠での野営となれば話は別だった。
かといって、これから村に戻る手段もなく、ここで夜を明かすほうが現実的だと思えた。
「サマル、食事の用意を頼む」
男に言われ、サマルという少女は食材を積んだ砂馬へと歩いていった。
「旅の人らも、サマルを手伝ってやってくれ」
言われてすぐに、オリーとフレアはサマルの元へと駆けた。
食事の用意をしている間にも、男はさっさと野営用の天幕を張っていく。手慣れたものだと思いながら、これが遊牧民なのだと感心した。




