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酒樽が描かれた木の看板を見付け、恐る恐る扉を開けた。
おそらく酒場だろうと当てをつけて足を踏み入れると、乾いた土と、それに混じって酒の匂いが漂ってきた。
開けた扉から差し込んだ日の光で、店内の埃が舞うように瞬いている。
殺風景な店内には、数人の客が古びた丸い木のテーブルに着いて、大ぶりな木製ジョッキを傾けている。
まだ早い時間だからなのか、賑わっている様子はなかったが、どうやら酒場で間違いないようだ。
二人が店に入ってきたのに気付いた店主らしき男が、奥のカウンターから顔を覗かせて声をかけてきた。
「いらっしゃい。
旅人か……好きな席につきな」
口髭を生やした無愛想な店主は、二人を歓迎している様子ではなかったが、かといって迷惑と言った様子でもなさそうだった。
広くも狭くもない店内を奥へと進み、オリーとフレアはカウンターの席に着き、乾いた喉を潤そうと店主に声をかけた。
「水を二ついただけますか」
店主はチラリとこちらを見た後で、視線を手元に戻してから静かに答えた。
「この辺の奴じゃなさそうだから教えておくが、ここいらは酒より水の方が貴重だ。
高いが構わんか」
そう言って、走り書きしたようなメニューを指差してみせた。
店主の言葉の通り、そのメニューには水が酒類の数倍の値で書かれていた。
村の中央の大仰な井戸からも察せる通り、水はこの地域で相当に貴重なものなのだ。土地の大半が乾燥した場所なのだから、その値も不当というわけではないだろう。
この店主が水の値段を釣り上げているというわけではなさそうだ。
とはいえ、二人には酒を飲む習慣もなければ、得意なわけでもない。
お互いの視線を一瞬合わせて、仕方なしといった素振りで店主に頷いて答えた。
それを確認した店主は、小さな木の器に水を注いでカウンターに置いた。
一口で飲み干してしまいそうな高価な水が器の中で揺れる。それを少しだけ口に含み、乾いた喉を潤した。
ぬるいが、それで十分だ。フッと息を吐いて一息ついた。
せっかくだからと食事の相談をしながら、宿はないかと店主に尋ねた。
「この上が宿だ。今なら部屋は空いてるぜ」
そう言いながら店主が上の階を指差す。
なんとも都合の良い店だと思いながら、一部屋借りられるように話をつけた。
店主は「まいど」と言いながら、カウンターにカチャリと音を立てて鍵を置き、そのまま前のめりになりながら、少し目を光らせるようにして二人に話しかけてきた。
「見たところ東から来たみたいだが、ザーローンにでも行くのか?」
店に入った時点で、すでにこの地の旅人ではないと見破られている。
そうとなれば話は早い。
話好きな一面を見せるこの店主から、大陸西部の情報を聞き出すのが手っ取り早いと考えた二人は、身を乗り出すようにして店主と話を続けることにした。




