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日中の悲壮な出来事の後で、気分が晴れないオリーとフレアだったが、思いがけない来客によって少しだけ気を紛らわせることができた。
蒼い海月亭でオリーとフレアを待っていたのは、王都に着いて以来、久しぶりに顔を見せたアウギュリエスだった。
ヨウの計らいで、中二階のいつもの席に少しばかり豪華な食事が並べられた。
テーブルを挟んで、顔を見合わせる。
まだ一月も経っていないというのに、随分と長く会っていなかったように思えた。
王都に着いてからの出来事を話し、久しぶりの師との会話を満喫した。
「魔法学園はどうですか?」
アウギュリエスの問いに、イリーナの顔が浮かんだ。
頑固者だが職務への姿勢は大したものだ。息が詰まりそうになることもあるが、安心して警護を任せることができる。
学園生活というよりも、イリーナの警護活動に話が盛り上がる。
そして、王立図書館の司書ロウエル。
イリーナと同様頑固であり、その実イリーナよりも折れない彼女は、きっと似たもの同士で息が合うだろうと思わなくもない。
そんな他愛もない会話は、オリーとフレアの心に休息を与えることとなった。
「古語を習おうと思っています」
オリーの言葉に、アウギュリエスは少し驚いてから、何か納得したような表情で静かに頷いた。
「埋もれてしまった古い言葉は、時に今を助ける重要な意味を投げかけてくれます。
学園を卒業する頃には、私よりも詳しくなっているかもしれませんね」
アウギュリエスの笑顔が、何とはなしに心強かった。
フレアも横で力強く頷いている。
自分の選択は間違いないのだと、アウギュリエスとフレアに、背中を押されたような気がした。
談笑は続き、しばらくしたところで、アウギュリエスが一度話を区切った。
それから語られたのは、エルメリアとアルノルドの近況と、バカランディアのその後、レイフォルスとベアトリクスの状況であった。
エルメリアとアルノルドは、オリーとフレアがアウリスフレランスを旅立った数日後に、同じように旅立ったという。
アウギュリエスの友人が同行しているらしく、行き先は教えられなかったが、旅は安全だと告げられた。
バカランディアについては、商団の旅程が明かされていないため、現在の居場所についてはわからないらしい。
彼を侵している龍眠薬の解毒法についても、まだ調査が続いているとのことだった。
レイフォルスの北の村は、近々王命によって洞窟調査が行われる手筈になっているらしい。
冒険者協会からもその依頼が提示されるらしいが、対象は高ランク冒険者に限られるだろうとのことだった。
「高ランクですか……」
フレアがぐぬぬと顔をしかめる。
一度足を踏み入れた洞窟調査に、フレアも参加したいのだろう。
気持ちはわからないでもなかったが、ヴォアの件もあって、対象が高ランクに絞られたのだろう。
オリーとアウギュリエスは、そんなフレアを見て笑みをこぼした。
ずっと心の隅に引っかかっていたベアトリクスについては、ようやく目を覚まし、時折りオリーとフレアの名を口にして寂しそうにしているらしい。
それでも元気に暮らしているという話を聞いて、安堵のため息が漏れた。
ほんの数日、しかもその間ずっと目を覚まさなかった金髪の少女が、オリーとフレアを記憶に留めていてくれている。
胸の内が熱くなるのを感じた。
「ベアちゃんに会いたいですね」
フレアの言葉に、オリーも無意識に頷いていた。
冒険者を初めて、色々と気掛かりなことも増えてきた。
それらに思い馳せていると、アウギュリエスが身を乗り出して、少し小声で話を始めた。
「ここに居れば、すでに耳にしているかもしれませんが……」
オリーとフレアに直接関係がある話ではないと、そう前置きされてから語られた話は、二人にとっても衝撃的な話だった。
「アルメア王国に大きな動きがありそうです。
アルメア王国の冒険者達に、帰国命令が出るかもしれません」
二人の脳裏に、ネーヴァリとパルティアの姿が浮かんだ。




