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私と彼女の物語 -Travelers of the Far Green Road-  作者: ORSBN.shu
第一部・朝暘
21/60

1−20

アウリスフレランスの冒険者協会に、二台の馬車が到着した。

一台はベルトン牧場の荷馬車で、もう一台は乗合馬車だった。

乗合馬車が停留所を過ぎて、協会の玄関先まで乗り付けてくれたのは、折よく他の客がいなかったのもあるが、おそらくは、馭者の心遣いだろう。

アウギュリエスが馬車を降りて、素早く協会の中へ入って行く。すぐに数人の冒険者や、職員を連れて戻ってくると、客車から団長とアフォードを、ゆっくりと降ろし始めた。

協会の出入り口に集まった人々も、それを手伝い、二人はそのまま、二階の応接室へと運ばれて行った。


その様子を、オリーとフレアが荷馬車の上から眺める。

エルメリアは未だ目を覚ましてはない。

戻ってきたアウギュリエスが、エルメリアを抱き抱えて荷馬車から降りる。二人とも、同じように荷馬車から降りて、冒険者協会の中へ入った。


ようやく、一つの冒険を終えたことを実感した。


出発してから丸一日。その程度しか経っていない場所のはずだったが、二人にはえらく懐かしい場所のように感じた。

力が抜けるようにロビーの椅子に座り込む。

狼退治だけであれば、ここまでの疲れを感じることもなかっただろう。あるいは、帰りの荷馬車のせいかもしれない。

何とはなしに、受付窓口にアンセルマの姿を探したが、見付けることはできなかった。


「依頼は達成したから、私達今日からランク2冒険者ね」


オリーが独り言のように話す。

オリーの肩にもたれかかったフレアが、コクリと頷いて返事をする。

疲労困憊のためか、ランクが上がったことを喜ぶ元気も無いようだった。

エルメリアや団長、アフォードの容体は心配ではあったが、如何せん自分達の気力も、体力も、万全とは到底言い難い状態であった。

依頼達成の報告をして、今日は家に帰って、思う存分眠りたい気分だった。


「アンセルマちゃんいないですね」


ポツリとフレアがこぼす。

フレアが自分と同じ様に、アンセルマの姿を探していたことに少し可笑しくなり、「プッ」と吹き出してしまった。


「何か面白いことでもあるのですか?」


フレアが目を閉じたまま問い掛けるが、「何でもない」と誤魔化した。

そんなやり取りをしている所に、アウギュリエスが二階の応接室から戻ってきた。二人の姿を見付けて、足早にやって来る。


「オリビア、フレイア、二人とも良く頑張りましたね」


急に労われて何事かと思いつつも、二人は「はい」と返事をして姿勢を正した。


「ベルトン牧場の依頼達成の件、依頼主から報告を受けています。

 細かい手続きなどは明日になりますが、今この瞬間から、二人はランク2冒険者です」


アウギュリエスが笑顔で昇格を祝う。

冒険者証を見てみる様に言われ、鞄の中からカードを取り出した。いつの間にかランク2と変わっている表示に、不思議な感覚を覚える。

ファンファーレも、花火の演出もない。それでも、手元のカードがランク2の確たる証拠であった。

現金なもので、疲労困憊で今すぐ眠りにつきたかったとしても、自分達が努力した成果を目の前にすると、喜びが湧いてくるものだった。

二人は顔を見合わせ、手を取り合って喜びあった。


「ところで、どうして先生がアンセルマちゃんの仕事を?」


フレアがふと頭を過った疑問を投げかける。

言われてみれば何故だろうと、オリーも頭を傾げる。

アウギュリエスは頭を掻きながら、返答に困っているような仕草を見せた。


「彼女は手が離せない用事があるので、代わりを頼まれたんですよ」


何となく、答えを濁されたような気がしないでもないが、とりあえずそれで納得することにした。

とにかく今は、昇格の喜びよりも、一刻も早く家に帰りたかった。


「先生、今日は帰ります。また明日、冒険者協会に来ます」


オリーが挨拶をする。「ええ、また明日」と言うアウギュリエスの返事を聞いて、フレアを連れて冒険者協会を出た。

ベルトン牧場を立つ際に、ルルトに言われた言葉を思い出した。

「またいつでも、今度は遊びに来てね」二人の気持ちは軽くなり、笑顔が溢れた。


明日、冒険者協会に来たら、聞きたいことが山ほどある。

バカ団のことも気になるし、ランク10冒険者のその後も気になる。

少しだけ、アンセルマのことも気になる。

「明日は、朝早くに冒険者協会に行こう」そう話しながら、二人は足取り軽く家路についた。

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