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私と彼女の物語 -Travelers of the Far Green Road-  作者: ORSBN.shu
第一部・朝暘
20/63

1−19

濃い紫色の空が、もうすぐ夜明けが近いことを知らせている。

アウギュリエスは、ランク10冒険者達の元に歩み寄った。

彼等はこれから、レディオンド率いる騎士団によってユースガリアの王都へ移送され、ユースガリア冒険者協会にて徹底的に調べ上げられる。その後で、遠く海を超えた先の、アルメア王国に引き渡される。

王国の法によって裁かれるため、国への貢献具合によっては、無罪放免となる可能性がないわけではない。王国の英雄と崇められる、ランク10というものの特異性が、彼等を保護してしまう危険性を孕んでいる。

しかし、今後彼等が冒険者としての復帰を望んだとしても、冒険者協会は、それを許すことはないだろう。

六王国冒険者協定は、冒険者を守る一方で、厳しく罰する為のものでもあった。


一箇所に集められたランク10冒険者達は、カヌーアが施した光輪によって、身体を拘束されていた。万が一身動きできる様になったとしても、逃げ出すことは不可能だろう。


石像となったキエロスを見る。

およそ優雅さの欠片もないそれは、憎悪の表情を剥き出しにしたまま、虚空を睨みつけていた。

将来を嘱望され、手厚い支援も受けていたであろう冒険者は、それ以上何を得ようとしたのか。当人しか知る由のないことではあったが、あるいは、仲間に何かを語っていたかもしれない。


煙霧の王国アルメアのランク10冒険者。

アウギュリエスは、その石像を見下ろしてポツリと呟いた。


「キエロス・クュンメネン、あなたには失望しました……」


それほど時間は経っていなかったが、空が曙色に変わろうとしている頃に、屋敷裏の方から荷馬車に乗って戻ってくるレディオンドの姿が見えた。

同じ頃合いに、通りから戻って来るアルノルドの姿も確認できた。


「裏に隠してあった。こいつがあれば移送は問題ない」


アウギュリエスのそばで荷馬車を停め、レディオンドが笑いながら御者台から降りてくる。

合流したアルノルドも、荷馬車が有ったことにホッとしたのか、先程までのような強張った表情は消えていた。


「カヌーアは戻ったか」


レディオンドの問いに頷いて答える。

返事を聞いて、「そうか」と少しばかり名残惜しそうにしながら、アルノルドと共にランク10冒険者達を荷馬車に乗せていく。

「乱暴に扱ったらどこか折れたりするのか?」と言いながら、石像となったキエロスをぞんざいに詰め込む。

「敷き藁くらいなら頂けませんかね」と、アルノルドが返事をしている。

アルノルドも、ユースガリアの騎士に大分慣れたようだ。


ランク10冒険者達を荷馬車に乗せ終えたレディオンドが、積み込みの礼を言った後で、外套の乱れを直してからアウギュリエスとアルノルドの二人に告げる。


「ここから先は俺の仕事だ。

 今回の一件についてはアルノルドから粗方聞いているし、二人は帰って構わんぞ」


先程まで冗談を言っていた朗らかな表情が、キリリと引き締まっている。

夜が明けるのを待って、牧場の家々を回り事情を説明して周るのだ。領内の治安維持のためとは言え、地道で人手のいる仕事だと思わずにはいられない。

とはいえ、騎士団の仕事に手を貸すこともはばかられる。自分は騎士では無く、今は冒険者でも無い。


「乗合馬車を待ってアウリスフレランスに戻る。また後で合おう」


そう言ってレディオンドと分かれた。


すっかり朝日が昇り、休憩所で眠っていたオリーとフレアも、朝日に照らされて目を覚ましたようだった。

ベルトン邸から出てきたルルトとパルルは、レディオンドから事情を聞き、眠そうな目を擦りながら陽の光を眺めていたオリーやフレア、アルノルドに、涙を流しながら礼を言っていた。

事が起きる前に対処できなかったことに、少しばかり悔いが残る。


エルメリアは変わらず目を覚まさなかったが、後半日も休めば魔力が回復すると思われた。

アウリスフレランスに戻った後で、蘇生術について話を聞かなければならない。セラフィエルの庇護下に置くことにも、同意してもらわなければならない。


オリーとカヌーアの治療により、身体的には何ら問題ない程に回復したアフォードではあったが、今のところ目を覚ます兆候は見られなかった。

蘇生を受けた者の予後については、全くもって知識も経験も無い。しばらくは様子を見る必要があるだろう。それは、目を覚ましても変わらないだろう。


そして、龍眠薬により昏睡したままの団長については、今のところ手の施しようがない状態である。プリセラに解毒の方法を探ってもらってはいるが、その方法が見つかる目処は立っていない。

今はただ、プリセラからの報告を待つしか無かった。


陽光に照らされて光る、朝露に濡れた草木の鮮やかな青い香りが、風に乗って舞っている。

朝一の乗合馬車が到着するのは、もう間もなくだ。

オリーとフレアは、ベルトン家の荷馬車でアウリスフレランスまで送って貰えることになったらしい。

二人にエルメリアを託して、アウギュリエスはアルノルドと共に、団長とアフォードを乗合馬車に乗せて帰路に着くことにした。

昼前にはアウリスフレランスに戻れるだろう。


長い夜は明けた。

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