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「……それで、どうにも怪しいと踏んだ俺は、冒険者仲間にそれとなく聞いてみた」
早朝の乗合馬車の停留所で、四人の冒険者が話をしていた。
「依頼ではないが、気になることがある」という、なんとも歯切れの悪い、全く確証のない、根も葉もない噂話を元に招集を受けた面々は、この冒険団の団長が話す内容を、半信半疑で聞いていた。
「あいつらは、人をさらって奴隷商に売り付けてるらしい」
きな臭い話を誰かに聞かれてはいないかと、団員が辺りを気にする。幸い朝の早い時間だったため、自分たち以外の人影は見当たらなかった。
その様子を横目にしながら、団長が話を続けた。
「知っての通り、六王国で奴隷を持つことは禁止されている。
だが、実態は黙認されているようなもんだ。
騎士団が動かないなら、俺達冒険者がなんとかしなきゃならん、そうだろう?」
「団長質問です」
いても立ってもいられなくなり、アルノルドが咄嗟に手を上げて団長に尋ねた。
「僕とエルメリアは冒険者になったばかりですけど、足手まといではありませんか?
戦うことになったら、僕は役に立ちませんし、エルメリアも戦闘経験はないですよ」
話しながらちらりとエルメリアを伺う、不安そうに団長を見つめている姿が見て取れた。
アルノルド自身も不安に駆られている。剣士の稽古は積んできたが、実戦の経験は一つもない。だからこその質問であった。
冒険者になったからには、何処かの冒険団に所属するのが、立身出世の近道だと考えていたが、この冒険団に入団したのは失敗だったかもしれない。
後悔の念が一瞬頭を過ぎる。
「なるべく戦闘は避ける。避けるが、俺は議論や説得が得意な方じゃない。
先に手が出るかもしれんから、そうなったら二人はすぐに撤退してくれていい。
後のことは俺とアフォードでなんとかする。
まあ、証拠さえ掴めれば、後は騎士団に任せるのもやぶさかじゃない」
団長の隣で、アフォードが目を瞑りながら静かに頷いている。
副団長もこれでは先が思いやられる。
穏便に証拠を掴む方法を考えてくれれば良いものを、この団長はおそらく、面と向かって問いただす気に違いない。しかも、黙認されている実情を、騎士団に任せて何とかしてくれるのかも怪しい。
そんな考えが頭に浮かんだが、声には出さずにおいた。
「それで、冒険者仲間の話では、次に狙われるのはどうやらタウトラらしい。
この辺りでタウトラと言えば、南の農園になる」
なるほど、集合場所が停留所という理由がわかった。
農園まで歩いていくには、時間もかかるし目立ってしまう。馬車で移動することで相手に知られずに農園に入ることができる。
「馬車代は俺が持つ。そこは安心してくれ」
団長が誇らしげに胸を張る。
確かに馬車代がかからないのは、懐事情にとっては安心ではあったが、それ以外は何一つ安心できる要素がなかった。
穏便にことが進んでほしい。
アルノルドは淡い期待を胸にしながら、朝霧に影を落としてやってきた馬車に乗り込んだ。
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