3-37
凍えるような寒さの中、鳥馬の羽毛にうずくまるようにして暖を取る。
皆無言で、まるで眠っているかのような静けさだった。
鳥馬の鼓動が早く感じるのは、つい先刻の逃走のせいかもしれない。
この場所に着いてから、ほとんど何もせずに座ったままだ。
疲労だろうか、放心だろうか……。
火は熾したものの、誰も火の番にはついていなかった。
パチンと火が爆ぜる。
ナイザの判断は間違っていなかった。一行は高原地帯に程近い場所まで来ていた。
決して短い距離を逃げたわけでは無いはずだ。
それでも、あれが一瞬前のことのように思える。
「ナイザさん、さっきのは……」
オリーの声が夜に溶けていく。
まるで一人きりの世界にいるのかと錯覚してしまう。
しばらく返事はなかったが、また一つ鳴った火が爆ぜる音に急かされたように、ナイザが静かに答えた。
「わからん……。
わからんが……」
息が詰まるような声だった。
「砂食いに見えた」
以前、ナイザが捕り方を教えてくれた砂漠の生き物。
村の宿屋の主人が言っていた、非常食。
人の指ほどの大きさしか無いはずの生き物。
しかし、三人を追ってきたように見えたあれは、どう見繕っても人の指ほどの大きさではなかった。
人の背丈の数倍以上。巨木よりも大きな存在だった。
「あの穴は砂食いの巣ですかね?」
フレアがポツリと呟いた。
砂丘の至る所で口を開けていた摺鉢状の地形。
あれが全て砂食いの巣だったとすれば、バシュク族が砂食いの餌食になったと考えてもおかしくはない。
「あんなでかい砂食いなんて見たことも聞いたこともない……」
ナイザの言葉は、あれが砂食いであることを否定したがっているようだった。
しかし、人の気配もなく、炊煙すら上がらない砂丘は、すでにあの砂食いに襲われた後だった可能性がある。
考えたくもないが、その可能性を否定する根拠もない。
ナイザもその考えに至ったのだろう。黙ったまま、それ以上話を続けることはなかった。
捕食される側の立場が逆転することなど早々あることではないが、絶対にないとは言い切れない。
あれは、この砂漠地帯において絶対の存在だった。
──焚き火はいつの間にか灰となって消えていた。
月明かりもない闇の中で目を閉じると、まるで底無しの穴に沈み込んでいくようだった。
そしてそのまま、意識を失うように眠りに落ちた。




