3-31
──翌日
日が上に昇る前に、砂丘の裾に辿り着いた。
身を隠す場所などない、バシュクにしてみれば良い砦になるだろう。
一行は鳥馬を降り、知覚遮断魔法をかけて砂丘を進んだ。
相手によっては魔法の効果を見破られることもあり得る。
稜線の上は見晴らしが良い。最悪の事態を考慮して、這うようにして前へ進んだ。
服の隙間から入り込む砂が何とも居心地が悪いが、それに構っていられるほど余裕がある状況ではなかった。
バシュクに見付かれば、その時点でサマル救出は失敗に終わるかもしれない。
慎重に慎重を期する。
どうにか砂丘の稜線まで這い上がり、辿った道を振り返った。這いずってきた三本の線が、不自然にくっきりと残っている。
これが見付かれば、騒ぎになるのは目に見えている。
拙速に過ぎるのは愚策とわかってはいたが、それでも、逸る気持ちを抑えるのはなかなかに困難だった。
細心の注意を払い、稜線からわずかに頭を出す。
知覚遮断魔法をかけていることなど、すっかり頭から消えていた。
恐る恐る先を窺う。
砂丘列の間、砂丘の裾が広がっている。
その中央に影が見えた。
野営用の天幕が一つ、周りに人影はなく、鳥馬の姿も見えない。
天幕の中に居るのだろうかと、しばらく様子を伺ったが、誰も外に出てこないばかりか、中に居る気配もない。
──違和感を覚える。
日はとっくに頭上にあった。
食事の用意を始めてもおかしくない時間だが、炊煙の一つも上がらない。
砂丘を見渡してみても、目の間の天幕どころか、辺りに一つもそれを見付けることができなかった。
この場所がバシュクの領域どころか、人がいることすらにわかには信じ難い。
鳥馬がいないとなれば、天幕の中は空の可能性もある。
しかし、簡易とはいえ、天幕を残して移動するものだろうか……。
解せない状況ではあったが、一先ずは天幕を確認する必要があるだろう。中にサマルが居るかもしれないのだ。
一度知覚遮断魔法の効果を解いた。
少し離れて辺りを警戒していたナイザが、近付きながら「付近に人影はない」と告げた。
オリーはフレアに目配せする。
攻め入るならば、気付かれる前に動いた方が有利だ。
「行こう」
オリーの言葉にフレアが頷く。
それを確認した後で、ナイザに視線を向けた。一瞬だけ、彼の返事を待つ。
ナイザは静かに、けれど深く頷いて答えた。
天幕へ突入する。
オリーは即座に魔法を発動させた。
物理障壁魔法、魔法障壁魔法、知覚遮断魔法……。
「それから、フロート!」
稜線を越え、三人はできるだけ砂を崩さないように砂丘を降りはじめた。




