5話「貧乏の女神編④」
村に入ると、村長たちは俺に気付いた。
先ほどまで緊迫していた空気をなんとか取り戻し、おお今日はありがたいことをしてくれたと言って俺を温かく迎え入れてくれた。
「ほんに、感謝するのじゃ」
「……いえ、今日は肉祭りですよ! 楽しみましょう!」
あえて俺も気づかないふりをして、楽しそうに振舞った。
「……」
「パーフリィ?」
「……あ、はい」
そこにはどこか遠くを見つめているパーフリィの姿があったが、呼びかけてみんなを手伝おうと言って声をかけた。
だが――
「……」
あれほどまで、生き生きと台車作りを手伝っていたパーフリィは今や暗い空気に包まれて気になっていたが、準備のために呼ばれて放置してそのまま村人の下へ俺は向かった。
「……ごめん……なさい」
やがて、村を挙げての祭りが始まった。
狩猟という行為が出来る人自体が少なく、みんながみんな農民ということで彼らにとっては御馳走で特に子供たちには人気を博し、俺も取り囲まれては抱き着かれたりと色々わちゃわちゃされながら楽しい空気を思いっきり感じていた。
その時だった。
パーフリィの姿が見えないことにようやく気づき、俺は周囲に謝った上で探し回った。村人にも聞いたがその行方は知れず……まさかと思い、俺は誰も見てないのを確認して祈る。
「どうしました、私を呼び出して」
そこにいつの間にか立っていたのは、転移の女神・スファ様だった。
「あのつかぬことをお聞きしたいのですが、パーフリィは――」
その言葉の反応によって、答えは出たようだ。
「……」
「……やっぱり、園に帰ったんですね」
「ええ、ひどく落ち込み私のせいでと……」
その言葉に俺は、自分自身が許せなかった。
いくらでも気遣えただろうに村人のほうを優先してしまったがためにと。
「リョウタロウ」
「……はい」
「自分を責めることはありませんよ」
「ですが――」
その後の言葉を言おうとする俺の口に自らの指を押し当てて口を封じてきたスファ様。
「彼女は、あの通りとてもネガティブな女神です。それは本人が体験してきた結果であり、また元々の性質ですので、あなたはこのことについて全く悪く思うことはありません」
「……」
でも、と思うと同時に俺はあることを決断した。
「じゃあ、伝言お願いします」
「ええ、いいでしょう」
「貧乏を舐めるな、と」
「? そのようなことを?」
「はい。なんか逆に腹が立ったっていうか……あなたのせいじゃないってのを証明してやろうって、やる気になってきました」
「ふふふ」
俺の言葉の何が面白かったのか、口に上品に手を当ててスファ様は笑った。
「ええ、きちんとその言葉お伝えしましょう」
そう言って消えると俺は、早速動くためにまずは村人たちの祭りに参加して普段通りに接することにした。
その祭りが一通り終わり、今日も泊まるという旨を伝えて牛小屋に引っ込もうとする俺は手加減を解除することにした。
「まずは――」
そもそもの原因であるあの徴税官の匂いを辿ることにした。
実は何か嫌がらせでもと思っていたので、こんなこともあるだろうと匂いを覚えておいたのだ。全力の今の俺であれば、その匂いを追える。
移動が速すぎて、逆にゆっくり流れる景色を見ながらもあの男の匂いを辿って後を追うとそう時間もかからずに彼が発する匂いの下に辿り着いた。
気配の一切を消し、そして忍び込む。
屋根裏から徴税官とその上司たる領主の会話を盗み聞きすることにした。
「そうか……ふん、下民というのはこれだからな」
「ですが、しっかり言い聞かせておきましたので……あのそれで――」
「わかっておる。貴様を中央のそれなりの役職につける約束はもちろん守ろうではないか。貴様の親に感謝するのだな」
「ありがたき幸せに存じます……それにしても――」
「ふっふっふ、わしの寄り親となるボージャク伯爵様様だな。全く持って我らに都合のよい金を得られそうだ」
「下劣な奴らは、我ら高貴なる者のいうことを聞くしかないですからな」
「まぁ奴らは税を納めることはできまい。その時は――」
「粒ぞろいがざっと数人は……」
「そうかそうか……くっくっく」
聞いててこれほどムカつかせるのが天才な奴らもそうそうないなと思いながらも俺は一部始終を聞いた上で、やつらのやり取りを全部聞いた。
その上でどうするかを考える。
こいつらを懲らしめるためには……と。
ボージャク伯爵……。
寄り親ってあれだよな、貴族内での親子関係みたいなやつだったはず。
であるならばと俺は、そのまま奴らが自らの寝室へと向かうまでの間計画を考えることにした。
ようやく奴らが部屋を出たことを確認した俺は、早速大元の元へと向かうために
外に出て早速走り回ることにした。
全ては、あのよくしてもらった村と分からず屋のパーフリィのために。




