2話「懲罰の女神編③」
だいたい一ヶ月が過ぎたのだと思う。
全部俺の時間間隔で、だが。
その間も、美人の奴隷さんに食事にシモに色々世話になったり、懲罰の女神様とちょろっと話したりと普通の人ならば絶対に耐えられそうもない環境の中、囚人生活をおくっていた。
美人の奴隷さんとはあれ以来話すことはなく、それぞれがそれぞれの役割を果たすかのように淡々としていた。
まぁ俺はあえて目を閉じて、口を開いたりシモのお世話も膨れ上がった欲望のおかげで迷惑をかけたりしているが……。
そして俺は新たにやっていることがある。
疑問に思ったのか、懲罰の女神様が聞いてきた。
「リョウタロウ、何をしているのですか?」
「ふんっ!……見て分からないですか、鍛えてるんですよっ!」
今ある重りである鎖を使って、運動不足を解消しようと足を曲げて戻してを繰り返していた。
「それに、こっちのほうが、罰になったり、しま、せんかっ!」
「……」
その問いになぜかその瞳は揺れていて、何も答えずにまた俺を見つめていた。
肯定と受け取って俺はさらに下半身を鍛えるために鎖を使って運動を続ける。
やがて、食事の時間になったのだろうあの美人の奴隷がやってきた。
檻を開ける前に俺の行動が不思議に思ったのだろうが、構わず中に入ってきた。
俺は、自分でもだいぶ匂っていることに気づいているのだがもうそんなことはどうでもよいほどに彼女にはお世話になっているので、申し訳なく思いながらも食事をしようと目をつぶり、口を開けようとしたのだが――
「何をしていたのですか?」
およそ一ヶ月ぶりにその綺麗な口から、美しい言葉が聞こえた。
「運動不足になるかなって思って、体を鍛えてたんだ」
「……?」
この人は何を言っているんだとでも言うような言い方で首を傾ける仕草も、なんというかヤバい。
「き、気にしないでくれるとありがたい。あと、食事を――」
「そうね」
そう言って俺にいつものように食事を口に運んでくれだした。
そして、シモのお世話もお願いしてさあそろそろというところで何やら騒ぎが聞こえてきた。
いつもとは違う、空気の流れに乗ってくるのは――血の匂い!
――ドタドタ!
何かがこちらに来たのが分かったので、俺は美人の奴隷さんに声をかける。
「懲罰の女神様、あとあんた! 俺の後ろ側に!」
名前を知らなかったので、あんた呼ばわりをしてしまったが急いで俺の後方に移ってもらう。すると、女神様のほうは唐突に姿を消した。
「ああ、そうか」
園へと帰ったんだなと俺は理解して、何かが来るのを待つことにした。
やがて汚らしい恰好の囚人たちは俺たちを見つけ、そして俺の後ろに隠れる美人の奴隷も見つけて嫌らしい笑みを浮かべて言い放った。
「おい! そんな奴の後ろに隠れてねぇでこっちにこい! いい思いさせてやるからよ!」
「げへへへへ」
これはもうなんというか、男の欲望駄々洩れと言ってもいい感じの囚人たちの様子にさすがの俺も萎えまくりだった。
「……はぁ~」
ため息を分かりやすいくらい吐くと、囚人たちはイラだったのかガヤガヤと何か言ってきていたが俺としては別にどうでもいいことだった。
やがて静かになり、俺の房に踏み出してきそうになったので俺は伝える。
「俺の房に入った瞬間、死ぬから注意しろよ」
その言葉にゲラゲラ笑いながら入ろうとした先頭の男に向かって、俺はぐるぐる巻きの鎖の状態のままで足を使って飛び出した。
生々しい音とともに、1人目が潰れると勢いのままに2人目も潰した。
「な、なんで――」
そのまま何人も巻き込んで俺は足を使い、まるで砲弾のように体で奴らを潰していく。
「なんでこの恰好で動けるか? もしかしたらと思って鍛えたからだよ」
誰もいなくなった場所に向けてそう言い放ち、やがて美人の奴隷のところへと歩いて戻る。
「……」
彼女は強かった。
割と、自分としても残酷な描写を生み出した原因として彼女にも悪いことをしたと思ってるのだが、そんな光景を見ても何も感じないかのように立ち尽くしていた。
「えっと、申し訳ない」
「なぜ謝るの?」
「いや、ちょっとこれはさすがにやりすぎたかなって……」
俺の言葉の何がおかしかったのか、手を添えて笑い出した。
いや、笑える光景かよ。
「……私を助けてくれたのでしょ? なのに、あなたを恐れるだなんて……」
そう言いながら俺に付いたらしき血などを自分の服を千切って、拭いていってくれた。
ヤバい。
萎えたそれがまた再び、猛々しくそそり立つ。
「クスっ」
そんな俺を気にせずに、また俺を綺麗にしていった。
そんなところへ――
「脱獄……しないのですか?」
「おかえりなさい、女神様。しませんよ? 脱獄なんて」
俺の答えにそうですかと言ってまた再び俺を見つめ始める懲罰の女神様。
目をつぶり、気配を感じるとどうやら奴らはこの島から逃げるために俺のところ以外の牢を開け放っていき続々と脱獄をしていっているのが感じ取れた。
「いいんですか? あの連中に懲罰を与えなくて」
「私たちはあなたを見守り、共愛に則した行動のみ。他には興味がありません」
いや、それでいいのかと思ってしまう俺だった。




