表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
16/24

第15話:プロ契約へのラストチャンス

今日3話目

ミニゲームで見せた、あの瞬時の判断とダイレクトパス。

元ドイツ代表CBシュミットの懐へと潜り込み、股抜きパスでチャンスを演出したさかき じんのプレーは、トップチームの首脳陣に鮮烈な印象を残していた。

「面白いじゃないか、あのガキ」

マルクス監督は腕を組み、顎を触りながらサイドラインでニヤリと笑った。

「足が速いだけのアジア人はいくらでもいる。だが、シュミットのコンタクトを一度喰らった直後に、身体を触らせないポジション取りへ即座にアジャストしてみせた。あの修正能力とサッカーIQは本物だ」

練習の最後に行われた11対11のフルコートゲーム。

迅は再びトップチームの組に入り、今度は右ウイングの位置に配球された。CFの位置には、数年前に数億円の移籍金で獲得された現役ドイツ代表候補のストライカーが鎮座している。

(ウイングか……。スペースはCFの時より広い。だけど、縦への突破だけじゃ、相手のSBに読まれる)

対峙する相手の左サイドバックは、ブラジル出身の快速DFだ。迅と同等以上のスピードを持ち、一歩でも後手を踏めば圧倒的なフィジカルで潰しにくる。

ピッ、とホイッスルが鳴る。

中盤から迅のいる右サイドへ、展開のロングボールが飛んできた。

迅はボールが空中に居る間に、相手SBの立ち位置と体の向きを観察する。相手は迅の「俊足」を警戒し、縦への突破を消すように斜め前に体重をかけていた。

(縦を消して、内側へ誘導している。……なら、その狙い通りに入ってやる)

迅は右足のトラップでボールを内側へと持ち出した。相手SBが待ってましたと言わんばかりに間合いを詰めてくる。強烈なボディコンタクトで迅を押し潰そうとするその瞬間――

迅は右足の裏でボールをキュッと手前に引き、そのまま軸足の後ろを通す「ラボーナ・フェイント」で逆方向、つまり縦のスペースへとボールを叩き出した。

「なっ、なんだと!?」

縦を警戒していたはずの相手SBは、一度内側へ誘い込まれたことで完全に重心を逆へ持っていかれていた。急激な切り返しに対応できず、足がもつれて芝生に倒れ込む。

一瞬でフリーになった迅は、トップギアの加速で右サイドを爆走した。

(中は……現役代表のFWがニアに飛び込んでいる。だけど、相手のCBもそこへ集中している。フリーなのは――)

ペナルティエリア手前、いわゆる「バイタルエリア」にぽっかりと空いた空間。

迅は速いクロスを上げるフェイントを入れ、相手キーパーとDFラインを自陣ゴール方向へ下げさせると、右足のアウトサイドでマイナス方向へ低く鋭いパス(グラウンダーのマイナスクロス)を供給した。

そこへ駆け込んできたのは、遅れて上がってきたトップチームのボランチだった。

ドカンッ!

フリーで放たれた豪快なミドルシュートが、ゴール左隅のネットを揺らした。

「ナイスボール、ガキ!」

パスを受け取ったボランチが、笑顔で迅の元へ走り寄ってきてハイタッチを交わす。

練習終了後。汗を流した迅は、マルクス監督にクラブハウスのオフィスへ呼び出された。

「ジン。1週間の練習参加の予定だったが、明日からの練習にも来てもらう」

マルクス監督はペンを置き、迅の目をまっすぐに見つめた。

「次の週末のブンデスリーガ公式戦……ベンチ枠にひとつの空きがある。お前のこれからのアピール次第では、そこに『プロ選手』として名前を載せるつもりだ」

プロ契約へのラストチャンス。

17歳の榊 迅の物語は、ついに最高峰のステージへと手を伸ばし始めていた。

ブクマよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ