側室の王子と正室の王女
エミールの浮かない表情を心配しながらも、魔法陣でネプチューナ音楽祭の会場に到着した。
水上に巨大な会場が浮かんでいて、一部分だけ半円状になっており、中央にステージがある。
海が見えるように開かれていて、広大な海に向かってステージ上で歌うのだろう。
スタッフらしき人魚たちが音楽祭のためのお酒を用意したりマイクなどに問題ないかをチェックしている。
会場以外は、見渡す限り海が広がり、他に足場が無い。
船でやってくる観客もいれば、泳いでやってくる人魚たちもいて、客層は様々だ。
会場を眺めていると、人魚の集団が近づいてきた。
その中でも先頭に立つ人魚が、鋭い目つきでエミールをにらみながら話しかけてきた。
「あらやだ。由緒正しい音楽祭に遠足気分で来たのかしら?」
真珠などの宝飾品をふんだんにあしらわれたドレスを着ていて、身分が高そうだ。
一瞬表情を曇らせたが、エミールは笑顔で応じた。
「ミラベル義姉上。わざわざ出迎えてくださっなのですね」
「歌も歌えないのに出場しても仕方ないと伝えにきただけよ。王家の恥さらしになるわ」
「楽器での演奏でも良いと言われたので。今回の音楽祭は美声が優勝の第一条件。正室の正統な血筋の義姉上が勝つことは必然です。私は前座を温めるだけです」
エミールは生徒の中でも穏やかな方だ。
それが、こんなにも息が詰まるような空気になるなんて。
私が何とかこの場を切り抜けられないか必死に考えていたところ、黒い燕尾服を着た執事のようなマーマンがエミールのことを探して走り回っていることに気がついた。
「エミール様どこですかー!?返事してください!!」
「あっ、ここです!!ここにいます」
私が大きく手を振ると、執事は息を切らしながら会いに来た。
ミラベル王女はフンと鼻を鳴らし、立ち去っていった。
「魔法陣の位置が直前で変更されていて……エミール様をお出迎えすることができず、申し訳ありません」
「いい、ウォルター。ミラベル義姉上のせいだろう」
執事のウォルターをねぎらいながら、エミールはため息をついた。
王家の血縁によるごたごたは、異世界でも変わらないようだ。
一連の様子を見ていたルイは眉をひそめた。
「エミールは歌えずとも、どの楽器も見事に演奏する。優勝しないように釘を差しておいたんだろう」
思わず私はルイに尋ねた。
「でも、強制的にミラベル王女が勝つような結果にさせられることもあるってこと?」
「かもしれないな。それが良い美酒になるかはわからないが」
曲がったことが嫌いなバルトは「いけ好かねぇな」と言って嫌な顔をした。
豪華な音楽祭も、雲行きが怪しくなってきた気がする。
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