初めての遠足が音楽祭ですか?
ロミオとジュリエットの話を題材にした授業を行ったからか、結末が気になった生徒三人は珍しく集中して聞いている。
ジュリエットが薬を飲んで仮死状態になったあたりから、そわそわして続きを知りたがる様子は人間の生徒と変わらなくて微笑ましかった。
今日の授業ははかどるなと思っていた矢先、学園長のユタが授業中にも関わらず乱入してきた。
「ちょっとエミール君!?あなた、明後日開催されるネプチューナ音楽祭に招待されてるじゃありませんか!なぜ黙っていたんです!?」
「ユタ先生、授業中なんですが…」
「一花先生、それどころじゃないんですよ!王族の行事なんですから、欠席は許されないんです。もうすぐにでも出かける準備をしなくては…」
王族という言葉が聞こえた気がするけど、気のせいだろうか?
どうやら私だけではなく、クラスメイトのルイやバルトも初耳だったらしく、バルトにいたっては「知らなかったぜ…失礼なことばっか言ってた気がする」と反省しており、頭の犬耳はしょぼくれている。
バルトは上下関係に厳しいようだ。
しかし、エミールは自分には関係ないといった態度で、席から離れようともしていない。
「ネプチューナ音楽祭は海の神を祀る、人魚の王族の行事だ。側室の子の俺には関係ない」
「それでもオンディーヌ王族の血筋なのは変わりないでしょう。あなたが無視するから、学園長である私や担任の一花先生、クラスメイトのルイ君やバルト君まで招待されているのですよ。学業が忙しいなら、クラスごと招待して授業を休ませようとしています。是が非でも参加させたいようです」
「学校まで巻き込むなんて…姉上がいれば充分だろうに…」
エミールは終始納得がいかない様子であり、普段穏やかなだけに私も心配になってしまった。
国をあげて招待されているだけあって、魔法陣が用意されてあり、魔法陣の上に立つだけで目的地に移動できるようだ。
私は魔法が使えないため、付き添いは学園長のユタも同行し、クラスメイトのルイとバルトも参加することになった。
出かける前にユタから音楽祭の説明があった。
音楽祭の由来は、毎年海の神様に生贄を捧げていたことから始まる。
最も海が満ちる日に渦潮が現れ、海の神が指定した生贄を捧げなくてはならない。
生贄の対象となったマーマンに恋をしていたマーメイドが、涙ながらに助命嘆願した。
助けてもらう代わりに美しい歌を捧げ、美声の歌により、七色の美しい色に変化した美酒を捧げた。
海の神がその美酒を飲むと、この世の酒では味わえない美味しさだったという。
感服した海の神はそれ以来、生贄ではなく、音楽祭と、音楽祭の優勝者の美声により美味しくなる美酒を求めるようになったらしい。
以上がユタからの説明だったけど、海の神の伝承が本当の話なのかは定かではないらしい。
歌を歌わないとならないということは、人前で歌えないエミールには難しいのではないか。
いつもは真面目に授業を聞くエミールだけど、ユタの説明の時はずっと下を向いていた。
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