恋愛指南特化の教師だなんて聞いてない
拉致さながらで連れてこられた魔界は、ヨーロッパのような街並みで、奥に広大なお城も見えた。
逃げ出さないようにご丁寧に手錠までかけられた私は、浮遊する馬車に乗りながら、悪魔のユタの説明を大人しく聞いていた。
「あれが魔王城で、その下に大きな建物があるでしょう?その建物が学校です。あなたには三人の魔族の恋愛指南役になっていただきます」
「あのー、恋愛指南役って一体何を教えればいいんですか?」
「人間界ではどんな人物が好まれるのか、恋愛文学などから読み解いたり、レクチャーしてほしいのです」
素人で思い浮かぶ文学なんて、たかが知れている。
有名どころでいえばロミオとジュリエットか、日本文学専攻であることを生かすなら伊勢物語とかもいいかも…と思いながら、ふとあることに気づく。
「私のような素人より、婚活アドバイザーの方を採用した方が良かったのでは?」
「そのような職種の方もいることは存じていましたが、多少霊感がある方でないとあの部屋に引き込むことはできなかったので」
なんと、あの個室ブースは魔界と繫がる部屋で罠だったのだ。
運悪くひっかかってしまった自分に嫌悪していると、そんなことを全く気にしない様子でユタは話を続けた。
「他の魔族も教師になって生徒を指導したのですが、聞く耳を持たないのです。いっそ人間から教わった方が、彼らも真実味があって話を聞くのではないかと」
「ちなみに魔族の生徒ってどんな魔族ですか?」
「名家の吸血鬼と、狼にしか変身できない狼男と、歌えないマーマンです」
「それって私の身の危険はありませんか!?」
「あなたはこの世界に来た際に、魔族から命の危険にはさらされないという契約を結んでいるので、ちょっとやそっとじゃ大丈夫ですよ」
命の危険はなくてもちょっとの危険はあるかもしれないことを察し、私は身震いした。
吸血鬼なんて血を吸われてしまうかもしれないじゃないか。
真っ青な私を見て、さすがにユタも可哀想に思ったようだ。
「大丈夫ですよ、いざとなったら蘇生しますから」
「いやいや怖すぎるって!」
ユタにあれこれ文句を言っているうちに学園に着いた。
魔族の生徒は話に聞いていた魔族だけでなく、ミイラ男のような魔族や、魔女のような魔族など他の種族もたくさん来ていた。
つまり恋愛を教えるのは三人だけで良いということなので、まだ不幸中の幸いというべきか。
教室に入った時には、その考えすらも甘かったと思い知る。
「バルト、貴様…!カーテンを全開にするのはやめろといつも言っているだろうが!」
「てめぇが犬呼ばわりするから悪いんだろうが!」
大喧嘩する二人、日常茶飯時なのか気にせずハープを演奏しているマーマン。
すでに学級崩壊気味のクラスを持ち、私は不安でいっぱいだった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。もしよろしければ、励みになりますので感想やブックマークをお願いします。




