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第8話『始まりは皆同じ』

ルアナ王女殿下がケイスの手をゆっくりと離し、さりげなく俺の隣に戻る。


「ほ、本当かーーッ!」


ケイスは相変わらず嬉しそうに飛び跳ねている。


その横で、フローシアは口を開きながら固まっている。


「ちょ、ちょっと……なんでアンタがルアナ様と!?」


フローシアの声に、静まり返ったアフィネスに喧騒が戻ってくる。


「……知らん。コイツが勝手についてきただけだ」俺は何も知らないフリをして、ルアナ王女殿下から距離を取る。


ルアナはフローシアを見るや否や、優しい笑みを浮かべながら、フローシアに近づく。


「お久しぶりです、フローシアさん」


フローシアは固まりながらも、一応『貴族令嬢』らしく姿勢を正している。


「あっ……お父様がお世話になっておりますッ」


そんな会話をしている横で、ケイスはまだ飛び跳ねていた。


「ケイス。ルアナ王女殿下をパーティに入れるのは良くない」そう言って、騒いでいるケイスの頭にチョップを入れて落ち着かせる。


しかし、ケイスは表情を一切変えずに再び飛び跳ねる。


「王女とか知らんけど、別にいいでしょーー」


思わずため息が溢れる。


「彼女の身に何かあったらどうする。その時はク……王に首を落とされるぞ」ケイスの首襟を掴みながら、ルアナ王女殿下を見つめる。


フローシアは今にもケイスを殴りたがっているが、ルアナ王女殿下の前だからか必死に堪えているように見えた。


「ルトゥさん?」


ルアナ王女殿下の口から俺の名前が出る。


「なんだ。ちなみに俺は平穏に暮らしたいから反対だ」しかし、ルアナは俺の言葉を遮る。


「秘密、バラされたくないなら。ね?」


思わず拳を握ってしまう。「この俺を脅すとは」と言いたいのを堪えて、静かに口を開く。


「それでも王女か」と率直なことを言う。


ルアナ王女殿下は微笑むと、ゆっくりと俺に手を向ける。


「それでは、これからよろしくお願いします」


俺はルアナ王女殿下の手を見つめ、無視してケイスに寄る。


「さっさとギルドにパーティ申請してこい」そう言ってケイスを交わしてギルドに向かう。


背後からはルアナ王女殿下に必死に謝るフローシアの声が聞こえた。




◇◇◇




「はい。承りました!」


ギルドの受付の声が街中の喧騒の中でもハッキリと聞き取れた。


受付の女性は一枚の紙と、4枚のカードをケイスに渡す。


「おっ!いい出来だなーーッ」


ケイスは全員にカードを配る。

俺の手にもカードが渡り、それを見る。


そこには俺の顔写真と、名前等の個人情報。

そしてパーティ情報、『ランクE』という文字。


「よし!それじゃあ早速依頼を受けますかーーッ」と集中力を切らす声が耳に入る。


ケイスはぴょんぴょんと飛び跳ねながら、受付の隣の依頼ボードを見つめている。


少し経つと「お!これとかいいじゃん」と言って一枚の紙を手に取る。


ケイスはその紙を持ってきて、俺たちに見せる。


「近隣村の近くにいる魔物の討伐だってよ!」ケイスは子供のように瞳を輝かせている。


だが、ケイスは周りが見えていない。

俺がそれを指摘しようとしたが、フローシアが割って指摘する。


「何言ってるのよ。その依頼はDランクからよ」


フローシアの言葉を聞いたケイスは、再び依頼の紙を見つめる。


その一瞬だけ風の音が鮮明に聞こえた。


次にケイスが「へ?」と間抜けな声を出すまでにそう時間はかからなかった。


「ちゃんと授業を受けないからそうなるのよ!?」


フローシアがケイスに説教しているが、ケイスは口を開かない。


遠目から見てもわかるほどに、ケイスのテンションは下がっている。


「ふふふ、可愛らしいですね」


さりげなく俺の隣で傍観していたルアナ王女殿下が口を開く。


フローシアは呆れて立ち上がると、今度は俺と目が合う。


「ところで、ルトゥって……」


「ルアナ様の結婚相手だったりする?」その言葉に口が開く。


「何言ってんだ」と言いたくなったが、言う隙を与えまいとルアナ王女殿下が割って話す。


「フローシアさんもそういうお年頃になったんですね」


相変わらずルアナ王女殿下は笑顔を浮かべているが、その表情にはただの”無邪気な少女”感があった。


フローシアは少しだけ頬を染める。


「わ、私だってもう18なんですよ!それくらい……」


フローシアは強気でルアナ王女殿下に反論していたが、次第に羞恥と自分の立場を思い出したのか、声が小さくなる。


ルアナ王女殿下は笑みを浮かべながら、フローシアに近づく。


「もしかして、ルトゥさんのことが気になっているのかしら?」


フローシアは「そんなわけない」と反論しようとしていたが、俺も思わず口を開いてしまう。


「フローシアにはケイスがいるんだからそれはないな」その言葉を聞いたフローシアは、急激に頬を赤らめる。


「い、いや!そんなわけない……!私がケイスのことを好きなわけ……

!」


その言葉は早口で聞き取れなかったが、ルアナ王女殿下は聞き取れたのか子供をあやすようお母さんのようにフローシアを見つめていた。


ケイスは未だにショックを受けたまま、しばらく回復しそうになかった。




◇◇◇




※通信がつながる


「緊急だ。全ギルドに告ぐ」


「アフィネス王国付近でAランクの魔物『ダークウルフ』の群れを確認。今すぐに近隣の村の避難、及び群れの討伐を命ずる」


※通信が乱れる


「なに?すでにEランクパーティが近隣村の依頼を受けてしまっているだと!?」

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