第24話『暗躍、強制進行』
初めての試みに若干の不安を抱えたが、無事にリアナは気を失い、私の心の霧も晴れた。
魔力で強化した扉の魔力を弱めると、その瞬間に兵士たちが勢いよく流れ込んでくる。
兵士は倒れているリアナを見るや否や、私に一切目を向けずにリアナに向かって駆けていった。
その兵士を横目に扉を出ようとしたところで、一人の声に止められる。
「待ちなさい」
声の方に目を向けると、暗い廊下から赤い瞳が光、次にピンク混じりの金髪を認識した。
第二王女のキアナ。私にとっては一番興味のない女だ。
「ルアナを誘拐して、お姉様に手を出して……どう言うつもりよ」
猫のような睨み目、けれど彼女の腕が微かに震えていることが私にはわかった。
「どういう……?ああ、そういうことか」暗い廊下をゆっくりと進みながら、静かに口を開く。
「特別に教えてやろう」キアナの赤い瞳を見つめながら、彼女にゆっくりと近づく。
キアナは肩をすくめながら、表情を歪ませて、その足を後ろに下げた。
「王を、ケリオスを殺す」私の言葉に、キアナの心の中にある恐怖心は最大限に達したのか、目尻に雫を浮かべて、頭を押さえてその場に屈み込んでしまった。
「もう……やめて」そうだ。キアナは子供だ。常に一番年上かのように余裕を見せているが、彼女は一番怖がりで、一番寂しがり屋だ。
そんなことも、私は知っている。
そんな優越感に浸りながら、ゆっくりと口を開く。
「一つだけ、いいことを教えてやろう」腰を下げて、顔を埋めているリアナの頭を見つめる。
「『愛』と言うのは、とても強い感情で……最強の呪い……っと私は思う」そのことだけを言い放ち、腰を上げて電気のついていない廊下を歩む。
◇◇◇
月明かりが照らす王国を階段の上から見下ろす。
人気は少ないが、所々男女の談笑が聞こえたりもした。
「……そろそろ、プロットも終盤に差し掛かってきた」月を見上げながら、両手を広げて月を抱きしめようとするが、その手は全くもって届かない。
「コツッ」岩畳を静かに歩く音が私の耳に強く残り、その方向に向かって足を進める。
視線の先には、赤と青の二色が交差している長い髪を揺らしている少女。
フローシアの姿が見えた。
フローシアは兵士にバレないように、足音を立てずに移動している様子だ。
「お久しぶりですね。フローシア殿」フローシアの背後から彼女の名を呼ぶと、肩を跳ねさせながら勢いよく私を見た。
「だ、誰ッ……!?」
フローシアはそう言ったが、一息置いて「Rebel……?」と私の存在を確認するように呟いた。
フローシアの姿は先ほどまでのキアナとは打って変わって、私に対する興味を感じる。
「君は"ダーク・リヴァー"を覚えているか」私の問いに、フローシアは考える素振りをするが、すぐに「わからないわ。なによそれ……」と言い放った。
私は彼女の腕を力強く掴む。
「来い。次の章に進むために」彼女は咄嗟に私の腕を引き剥がそうとしているが、気にせずに彼女を引きずって王城の裏に向かう。
◇◇◇
彼女を岩道に投げ捨てて、彼女の襟首を掴み、前を向かせる。
その時点で、彼女の体は震えていた。
「な、なんで……貴方、なんでッ……!?」
彼女は声を震わせる。
それもそのはず、ここは彼女にとっての『地獄』だったから。
「いや……いやッ……」
彼女は唸るようにそう言い続け、頭を抑える。
「強い呪いは、解放される時に多くのものを失う」静かに彼女の首裾から手を離し、人のいない洞窟を見渡す。
「フローシア殿も、きっと失ってしまうのだろうな」心の中で思い浮かべた人像に、そう問いかける。
その場で膝をついているフローシアを横目に、静かに口を開く。
「私は悪役だ。主人公は……きっと君だろう」フローシアの背中に吐き捨てる。
そして、足音を立てずに、ダーク・リヴァーを後にする。
王城の裏にある階段を登り、月明かりに照らされながら、静かに、あの場にいるフローシアを思いながら
「私は君の過去を知っているからこそ、また彼女から奪ってしまう」
冷たい風が、仮面を貫通して肌を刺激した。




