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第13話『王族』

霞む視界、微かに見えるのは大理石の天井と、部屋を照らすシャンデリア。


「ん。起きたのか」


聞き覚えのない男の低い声が耳に入る。


ゆっくりと体を起こす。

声の元へ視線を向けると、そこには短い黒髪の男が椅子に座り、本を開いたまま俺を見つめていた。


「ああ。くだらん術にかかった」そう言って、体を伸ばす。


男は鼻で笑うと、本を閉じてゆっくりと椅子から腰を上げる。


「それは大変だったな」


男はベッドの横まで来ると、胸ポケットから一枚の紙を取り出し、俺の手元に置く。


「初めまして。アフィネス王国の第一王子、メディエット・フィナ・アフィネスと申します」


メディエットと名乗る男は、その場で膝をつき、ベッドの上の俺を見上げる。


正直、アフィネスの血が通っている時点で信用する気はない。

だが、この男には信用できると本能が言う。


「塵の血が通っているくせに、まともなんだな。ルアナと一緒で」そう吐き捨て、ゆっくりとベッドから足を下ろす。


俺の侮辱発言を聞いても、メディエットは特に気にせずに、目を見つめた。


「その発言、お父様に言ったら即処刑ですよ」


と、メディエットは笑って見過ごした。


この男の反応に、少し違和感を感じるが、それ以上にこの男に通う『血』が気になった。


「お前、混血だろう」無意識にその言葉を口にしていた。


メディエットは突然の質問に少し固まりながらも、ゆっくりと口を開く。


「よく分かりましたね。その通り、私は混血です」


男はゆっくり立ち上がると、近くの机に置いてあった紙を見つめる。


「亡きお母様の血が70%くらいですかね」


その言葉を聞き、頭痛を感じながらも、男の元へ足を運ぶ。


「自己分析が上手いんだな」そう言うと、メディエットは口を軽く抑えて、笑みを零した。


「なんだか、亡き弟に似てます」


その言葉に、さらに頭痛が激化する。


狼の群れを押さえつけていた木壁が、軋み始める。

脳の奥底に押さえつけていた『記憶』が顔を出そうとしている。


メディエットは俺の肩に手を添え、背中をさする。


「大丈夫ですか。まだ、キアナの術が解けていないんじゃないか」


メディエットは俺の体をゆっくりとベッドの上に戻す。


「大丈夫だ。少し思い出したくないものを思い出しかけた」頭を抑えながら、再び立ち上がる。


「これだから過去話は嫌いなんだ」そう吐き捨て、メディエットを見つめる。


「お前らは、どうしてそこまで俺を追う」その言葉に、メディエットは表情を変えずに口を開く。


「お父様の命令だからじゃないでしょうか」その言葉は確信ではなく、予測。


その違和感と頭痛の正体が重なっていると、心の奥底で感じた。


「くだらんな。少しでも塵血が混ざっていると、くだらん解答をする」冷たく、メディエットに向かって言う。


それでもメディエットは笑っているのに、不快感を覚える。


「お前は王族なんだから、王族らしく屑であれ」そう言って、メディエットを睨みつける。


しかし、メディエットは笑顔のまま、近づく。


「私は、お父様の命令を受けている以上屑ですよ」


その言葉とは裏腹の表情に、思わず胸が締め付けられた気がした。


「そうか。やはりくだらんな」

メディエットを横目に、部屋の扉に手をかける。


「俺は帰る。友人――いや、財布どもが待ってるからな」一度言い直し、扉の取っ手を下したその時


押してもいないのに扉が開く。


「あら、もう起きてたの。起きたのなら教えて欲しかったのに」目の前に昨日の女が立っていた。


「見張ってろと言ったのはキアナでしょう。私はただ見張っていただけです」メディエットは優しく第二王女のキアナに言い放った。


キアナは不服そうな表情を浮かべる。


キアナは俺の腕を力強く掴むと、無理矢理ベッドへ投げ倒される。


「お兄様は出ていってもらうわ。これからは私のお楽しみだもの」


キアナは舌で唇を舐めながら、俺を見下す。


「……質問だが、お前らは俺のことをどれだけ知っている」静かに呟く。


キアナは一瞬黙り、自分の指を唇に当てて考える仕草を取ると、ゆっくり口を開く。


「お父様が危険視するほどのお方、かしら」


その回答に、思わず笑みが零れる。


呆れの――


「そうか。なら話が早い」手をキアナの顔の前に向けると、勢いよく魔力が手のひらに集まる。


桃色の魔力は一瞬で深い色へ変わり、近くの机や椅子が倒れ、その衝撃に、キアナの体がベッドから放り出される。


超越する魔法(エクセインド)――」


手のひらに異常なまでの魔力が溜まる。


この光景を、キアナはただ見つめているだけだった。


「ドガァァァァン」と爆発音が響き、寝室の壁が崩れ、太陽光が差し込む。


「俺は人を殺すほどには落ちぶれてない」そう言い放ち、崩れた壁からそのまま外へ飛び出した。




◇◇◇




「あら、逃げられちゃった」


キアナは首を傾げて、崩れた壁を見つめる。


「キアナは少々驚かせすぎたんじゃないかな」


キアナは不思議そうに私の顔を見つめる。


「お兄様はお父様の命令をこなさないのね」


その言葉に、思わず鼻で笑ってしまう。


「お父様の命令はルトゥさんを捕まえて、お父様の元へ持ってくる。でしょう」


私の言葉に、キアナは眉をひそめる。


「個人的に捕まえたかったの。悪いかしら」


開き直ってキアナに


「うるさいリアナが嫌いなんだろう」


キアナは元気なさげに笑うと


「ルアナに関しては、お姉様がうるさくなるものね」

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