第11話『アフィネス』
空には無数の星が浮かんでおり、その上には大きな月が浮かんでいる。
月光はアフィネスの城門を照らし、城下町の静けさを強調していた。
「くぅーーッ!今日は楽しかったなーーッ」そんなケイスの声が静寂を打ち破る。
同時に「パシーーンッ!」という甲高い音が響き、直後にケイスの悲鳴が響いた。
「うるっさいわね!今何時だと思ってるのよ」フローシアはケイスの胸ぐらを掴みながら、ケイスのことを揺する。
ケイスは両手を上げて降参しているが、フローシアは構わずに揺すり続けている。
「相変わらず賑やかですね」と柔らかな声が隣から聞こえる。
ルアナはケイスたちを見て、穏やかな笑みを浮かべ、次第に視線は俺の方に向く。
「ルトゥさんは、この状況が楽しいと思いますか?」静かにルアナの声が響いた。
その質問に「くだらない」と思いつつも、静かに口を開く。
「くだらない。俺の平穏を邪魔してきたヤツだ」そう吐き捨てるように言った。
けれど、ルアナは小さく笑いながら、俺に満面の笑みを見せる。
「その顔をして言うんですか?」
俺にはその言葉の意味がわからなかったが、少し苛立ったのは確かだ。
ルアナは俺の顔を見ると、小走りでケイスたちの方に向かい、俺に指を差す。
ケイスは振り向くと、珍しいものを見たかのように口を開いて、フローシアは腰に手をかけて笑みを浮かべていた。
「どうした。俺の顔に何かついてるのか」ケイスたちにそう尋ねるが、返ってきたのは沈黙だけだ。
俺はため息を吐きながら、ケイスたちの横を通り抜けて、ゆっくりと階段を登る。
「相変わらず阿呆だな」そう吐き捨てるように言い、振り返ってケイスたちを見下ろす。
月明かりに照らされた三人の影が、静かに揺れる。
「よし、それじゃあ打ち上げ行きますかーー!」
ケイスの言葉が響いたその時だった。
突然「パアーーンッ」と甲高い音が響き、同時に背中を撃ち抜かれたような激痛が走る。
さらに、視界の中で、ケイスとフローシアも同じように苦しみ始め、上半身を拘束される。
「見つけたぞ――」
そのような声が重なって響く。
同時に重い鋼がぶつかり合う重音が耳を押しつぶした。
ゆっくりと、視界の端に影ができ、その影が俺たちの周りを囲う。
「貴様らには第三王女を誘拐した罪で」
『ケリオス王が直々に罰を与えるとの命令があった』
そして、白金の鎧を纏った兵士たちがルアナを除いて三人をアフィネス中央に鎮座する『城』へと連れて行かれた。
◇◇◇
重い足取りのなか、無理矢理足を前に運ばされる。
薄暗い廊下に、甲高い足音と、重厚音が響く。
「ルトゥーーッ!助けてくれよーーッ」
ケイスがそう叫ぶと、兵士がケイスをビンタし「静かにしろッ。何度言えばわかるッ」と言った。
「ケイスはわかるけど、なんで私まで!」フローシアは表情を強張らせながら、ケイスへの愚痴を吐いている。
俺は肩の力を抜きながら、兵士の思うがままに廊下を進まされる。
その間も、ケイスは叫び、その度にビンタをされている。
「静かにしろ。この先でケリオス王が待っている」兵士の男は静かにそう言い、ケイスとフローシアを整列させる。
俺はため息を吐くのに紛らせて「汚れた血族には会いたくないんだがな……」と愚痴を漏らした。
その言葉を兵士が聞き逃すわけもなく、すぐさま駆け寄り、腰にかけた剣を引き抜いた。
「なんだその態度はッ。王に対する侮辱と取るぞ」
そう言って、俺の首元に刃をかける。
だが、別に恐怖という感情に駆られているわけじゃない。
無防備な狼が、強気なリスに余裕を取れるのと同じだ。
「そうか。実際に俺はケイオスを侮辱した」口角を軽くあげ、挑発気味にそう言い放つ。
その言葉に、もちろん兵士は怒り「ケイオスではないッ!ケリオス王だッ」と怒り叫んだ。
すると、兵士の激昂を聞いたのか、扉の奥から低い声が響いた。
俺には聞き取れなかったが、兵士はその言葉を聞き、剣を下ろす。
「いいか平民。これ以上王に対する侮辱は許さんッ」
兵士はそう言って、ゆっくりと部屋の扉に手をかける。
その兵士を横目に、静かに呟く。
「超越する魔法」
同時に空気が揺れ、兵士の体が強張る。
すると、ゆっくりと扉から手を離し、俺の拘束具に手をかける。
兵士は抵抗せずに、ゆっくりと拘束具を外し、ケイスとフローシアの拘束具にも手をかける。
「さて、俺はあの死に損ないに興味はない」そう強く吐き捨て、薄暗い廊下を逆走する。
ケイスとフローシアの表情は見えなかったが「へ?」と間抜けな声が聞こえた。
薄暗い廊下に足音が響く。
廊下の壁には様々な王家の人間の写真がかけられていて、中にはルアナの姿もあった。
俺は頭痛に駆られながらも、重い足取りで、城を後にした。




