3話 栄光
「2人はよく私のことを見てくれるよね、観察てきな感じでさ」
いつもの教室で見せるような笑顔で言ったため驚いた。もっと軽蔑的な目を向けられると思っていたからだ。しかし、やはり用件は観察についてか。
悟ってはいたものの本人の口から言われると焦るし気まずい。助けを求めるように三原の方を見ると、顔を赤くし、必死に言い訳を探している姿が映った。
とにかくどうしよかと考えを巡らせていると、
「それでね、私が言いたいことはその観察力を使って2人に協力してほしいことがあるってことなの」
西羽結花は誤解でも解くかのように口早に言った。
驚きだった。本題が観察についてじゃなかったのもそうだが、一番は友達の多い西羽結花が僕たちみたいな陰キャに協力を頼むことだ。
僕にできる事なんて、キモい人間観察の仕方や陰キャという立ち位置の良さを教えることくらいだ。
パッと目を見開いて真意を確かめようとしていると、
西羽結花は制服のポケットから一枚の四つ折りにしてある紙を取り出し、とびきりの笑顔で僕たちの前に見せつけた。
「日常開拓部つくりました!細かく日常を観察して楽しさを見つける部活!よかったら入部して!」
話の真意が見えてきたと同時に僕を必要としているという真実に嬉しさがこみ上げてきた。確かに細かいことを気にする僕に似合う部活だ。
「入部します!」
え?とんでもない活力のある声が聞こえ、びっくりして横を向くと、椅子から身を乗り出して手をあげる三原の姿があった。
「本当!?」西羽結花は瞬きするのも惜しいくらいの笑顔で三原を見つめた。「はい」と三原が今度は少し恥ずかしそうに答えるとまた制服のポケットに手を入れ、入部希望の紙を取り出した。
そして「ほんとにありがと」と一言添えて三原に渡すと僕を見た。
西羽結花というカリスマ美人とキャピキャピ部活ライフか、よしっ
「入部します」自分なりにしっかりした声と声量で言った。「ありがと!」と西羽結花は笑顔で僕にも入部希望の紙を渡した。
やれやれ、この笑顔を見るためにはなんでもしてしまいそうになりそうだ。
その時、ガタンっと扉が開きそちらに目をやると、
「強引すぎないか?」と苦笑いする黒瀬いさなと、
「でも、これで公認の部活になりましたよ」と笑う入日奈佑芽乃の姿があった。2人はいわゆる西羽結花のいつメンというやつだ。
「明日からよろしくね」と西羽結花は黒瀬いさなの横につき言った。
明日から僕は西羽結花でなく、日常を観察することになりそうだ。
「は、はい」




