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異世界探訪奇譚ー魔女の弟子編ー  作者: くもたろう
第3章:集落のひとびと
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第4話:世知辛い話

「そうだね、今すぐには無理だと思うけど、いつか街や王都に行きたいってなった時はドナルドにお願いすると思う」

「おお、それは是非是非!それまで私なりに情報は集めておくことにしよう。勿論、リョウスケの存在を言い触らすつもりは無いから、安心してくれていい!」

彼は声高らかにそう言い放つ。

その口振りからして、おれのことを商売の客か何かと錯覚してしまっている様な感じがする。

どちらにせよドナルドはこの場に来てから彼是(かれこれ)十杯以上は飲んでいるので、いい具合に酔っぱらっているのは確かだ。

「――リョウスケが王都に行くなら、その時は私も一緒に行くわね。父は王侯貴族にも顔が利くからリョウスケの事情を説明したら協力してくれると思うし」とソフィア。

今更ながらに思うことは、彼女は妾の子とは言えしっかりとした家柄の血筋なのだろうということ。

薬師でありながら王侯貴族に顔が利くのだから、その父親は王宮掛かりつけなのかもしれない。

そのご息女がこの小さな集落へ流れ着いているのは……少し話には聞いたが、彼女が抱えている問題は大きそうだ。

「それは有り難い。昨夜、あの遺跡で目覚めた時はこの先どうなることかと思ったけれど、ここに来て明るい兆しが見えて気がするよ。何せ初めに出会った相手があの厳めしい老魔法使いだったからね」

少しおどけてみせて、そう告げるとソフィアは嬉しそうに顔を綻ばせた。

二転三転したが、今は頗る上機嫌でいてくれている。

まだどこに地雷があるのかまだ分かってないが、特別に付き合うのが難しい女性ではないと思う。

彼女が荒ぶってしまうのは、今のところ偏屈なルーファスやデリカシーの無いギルに対してだけの様だし。


それからおれはまた少し話題を変えることにした。

ドナルドはこの地域を商圏とする商人らしいので、いつでも話せる相手ではない。

今の内に彼の得意分野の話を、色々と聞いておいた方が良いと思ったのだ。

「――ドナルド?行商で街と集落を行き来するときは、護衛を雇ったりするのかい?」

おれとソフィアが話してる間に、彼はキジ肉を食べていた。

まだ頬張ったままだが、気の良い彼はすぐに答えてくれる。

「普通は護衛は雇うよ。これは商人に寄りけりだけど、私は身内に凄腕の冒険者がいるから普段はソレを連れて来てる。この地域は物流が少ない分野盗の類は少ないけど、経路上オークの森の近くを経由するから、用心は怠れないんだ」

「オーク?って、もしかして人の身体に頭が豚とか猪みたいなやつ?」

「そうそう。ここらでは猪頭と呼ばれてるよ。リョウスケの国にもいるのかな?」

「あ、いや、いないけど……話には聞いたことがあって。もしかしてさ、ゴブリンとかコボルドとかもいる?」

商人や商売の話をしてると忘れてしまいそうになるが、やはりここはファンタジーの世界だ。

そう言った亜人種や魔獣も存在していて、恐らく人間社会とは敵対してる存在なのだろう。


「いるいる、うじゃうじゃいるよ。オークは森を棲み処とし、ゴブリンは近くの山脈に深い谷があってそこを棲み処にしてるんだ。コボルドは西に広がるジンバラ大平原や古戦場に生息してる。アイツらは非常に縄張り意識が高くて、近づくと問答無用で襲い掛かって来るからね」

「なるほど、それぞれ特有の生息域があるのか。それらを討伐する軍や冒険者みたいなのがいるってことかな?」

「基本的に王国軍は、他国に対して侵攻する場合と、他国から侵攻された場合の防衛に対してのみ動かされるんだ。亜人種や魔獣の脅威からの治安維持は、各街や村、集落に委ねられているのが現状だね。国としては各領主、各街ごとに冒険者ギルドを立ち上げ冒険者を募り、人々の生活を脅かす者たちを撃退する……と方策を打ち出しているけど、国の思惑通りにギルドが機能してるのか?と問われると、中々上手く機能はしてないと言うのが一般的な世論かな」

ここに来てドナルドは神妙な顔つきとなった。

商人として街や集落を渡り歩く彼からすれば、亜人種や魔獣の脅威は他人ごとではない。

過去に危険な目に遭遇したこともあるはずだろうし。

おれは会話を切らず引き続き「国や領主が依頼主で、それをギルドが仲介して冒険者に仕事を斡旋するということ?」と問いかけた。

「概ねその理解で合っているよ。冒険者ギルドの仕事は腕の立つ冒険者を多く集めて管理し、依頼に応じて仕事を斡旋し、無事依頼を終えた冒険者に対して適正な報酬を与えること。近年は貴族や豪族の他にも豪商なんかも大規模な討伐隊を組むからさ、依頼料の高騰化が問題視されてるんだ」

「それって、要するに一般庶民はギルドを利用出来ないってことだよね?」

「利用できないって事は無いけど、それなりに金は必要となる。まず経験豊富な冒険者を雇う事は不可能だよ。庶民の支払い能力では不可能な金額を吹っ掛けられるからね。有能な冒険者を貴族が直接雇用して囲んでしまうこともあるから。一般の行商の護衛はギルドに登録して間もない素人同然の冒険者ばかりさ」

「そうなると実際に脅威に直面した時は役に立たないって言うか……雇い主を置いて逃げ出してしまう奴らもいるのでは?」

おれの発言に対してドナルドは渋い表情を浮かべ、何度も頷いていた。

「要するに安全を確保したいなら、腕が立ち尚且つ信頼の置ける冒険者を雇えよって話さ。冒険者ギルドも若手の育成に躍起になっているけど、こればっかりは経験が物を言う世界だから――」

世知辛い話だがファンタジーの世界も、つまるところ金が物を言う。

どの様な世界でも、人間が社会を形成すると同じような問題に満ち溢れるというわけだ。


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