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異世界探訪奇譚ー魔女の弟子編ー  作者: くもたろう
第3章:集落のひとびと
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第1話:商人ドナルド

別段男前という訳では無く、一際身形が良いという訳でも無い。

しかしドナルドは愛嬌があり、どこか憎めない男だった。

明るいブラウンの髪はかなり癖がありウネウネと渦巻いている。

凛々しい眉と立派な揉み上げはあるが、口周りは無精髭が少しある程度だ。

特徴的な通りの良い声は初見の相手に良い印象を与えることだろう。

その目は爛々と輝いており力強い眼差しをおれへと向けている。

ドナルドの周りには集落の男たちが集まり出していた。

その様子を見て、おれは今更ながらに気が付いたことがあった。

(あれ?もしかして、おれって集落の男たちから警戒されてる?)

まだ名前も知らず話しても無い人には軽く会釈をしたが、あからさまに視線を外されてしまう。

(ああ、なるほど、ね……)

今日の宴も歓迎会と言うよりは、おれの品定めと言ったところか。


「――では、集落の皆もリョウスケの話を聞きたい筈だから、私が代表して話させてもらうよ?」

ドナルドはその良く通る声で自身の意思表明をした。

集落の男たちがおれに対してあまり良い印象を抱いて無いと、彼は気が付いているのだ。

空気を読むのが上手いのは商人ならではなのだろう。

その問いかけに対し男たちは少し騒めいたが、反対の声を上げる者は無かった。

それを見かねてかゴドウィンが「ドナルド、話を続けて欲しい……皆もリョウスケと其方の話を聞きたいと思っているから」と、助け船を出してくれた。

おれとドナルドは同じタイミングでゴドウィンへと視線を向け、それから再びゆっくりと視線を重ねる。

先に口を開いたのはドナルドだった。

「すまないね。大人になると、色々物事が簡単では無くなってしまうから。ガキの頃だったら、殴り合いで決着がついてしまう様なことも、皆で集まってあれやこれやと話し込まなくてはならない」

彼の発言は、おれの耳には集落の男たちに対する皮肉の様に聞こえたが、それにより気分を害した者はいない様に見えた。

皆、固唾を飲んで聞き入っている。


「ドナルド……きみが謝る必要はない。おれ自身何がどうなって今この場所にいるのか分かってないのだから、怪しまれたり警戒されるのは当然だと思う」

おれは極力穏やかなな声で話すことに努めた。

(へりくだ)る必要はないが、不遜な態度をとる必要もない。

「しかし、本当に我らイセリアの言葉を上手に扱うな。さすが【言語理解】のギフトを持つだけのことはある」

ドナルドは悠然とした態度でこの場に臨んでくれていた。

口許には爽やかな笑みまで湛えてある。

周りの者たちは、おれのギフト紹介の時に少しざわざわと声を漏らしていた。

こちらのことを上手く紹介しながら話を進める気なら、それに乗らない手はない。

「ドナルドたちと同じ言語を上手く操ってるという意識は無いよ。生まれ育った国の言語をそのまま話してるだけ。ギフトのお陰でこうして話せているのだから、正しく神の思し召しと言ったところかな?」

「ルーファスからは、ササラ人の様な風貌だが、それとは全く別の国の出身と聞いているけど、具体的に説明は出来るのかな?」

彼の口振りからしてルーファスから異世界転移の話は聞いて無い様だ。

老魔法使いの意図をどこまで酌めるか分からないが、ここはひとつ異世界や転移という言葉は使わずに説明してみよう。

ソフィアに話した内容を叩き台にすれば、ドナルドを含めその他大勢からの理解も得られるはず。


「――では、出来る限り具体的に。この集落は、サリィズ王国に属しているとソフィアから聞いた。そしてこの地は確かアーリヤと言う名の半島だった記憶してるが、間違いないだろうか?」

今朝の話だが、国や地名に関しては何処まで正確に覚えているか分からない。

概ね合っているとは思うが。

「ああ、その通り。アーリヤ半島には現在多くの国が乱立している。ちなみに、リョウスケに似ていると言ったササラ人は、この地よりかなり南方に文化圏を構築する人々だが、それとは全く無関係という認識で問題ない?」

「その認識で問題無いよ。おれとササラ人は全くの無関係だから。では、話を続けるが……幾多の国が乱立すると言うアーリヤ半島は、アウローラと呼ばれる大陸の一部で、その周りには大洋が広がり、そして更にその先は未開の地で、悪魔や魔獣が跋扈する恐ろしい世界だと聞いているが、ここまで……おれの認識は間違ってないかな?」

「その認識で間違いない……と言うか、大陸規模の話になると、正しいかどうか私では判断が付かないな。アーリヤ半島とその周辺国の地図や情報はあっても、そもそもアウローラ大陸の全容が分から無いことだし。わざわざ大洋を越えなくとも、この大陸の中に悪魔が跋扈する地域があっても不思議では無い、という話で」

ドナルドは身振り手振り忙しなく話していた。

それに合わせる様に傍聴者たちは、唸り声混じりの息を漏らす。

自己主張の強いソフィアですら口ひとつ挟まないのだから、彼の信頼度の高さは推して図るべきだ。

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