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異世界探訪奇譚ー魔女の弟子編ー  作者: くもたろう
第2章:この世界で生きてゆく
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第10話:異世界女子トーク

「――うふふふ、ソフィアが男と二人で楽しそうにお酒飲んでるところなんて、珍しいわね」

ベリンダは集落長の奥様だけあって、優雅な立ち振る舞いだった。

優雅……と言うよりも妖艶なと言うべきか。

恐らくおれよりも年上だと思うが……とにかく溢れんばかりの色気がムンムンだ。

「だって、リョウスケと話すのは本当に楽しいからね。私の知らないことを沢山知っているし。それにね、ベリンダ?リョウスケって男性なのに料理が出来るんですって」

ソフィアはそう言い、おれとベリンダの分のクヴァスを桶から掬ってくれた。

かなりのペースで飲んでいるが、少し頬が赤いだけで酔いが回ってる感じでは無かった。

「あら、それは珍しいわね。リョウスケってササラ人……なのかしら?」

ベリンダはそう問いかけクヴァスを口にしていた。

艶やかな唇を舐めたり、長く黒い髪を掻き上げる仕草が色っぽ過ぎて照れてしまう。

まさか異世界に来て、色っぽい人妻にうつつを抜かすことになるとは思いもしなかった。

「ササラ人に似てるそうですけど、違いますよ。別に秘密では無いですけど、かなり遠方の国の出なので、詳しいことはルーファスに聞いてもらえると助かります」

「そう、じゃあ、その内ルーファスに聞いてみるわね。と、それはさて置き、私、リョウスケの国の料理を食べてみたいかも」

麗しき人妻は甘く囁き、おれの膝に手を置いた。

テーブルの下の行為で、隣にいるソフィアも気が付いては無いだろう。

一般的に考えると男を誘う様な行為だが、彼女の立場や今の状況を考えると……おれのことを試している様な感じもある。

どの世界にもこういう悪戯が好きなお茶目な女性はいるらしい。


「――()()()()、ならいつでも振る舞いますよ」

「あら、嬉しい。うふふふ……リョウスケは大人の遊びも、色々と心得てそうね。そう言うお国柄なのかしら?」

ベリンダは優美な笑みを口許に湛えつつ、おれの膝から手を離した。

誰かに見られたら遊びで無くなってしまうのは、彼女はよく理解しているのだ。

「大人の遊びは、ほどほどに。おれの国は、そうですね……真面目な人も多いけど少しタガの外れた人が多いのは確かだと思います。快楽や道楽をとことん追求する人物が多かったですね」

この妖艶な人妻さんは、おれの話を聞き嬉しそうに笑みを零していた。

艶やかな唇を舌先で舐める仕草はには、思わず目が奪われてしまう。

それからベリンダは、おれからソフィアへと標的を変えその食指を伸ばした。

「ねえ、ソフィア?貴女、リョウスケみたいな男は好みじゃないの?」

当人を挟んでのダイレクトな質問に思わず背筋が伸びた。

その問いかけを受けてソフィアはゲホゲホと咽る始末。

「ちょっと、ベリンダ!?急に変なこと言わないでよ。貴女、もう酔ってるでしょ?」

「まだ全然酔ってないわよ?それにね、別に変なことでは無いと思うけど。リョウスケは独り身と聞いてるし。出会ったばかりでも、あなた達はとてもお似合いに見えるから」

「あのね?さすがに出会ったばかりすぎるでしょ?昨日の今日だし。それにリョウスケは私みたいなガサツな女には興味無いんじゃないかしら?」

「ウダウダ言って無いで、取りあえず一度抱かれてみなよって言ってるのよ。一回ヤッてみないと分かんない事もあるんだから」

「ちょっとベリンダ!?リョウスケの前でそんな話しないでよ!この人結構育ちがいいんだから……」


――と、異世界女子トークの渦中で、おれはしみじみとクヴァスを味わっていた。

クセの強い酒だが慣れたらハマる味なのだ。

気が付くと男性陣はゴドウィンやギルを中心に集まり、こちらの様子を伺っていた。

皆一様に、ニヤニヤとした笑みを湛えている。

要するにおれやソフィアはイイ酒の肴と言う訳か。

そのことにソフィアも気が付いているのか、ベリンダに絡まれ始めた時の恥じらいは消えてしまっていた。

ベリンダからすればソフィアは実の娘の様な存在で、本気で女性としての幸せを気に掛けている様に見えなくもない。

まあ、どちらにせよ今のおれに出来ることは、味気のないキジ肉をツマミにクヴァスをちびちびと飲むことくらいだ。

未だ女性二人はおれのことなどそっちのけで、下世話な女子トークに花を咲かせている。


そろそろおれも男性陣の方へ加わろうか……と思っていたら、新たな来客があった。

人影が視界に入った時はコールやルーファスが来たのかと思ったが、部屋の入り口には初見の男が立っていた。

その男は室内を見渡し、おれを見つけると対面の席に腰かけた。

柔和な笑みを浮かべつつ、彼は自分の分のクヴァスを桶から掬い、まずは駆けつけで喉を潤す。

風貌からして、おれと同年代か少し下頃か。

「――貴方がリョウスケかな?先ほどルーファスの家に書物を届けた時に話を聞いてね。とても興味深くて飛んで来てしまった」

彼は身振り手振り言葉を繰り出していた。

服装は周りと似た様なものだが、着こなしが良く見栄えが良かった。

「はい、リョウスケです。ルーファスから話を聞いたんですね。で、当のルーファスとコールは?」

「ルーファスとコールも一緒に来ようとしたんだけど、子供たちが遊びに来てね、読み書きを教えると言っていたよ。コールもそれに付き合うみたいだった」

「なるほど、あの老魔法使いはそう言うこともしてるのか。ところで、貴方のお名前は?」

「あ、失礼……興奮のあまり名乗るのを忘れてしまった。私は商人のドナルドと申します。以後お見知りおきを――」


よく覚えて無いが、こちらの世界へと来てから何処かで聞いた名前だ。

ドナルドの目の輝き様から見て、恐らくルーファスからおれのギフトや可能性の話を聞かされているのだろう。

彼の登場により、怪しく咲き狂っていた女子トークは終焉を迎え、散っていた男性陣もドナルドの周りへと集まって来た。

皆、この男の話には興味津々と言ったところか。

商人と言うことは商品を運んでいるだけではなく情報も伝達してる筈だから、他の者よりも見聞が広いのは確かだろうし。

おれとしても、この世界のことを深く知るいい機会だ――。


第2章 

この世界でいきてゆく

END

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