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異世界探訪奇譚ー魔女の弟子編ー  作者: くもたろう
第2章:この世界で生きてゆく
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第2話:ギルの弟子

少し空気を変えようと思い「――コールくんは、今、歳はいくつなんだい?」と尋ねると、彼は口許に笑みを戻してくれた。

「今年十五になりました。ギルの言葉は厳しく聞こえたかもしれませんが、言われて当然なんです。彼は十五の頃に王国軍に志願して戦場に出ていたらしいので」

コールは笑みを湛えてはいるものの何処か悲し気な表情だった。

常日頃から思い詰めているのかも知れない。

「厳しい言葉だったけど、最初に剣筋は良いと褒めてるんだから、そこまで悲観する必要は無いのでは?まだ若いし日々鍛錬をしてるのなら、体力はまだまだ伸びるよ。けど、わたし的には優しいままのコールくんでいて欲しいって思うけど。戦場も行く必要が無いなら、行かない方がいいでしょ?」

おれの言葉が彼にとって慰めや励ましになるか分からなかったが、そう声を掛けずにはいられなかった。

コールは少し驚いた様な表情でおれのことを見ている。

「そう言う風に言って頂けると、心が軽くなったような気がします」

「まあ、わたしなんかの言葉を師匠のギルさんが良しとするか分からないけど、何事も気負いすぎるのは良くないから」

このままコールと話し込んでしまいそうだったが、家の中から「おーい!リョウスケ!コール!早く家に入ってこい!何やってんだ!?」と怒号が飛んで来た。

「ああ、そうだった、コールくん?今から集落長と会うのに、服を借りに来たんだったよ」

おれがそう言うと、コールは一目散に家の中へと駆け込んでしまった。

その後に続きおれはギル宅へと足を踏み入れた。


室内は……家主からは想像もつかないほど整然としていた。

まあ、これはコールの尽力に寄るものだろうと、すぐに想像はついたが。

ギルとコールは一緒になって物入れの中を漁っていた。

何をするにしても荒々しく粗暴に見えてしまうギルだが、一方的にコールに押し付けるワケでは無いので、険悪な関係性ではない様だ。

暫くするとコールが上下一組の服を持って来てくれた。

とても丁寧に折りたたんである。

「これは、集落の方から頂いた服なんですけど、ぼくが着るには大きくて、ギルには少し小さくて……多分、リョウスケには丁度良さそうだと思って」

コールはテーブルに服を広げてくれた。

彼らと同じ麻生地で無地。

白とベージュの中間くらいの色合い。

ボタンは無くて、上衣下衣共に紐で結んで止める……割烹着とか柔道着に近い服だった。

少しざらつきはあるが、着心地は悪くない。

サイズ感は自分用に仕立ててもらったかの様にぴったりだった。

おれは手早く着替えて、ソフィアのローブを丁寧に畳んでテーブルへと置いた。


「おお、丁度いい大きさだったな」とギルは傍に来て大声でそう言った。

外でも室内でも変わらない声の大きさに、笑みが零れてしまう。

「ああ、本当に丁度いい。ありがとう、ギルさん、コールくん」

「へへへ。ウチに置いてても誰も着ねえんだから、気にするこたぁねえぜ?よし、じゃあ、服も着たし集落長の家に行くとするか。コールよ?後からお前も顔出せ。あの集落長のことだから、ご馳走振る舞ってくれる筈だ。こんなもんは早いもん勝ちだからな?」

ギルはそう言うと、大股で家から出てゆく。

おれとしては靴も貸して欲しかったので、その旨を告げようとした……が、その前にコールが足元にサンダルを用意してくれた。

木の弦とか板を組み合わせた簡素な履物。

これで走り回るのは些か億劫だが、集落内を歩く分には申し分ない。

「コールくん、何から何までありがとう。助かるよ」

「いえいえ、ぼくもこの集落に流れ着いた時は、皆さんから良くされましたので……では、またあとで会いましょう」

コールに取り合えずの別れを告げ、外に出るとギルは家を出た所で待っていてくれた。


「リョウスケはコールと気が合いそうだな。イイヤツだからよ、仲良くしてやってくれよ」

「ええ、勿論。出会ったばかりなのに、とても親切にしてくれました。本当に心優しい子ですね。ギルさんとコールくんは親族ですか?」

「いや、血縁はねえよ。街で知り合って、行く当てが無さそうだったから集落に連れて来てやったんだ。まあ、そう言う細かい話は本人から聞いてくれ。んじゃあ、行くぜ?」

ギルはそう言うと、いつも通り大股で歩き出す。

無骨で荒くれ者の体を為してはいるが、この男もその言動の端々に優しさが滲み出ている。

おれはすぐに彼に追いつき隣りを並んで歩いた。

「あ、そう言えばソフィアさんのローブを置いて来てしまった。後で取りに行っていいですか?」

「いや、その必要はねえだろ。コールのヤツがソフィアのとこに持って行ってくれるさ。あのローブを着るのはこの集落じゃあソフィアだけだからな」

「それじゃあ、またコールくんの世話になってしまいますね」

「コールは、オレと出会ったころから、そう言うヤツだった。何でもかんでも自分ひとりに背負いこむクセがあるからよ、その時々で怒ってやんなきゃなんねえんだ。あんまり気張るんじゃねえってな」

ギルは面倒臭そうに話していたが、その気心の優しさは短い会話の中でも十分に伝わってくる。


ギルは話ながら集落の中をどんどんと進んで行った。

ひと気は多く無いが、ところどころその姿は目に留まる。

おれの浄化が済んだことがもう触れ回っているのか、物陰から隠れ見る様な人はいなくなっていた。

集落長の家は、ルーファス宅とギル宅の丁度中間あたりにあった。

ふたつの平屋を繋げた様な大きさだった。

今まで見た集落の建物の中で一番の大きさなのは間違いない。

家の扉の前にはルーファスとソフィアが立っていた。

いよいよ集落長との対面かと思うと、改めて緊張感が湧き出てくる。

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