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異世界探訪奇譚ー魔女の弟子編ー  作者: くもたろう
第1章:森の集落にて
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第9話:大ケヤキの下で

ソフィアは先に外へ出て、少し進んだところでこちらへと振り返った。

陽の光の下で見る彼女の栗色の髪は、美しくまるで金髪の様に輝き目に眩しく映る。

気性が荒く年上の魔法使いにもお構いなしで喰って掛かる強き女性。

年頃で見目麗しいが独り身と言うことは……。

色々と察してしまえるが敢えて口にすることでは無い。

それはさて置き。

このまま裸足で外に出ろと言う事なのだろうか?

折角魔法で治療して貰ったので、近場とは言え何かサンダルの様な物でもあれば借りところだ。


「――ソフィアさん?わたしは、このまま裸足で行くべき……ですか?」

おれは玄関口で彼女に声を掛けた。彼女はすぐに反応を示し、おれの方へと歩み寄ってくる。

「そうね、靴を貸してあげたい……ところだけど、今はそのまま裸足で来て。集落の中は整備されてるから、足を怪我することは無いと思うし」

「それってもしかして、浄化した後であれば貸せる、みたいなことでしょうか?」

「その認識でいいわよ。全ては浄化後に。本来はね、昨夜とかさっきみたいに語り合うのも禁止なのよ。私とかルーファスは仕事柄許されてはいるけど、大っぴらには出来ないから。じゃあ案内するから着いて来てね?」

そう言うとソフィアはすっと踵を返して歩き出した。

おれは慌ててその後を追い彼女から二、三歩離れて追随する。

歩きながら集落内を見渡すと、物陰からこちらの様子を伺ってる人たちの姿が見えた。

(まあ、警戒されて当然か……。得体は知れないし、浄化も済んでないんだから。過去に浄化を軽んじて痛い目を見たとか、あり得る話だ)

先ほどまで、あれほど親身に話してくれていたソフィアも話しかけるなオーラを放っている様に見える。

今自分が置かれている状況は大体掴んではいるが、心の底から緊張と不安が止めどなく湧き出ていた。


導き手のソフィアは集落の中心部に向けて歩いているみたいだ。

集落は僅かに傾斜していて、その中心部が小高い丘の様になっている。

その丘の上にはケヤキらしき大樹があった。

実家の近くの神社に大きなケヤキがあり、木の幹や枝葉はそれと同じような姿かたちをしていた。

その大樹の下にはルーファスとギルの姿があり、ソフィアは真っ直ぐに二人へ向けて歩いていた。

ルーファスが明け方から描いていたという魔法陣はすぐに目についた。

大樹の影にはならない陽当たりの良い場所に大きく描かれてある。

おれはその前で足を止めた。

ソフィアは魔法陣をぐるりと迂回してルーファスたちと輪になり話を始めた。

なんとなくおれはまだその輪に加わるべきではないと思い、ひとり魔法陣を眺めていた。


魔方陣の直径は五メートルほどだろうか。

直接地面を削って描かれてあり、文字や線自体がぼんやりと光を放っている。

太い文字、細く細かい文字など多種多様だった。

線引きは無いが、部分ごとに纏まりがあり文字版の曼荼羅の様に見える。

これと全く同じものを地面に描くとなると二、三日は時を要する事だろう。

この美しい魔方陣の中で、悪魔に憑りつかれた者が浄化魔法を受けると、最悪気が狂ってしまうと言うのだ。

そうなると今見てるこの情景が最期に見た景色になる可能性があり、ルーファス、ギル、ソフィアは最期に出会った人物となる。

おれは僅か一日、こんなことのために異世界転移をしたのだろうか?

転移に超高度な魔法と膨大な魔力が必要とされると言うのに、こんな馬鹿げたことであっさりと死んでしまう?

もしかして死んだら元の世界に戻れるのか?

おれを転移させた意思や存在は、この結果をよしとするのか?

それとも昨日の遺跡に死に戻ってリセットされるみたいなアレか?

何度も死に戻りをさせて、この世界で生き抜ける道を探せというのか?

頭の中で様々な想いや感情が混ざり合い吐き気を感じた。

そして最後に、いっその事逃げ出すか?と脳裏に浮かぶ。

しかし一人で外に出た場合の生存確率と、浄化魔法の成功確率が定かではない以上、今のおれでは何をしても裏目に出てしまいそうだ。

その思考を経た結果、運命に身を委ねるしかない、と諦めに近しい覚悟へと行きつく。

そしてルーファスに対して、今告げるべき言葉も浮かんでいた。


「――あの!ルーファスさん?ひとつお願いがあります!」

おれは魔法陣の向こう側で、神妙な表情で語り合う老魔法使いに声を掛けた。

「うむ、どうした?申してみい」

「浄化魔法の後、もしおれの気が狂ってしまったら、一思いに殺してください。あと集落の人々に迷惑を被る状態になってしまった時も、同様の措置を、お願いします」

おれの申し入れを聞き、三人は明らかに表情を硬化させていた。

緊迫感が増したと言うべきか。

「うむ、お主の申し出、集落を代表して感謝と敬意を表す。では腹が決まったのであれば、魔法陣の文字を踏まぬ様に、中央に座し目を閉じよ」

老魔法使いの声は少し距離はあるものの、おれの耳には殷々(いんいん)と響いて聞こえた。

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