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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>(8がつく日は二話投稿)  作者: コヨコヨ
フレイズ領に園外授業に行く ~ダンジョンに囚われたSランク冒険者を救出する編~

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エイトさんVSマルティさん

 フェニル先生の手が振り下げられた。

 その瞬間、マルティさんは剣を引き抜かず、外套がはだけないように強く掴み、全力で駆けだした。

 剣を持って走るより、そのまま走った方が速い。

 泥の中でも滑る様子が一切なかった。そりゃあ、彼はバートン術部で泥沼をイカロスと共に走っている。

 なんなら、強くなるためにバートンが走る用のコースで何時間も走り続ける努力バカだ。

 明かに足腰が強靭になっている。


「バカが……、真正面から突っ込んできやがって。あぁ、そうか、お前のそれ、ブラウンベアーの外套だったな……」


 エイトさんは逆に、一切動かない。

 その場で立ち尽くし、右腰についていた杖ホルダーから自分の杖をゆっくりと取り出す。

 杖先を前に向けて何するか考えている様子だった。

 事前に戦いの作戦を考えておくのが、試合の鉄則だと思うが、彼はマルティさんと戦うことを今まで忘れていた様子なので少しの間、時間が空く。


 エイトさんの視線はマルティさんだけではなく、空や地面の状態などもおっている様子。


 ――魔法使いなら地形や環境を把握して、魔法の効果を最大限に高めるのが普通のはず……。


 空の黒雲がチリチリと光瞬いた。

 まさかと思ったが、第一闘技場の上空に発生している黒雲に真っ白な電流が走る。

 渦巻くように動いていたエイトさんの杖先が下を向いた。


「死ねやっ……、雑魚っ!」


 エイトさんは『無詠唱』で、上空に発生していた雷を魔法で操り、落雷にしてしまった。雷を操るなど、上級魔法ではなかろうか。生み出したわけではないから、中級魔法かな?

 ドーナツ状に空いている闘技場の天井から光に近い雷撃が落ちる。

 多くの者の視界に映ったのは真っ白な光。

 光のあと、空気を轟かす雷鳴が辺りに鳴り響く。

 それは何かが爆発したような音で、雷が大嫌いな生徒たちがいるのか、その場で耳や目を塞いでいた。


「エイトくんならそうすると思っていたよっ!」


 光が消え、視界に映るのは頭上に剣を放っていた、マルティさんの姿だった。

 雷が落ちたのはマルティさんの上ではなく、剣だった。

 以前、ニクスさんがエイトさんの攻撃を躱した時と似た状況。


「な……」


 エイトさんの視界に映っているのはマルティさんのはずなのに、どこかニクスさんに見えてしまっているのか、腰が引けている。

 マルティさんは剣だけを習って来たわけではない。

 モクルさんと一緒に戦い、武術の技術も高くなっている。だから、剣を捨てられた。素手ごろで、エイトさんに挑むらしい。


「マルティの癖に……、舐めるなよっ!」


 エイトさんは目の前から迫る、自分より弱いと思っていた存在に、完全に畏怖していた。

 そりゃあ、Sランク冒険者のニクスさんと同じ躱され方をしたら、どう頑張っても意識してしまう。

 彼のトラウマの状況の再現になっているのが、見ていられないほど痛ましい……。


 エイトさんの杖先は未だにマルティさんに向けられていた。

 魔法陣が展開され『サンダーショット』が打ち込まれる。正確無慈悲で、マルティさんの顔に向って飛んで行く。

 だが……。


「その位なら、耐えられる!」


 マルティさんは外套を盾にして『サンダーショット』を完全に防いだ。

 どこの映画の主人公ですか……と言いたくなるが、今のところ完全にマルティさんの戦いの流れだ。

 戦いの流れを掴まれていたら、普通はものすごく不利になってしまう。

 流れをつかめなかった方は、逆流の川を上っている状態に近いだろう。それでも、進まなければならない。


 先ほど、雷を操って落とす魔法が上級魔法なら『サンダーショット』を使った時点で、彼の魔力はほぼなくなっている。

 エイトさんは逃げるという手段はとらず、ウェストポーチに手を突っ込んでいた。

 何かないか、何かこの場を切り抜けられるような品はないかと、念を込めているような必死な顔。

 だが、その行為はマルティさんにとって、一番防ぎたい行動だと知られている。


「させないっ!」


 エイトさんがウェストポーチに手を突っ込んでいる状況から、ポーションを飲むのだと察したマルティさんはすぐさま攻撃に移る。

 一歩、足を踏み入れたのは、先ほどまでエイトさんが立っていた位置。

 その瞬間、地面に魔法陣が展開した。


「ぐっつぅううううううっ!」


 マルティさんは電気ショックでも、受けてしまったのかと思うほど何か苦しそうな声を出した。

 地面に魔法が仕掛けてあったようだ。

 そうなると、エイトさんが雷を操った魔法は中級魔法なのか……。あれが中級魔法なのは、雷がある前提だからかな。

 どちらにしろ、マルティさんのコンタクトレンズに魔力は見えているはずなので、罠も見えていたはず。

 でも引っかかったのは、エイトさんの行動を少しでも早く止めたかったから。

 その気持ちの焦りが、周りへの配慮を忘れさせてしまう。

 雨の影響で靴の中やズボンは濡れている。晴れの状態なら、そこまで大きなダメージではなかったかもしれないが、全身が濡れてしまっている今の状況だと、かなりの深手を受けただろう……。


「ち……、あの野郎……、いつの間に……」


 エイトさんはウェストポーチから私がいれた彼の自作したポーションを取り出していた。

 蓋を親指で弾き飛ばし、あおるようにして中身を飲み干す。


「ぐっ! はぁっ! なんだこれ、俺の魔力が体に沁み渡って来やがる……」


 エイトさんの自作ポーションは彼の魔力が水に溶けた状態。

 自分の血液も同然なので、当たり前のように体に馴染む。

 からっからに乾いたサウナ後の体にスポーツドリンクを入れるようなものだ。

 水分補給も行えるため、今のエイトさんは先ほどよりも体調の面に関してはすこぶる良い。

 メンタルは体調から崩れる可能性も多いにある。

 そのため、逆を言えば体調を治せば、メンタルまで治ってしまう可能性もゼロではない。


「し、痺れる……」


 マルティさんの体はスタンガンを食らってしまったように、手足が震えている。

 普通の人間なら気絶してもおかしくないのに、こっちの世界の人間は魔力の影響で比較的頑丈なので、耐えられていると思われる。


 ――マルティさんは、いつになったらスキルを使うのか……。はたまた、すでにスキルを使っているのかな?


 私は彼のスキルを知らないので、わからない。

 戦えるスキルなら、使ったほうが得だ。使わないということは戦いにあまり関係のないスキルと言うことか……。


 マルティさんは息を整え、エイトさんに走り込まず、落ちている剣に向って走った。

 今のエイトさん相手だと剣があった方が勝てる可能性が高いと考えたのだろう。


「待てよ、マルティっ!」


 外套の影響で、背後からだとマルティさんの体に魔法が当てられないと判断したのか、エイトさんもまるで追いかけているかのような声を出す。

 だが、実際はその場で立ったまま。

 何かしらの魔法を準備している様子だ。

 魔法使いなので、積極的に動くのは好きじゃないのかもしれない。


 マルティさんが剣を手に取った後、すぐにエイトさんの方を向いて剣を構える。

 今までの間に、マルティさんはエイトさんの攻撃を二回躱し一回食らった。

 攻めるのではなく、守りに入っている。

 時間制限が一〇分であり、三名の審判から良い評価を貰う方が勝ち目が高いと考えたのかもしれない。

 ここから、エイトさんの攻撃を一撃も貰わない前提だが……。


「舐めやがって……」


 エイトさんも、マルティさんの考えに気づいた様子。

 彼からしたら、マルティさんに攻撃を当てないと、勝ち目はない。

 どれだけ凄い魔法を放っても攻撃が当たらなかったら何の意味もないのだ。

 強い魔法より、弱い魔法でもうまく使える魔法使いの方が優秀なのはそう言う理由である。


「実力は全然違うんだ……、少しでも勝率の高い方を取る」

「あぁ、そうだな……。それが正しいだろう。だが、相手が俺じゃなかったらな!」


 エイトさんも調子が上がって来たのか杖を光らせる。『無詠唱』で魔法を発動するらしい。

 黄色の魔法陣が展開されると、ウォーウルフに似た生き物が召喚された。

 いや、生き物ではない。

 魔力で作られた物体。おそらく魔力体だ。

 でも、辺りに電撃を放っているのを見るに、雷属性魔法で作られた物体になる。じゃあ、魔法体と言ったほうがいいのか……。


「『サンダーウルフ』今から、狩りの時間だ。マルティの脚や腕に噛みつけ!」


 エイトさんは『サンダーウルフ』なる魔法体に命令を下した。

 すると『サンダーウルフ』はエイトさんの言葉を忠実に聞き取り、稲妻のごとき動きで地面を駆け出す。


「こいっ!」


 マルティさんは剣をしっかりと持ちながら、目の前から迫る魔法体を凝視している。

 フルーファに攻撃を当てるという訓練がいかされるような展開だからか、彼もまだやる気が衰えていない。


「そっちだけに気を取られていたらお前は負けるぜ……」


 エイトさんは『サンダーウルフ』を維持しながら、次の魔法の準備を整えている。

 器用な人だ。

 私と同じくらい魔法の並列使用が得意なのかもしれない。

 でも、あまり連発していると、魔力が少ない彼は確実にすぐに魔力枯渇症になってしまう。

 制限時間が一〇分しかない状況だからか、魔力を全て使い切るつもりで戦っているらしい。


「『サンダーアロー』」


 エイトさんの杖が弓の弧となり、魔力が弦や矢として権限している。猟犬を使った狩人のそれで、獲物はブラウンベアーの毛皮を身にまとった男。

 あの矢が、頭に刺されば死んでしまう可能性だってあるのに……、エイトさんに躊躇する姿はない。


「ふっ!」


 矢は三本あった。

 だが、一本しか放たれていない。

 すべての魔力を使い切らないように制御しているのだろう。あの、魔法体を作り出すだけでも相当な魔力を使っているはずだ。

 ただ、魔法体が雷属性の魔力で作られていて、相当強い電撃が体に流れるとしたら、厄介な攻撃なのは間違いない。

 マルティさんが攻撃を何とか受けないように受け流している姿から見ても、確実に食らってはいけない攻撃だとわかる。


「焼け死ねやっ!」


 矢はマルティさんに一直線に吸い込まれていく。『サンダーウルフ』の攻撃も同時に受け流さないといけない状況に陥ったマルティさんは完全に防御し続けるのは難しい状況だ。

 普段、同じ相手に同じ魔法を使わないというエイトさんも一度で発動した魔法なら使うと思うし、矢は残り二本あった。つまり、あと二回は攻撃できる。


 すでに『サンダーウルフ』と『サンダーアロウ』で、魔力はほぼ使い切っているはずだ。

 もう、倒れない程度の魔力が体の中に残っているくらい……。

 エイトさんもギリギリの戦いを強いられている。体調が悪い、心が廃れていたという状況があったにしろ、マルティさんに追い詰められていたのは確か。

 それだけマルティさんの成長速度が異常なのがよくわかる。


「はぁああっ!」


 マルティさんは羽織っていた外套を左腕に巻き付けた。『サンダーウルフ』に左腕を噛ませ攻撃を制圧。

 加えて、右手に持っていた剣を地面に突き刺し魔力を流す。

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