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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>(8がつく日は二話投稿)  作者: コヨコヨ
フレイズ領に園外授業に行く ~ダンジョンに囚われたSランク冒険者を救出する編~

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三年生の試験

「エイトさん、水だけでも飲んでください。これ、あなたが作った自作のポーションです。ウェストポーチに入れておきますからね! 今は、過去の自分の行いを信じて戦うしかないんです。マルティさんにビビっているんですか? それは過去のあなたが今のマルティさんより、頑張らなかったと認めていることになりますよ?」


 私の通る声が、エイトさんの耳に届いたのか軽く視線が動く。

 何も言うことなく、彼は取り巻きにつれていかれ、闘技場の中に入っていった。まあ、時間はギリギリ間に合ったみたいだけれど大丈夫だろうか……。


「天気も、もっと悪くなっていきそう……」


 空は真っ暗で、大粒の雨がカッパに当たりまくる。ちょっと痛いくらいだ。

 今後、雨風がこれ以上強くなったら魔法の命中率も下がる。剣士も足元や手元が滑る可能性が高い。どちらにとっても悪影響を及ぼすだろう。


「さっさと、闘技場の中に入らないと、私の方が風邪を引きそう」


 私も闘技場の中に入り、観客席まで階段を昇る。

 ステージより高い位置に作られた観客席はもう、ほとんどの生徒が入っているんじゃないかと思うほど大盛況。

 ミーナやメロアがどこにいるのかを探した。

 前の方の席にいる。周りの者たちは貴族なので、あまり割り込みたくない……。


 ――別の場所から見るか。


 私はどこからでもビーの視界を介せば、特等席で見られる。

 できれば雨風が当たりにくい場所がいいと思い、内側に入り込むように湾曲した外壁が雨を防いでくれる上の方の席にした。

 人気がないので、周りを気にする必要がない。


「ふぅ……。熱い熱い……」


 カッパを脱ぎ、水気を飛ばして乾燥させておく。

 その間に、中央の広いステージ上に三人の先生が現れた。

 三年生の試験がもう始まる。


 ――ゲンナイ先生とフェニル先生、キースさんの三名が最初に審判するのかな。ずっと同じ人が審判するわけにもいかないだろうから、途中から変わるだろうけど。


「ただいまより、三年の戦闘学Ⅲの試験を始める。勝利条件は相手の降参、戦闘不能、時間経過後の審判による評価の三種類。制限時間は一〇分。五〇組み程が戦う予定だ。午後一時から始めて午後五時にいったん打ち切る。残っている者がいれば、明日に持ち越される。そのつもりでいてくれ」


 フェニル先生の言葉が闘技場にいる者たちに投げかけられる。

 五〇組みで制限時間は一〇分となると、最長で五〇〇分。時間で八時間ほど。

 午後一時から五時までで四時間なので、今回で半分ほどが終わる計算だ。

 まあ、移動時間も含めたり、全組が一〇分戦い切るというのもほぼあり得ない。

 実力者ぞろいだから、長い時間がかかる可能性は十分にあり得るか。


 フェニル先生が合図すると、一組目の者たちが中に入って来た。緊張しているわけではない。私の知らない人達で、ステージ上で二人が向かい合っている。


「それでは、初め!」


 フェニル先生の合図があると、二名の生徒が剣を引き抜いて戦いだした。

 真剣を使うらしい。ものすごく危険だが、何かあればすぐに飛び出せるように三名の先生がじっと試合を見つめている。

 男子同士なので、そりゃあもう凄い火花が散る戦いだった。

 大雨の中、ずぶぬれになって剣身を当て合っている。

 耳障りな金属音が火花と共に闘技場を埋め尽くした。スキルや魔法も当たり前のように使う。


 一方の剣士が相手の剣を弾き飛ばすと、剣を吹っ飛ばされた方は負けを認めた。

 そうなれば、審判関係なく、剣を弾き飛ばした方の勝利になる。ざっと三分ほで試合が決着した。七分も時短になっている。

 まあ、この大雨の中だと体力の消耗も激しいだろうし、一〇分間もまともに戦える者は少ないだろう。

 柔道の試合も三分や四分ほどしかない。どちらも力を限界まで出し切るため、延長戦に入ったらヘロヘロになってしまう。

 殺し合っているわけではないので、精神的な消耗は今、剣を打ち合わせ合っていた方が大きいだろう。

 評価にもつながるので、体力と精神共に持っていかれたはずだ。この険しい状況の中で、一〇分も戦いあう者たちが現れるのだろうか……。


 一組目、二組目と試合が進んでいく。比較的長い試合もあれば、すぐに試合が終わる場合もある。魔法使い同士だと、もの凄い泥仕合になるので、一〇分が経ってしまう場合があった。


 七試合目が終わり、八試合目の者が呼ばれる。


「マルティ・マドロフ。エイト・サンダーズ。中央へ」


 フェニル先生の声を聴いた瞬間、はや! と声を出しそうになってしまった。

 三年生の試験が始まって一時間も経っていない。

 ただ、天候が今日最悪になっている……。

 中央のステージは試合の影響で地面が隆起し、大量の水たまりがある。立って全力で走るだけでも、体力を奪われるだろう。

 そんなのお構いなしに、観客席にいる者たちは大いに盛り上がっていた。

 落ちこぼれ筆頭のマルティさんと、優秀を絵にかいたような人物のエイトさんの戦い。

 どちらも噂が流れている影響で、この試合を待ち望んでいた者が多いのだろう。

 闘技場にいる人々の会話が止まらない。


「ん……、え? いや、君は……いったい誰だい?」


 ステージに上がった男子を見て、フェニル先生は首をかしげた。

 二度見、三度見、あまりに動揺している。一瞬、目の前の男子にときめきそうになってしまったと言わんばかりに、口に手を当てる。

 ステージに立っている男子は黒い長ズボンに白い長そでシャツを身に着けている。

 加えて、ブラウンベアーの外套を羽織っていた。身長が一七二センチメートルほどだが、足が長く顏が小さいのでスタイルがよく見える。

 左腰に使い古された剣を掛けている。

 今日は眼鏡をかけておらず、茶色っぽい瞳がよく見えた。

 濡れた前髪が額につくことがなく、風にあおられて揺れる。水も滴るいい男状態だ。


「えっと……、マルティ・マドロフですけど」

「はい? え、いや……、マルティ……って、こんな顔だったか?」


 フェニル先生はマルティさんとあまり面識がないのか、彼の印象は眼鏡に偏っていたようで、眼鏡を付けていない彼を見て、まったく判断できなくなっている。


「フェニル、間違いなくマルティだ」


 剣術の先生であるゲンナイ先生がマルティさんだと断定した。

 剣術の授業はだいたいゲンナイ先生が受け持っているため、真剣に取り組んでいたであろうマルティさんを覚えていたようだ。


「その剣はマルティの剣だ。つまり、その子はマルティで間違いない」


 ゲンナイ先生もマルティさんの本体はわからないが、剣の方はマルティさんの品で間違いないと……って、それはマルティさん本人だと気づいていないのと同じでは?


「マルティ、一度、眼鏡を付けてみてくれ」


 キースさんも、一応確認しておく必要があると思ったのだろう。

 眼鏡を付けるようにいうが、今、マルティさんは眼鏡を持っていないと思われる。


「す、すみません。控室に眼鏡を置いてきたままです」


 マルティさんはいったん、闘技場の入口付近に走っていき、控室に戻った。

 そこで眼鏡を手にして、戻ってくる。

 時間が伸びているので、イライラしている者も少なくないが、今、いた人物が本当にマルティさんなのかという話で持ち切りになっていた。

 相手のエイトさんの状態など誰も気にしている様子がない。


 ――エイトさんの顔色わっる……。風邪を引いたみたいになっちゃってるよ。でも、天候的に、エイトさんの方が有利になっている。この状態で勝てなかったら、ちょっと彼の心が折れるどころか砕け散って粉々になる可能性がある。


 私は、エイトさんがマルティさんに負けてしまうんじゃないかという可能性が見えてしまい、ものすごく嫌な予感がした。

 普通に戦っていれば、互角、又はエイトさんの方が強い。

 この天候なら雷属性魔法が他の属性魔法より強くなるはずだ。

 それなのに、あのマルティさんに負けたら……、Sランク冒険者のニクスさんに負けた時と比べ者にならないほどの劣等感に苛まれてしまうのではないか。


 私はどちらも応援しているが、それはどちらも健康で健全な状態である時だ。

 今、明らかに調子がいいマルティさんと、明らかに調子が悪いエイトさんがステージにいる。

 でも、体調管理もアスリートにとって大切なことだ。あの時は風邪だったからと言訳していたらダサすぎる。


「ふぅ……、落ち着け。私は見とどける義務がある……」


 早い段階で試合があって助かった。

 また集中力が十分残っているので、二名の試合をしっかりと見られる。


「エイト様……、なんか、やばいかもですよ……」

「なんかなんか、マルティ、いつものマルティじゃないっぽいですよ……」


 二名の取り巻きはエイトさんが出てきた方の出口付近に立っていた。

 もう、お前らはエイトさんの妻かと言いたくなるくらいの顔を浮かべている。両手を握りしめ、エイトさんに勝ってほしいと心から願っているようだった。


「こ、これでどうですか?」


 戻って来たマルティさんは眼鏡を身に着けて、三名に素顔を見せる。


「「「マルティだ!」」」


 三名とも、眼鏡をかけたマルティさんを彼だと判定した。

 眼鏡を外した時の印象が違い過ぎたらしい。


 マルティさんは眼鏡を外し、キースさんに預ける。

 きりりとした凛々しい瞳がエイトさんに向けられる。強風と雨を顏に受けているが、何かのコマーシャルですか? と言いたくなるほど雰囲気がいい。

 このまま、強敵に挑んでいく瞬間なんだろうなと優に想像できてしまう。


 かたや、エイトさんの方を見ると制服姿にローブを羽織っただけ。加えて、強風と大雨にあおられて、今にも倒れそう。金が尽き嫁と離婚したサラリーマンのように人生どん底と言わんばかり……。

 これほどまで、対極した状態も珍しい。


「エイト、何ボーっと立っている。前に出なさい」


 フェニル先生の声を聴き、頬をひっぱ叩かれた子供のような顔を浮かべたエイトさんは前に出る。

 辺りを見渡すと、いつの間にか闘技場にいるんだが? と言いたげだ。

 今、やっと自分が闘技場にいて、マルティさんと戦うのだと理解したらしい。


「エイトくん、大丈夫? 顔色が悪いけど」

「お前に心配されるまでもない……。俺様の体調は万全だ……」


 ――大ウソこけ……、二日間飲まず食わずの状態で何が体調が万全だ。


 マルティさんの体力が一〇〇パーセントだとすると、エイトさんは二〇パーセントほどしかなさそうに見える。

 ただ、それでもエイトさんの戦いを知る者は皆、彼が負けることなど一切思い描いていないはずだ。

 なんせ、エイトさんと戦う相手は皆、一撃で倒されるのが普通だから。

 きっと、今回も同じ戦いになるのだろうと、多くの者が思っているはず。


 私やリーファさん、モクルさんを除いて……。


「では、八試合目、開始っ!」

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