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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>(8がつく日は二話投稿)  作者: コヨコヨ
フレイズ領に園外授業に行く ~ダンジョンに囚われたSランク冒険者を救出する編~

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打ちひしがれたエイトさん

 周りを見渡すと、半分の者の顔が死んで、半分の者がいい顔している。試験の結果がいいか悪いかなど表情を見ればわかってしまう。


 私たちは食堂で昼食を頼んだあと、お盆に乗った料理を持ち、開いている席に座る。大貴族のメロアが一声かければ、多くの者がどくだろうけれど、運よく席が空いていた。


「二人共、問題は解けた?」


 メロアは私たちに試験について話てくる。

 ミーナはもう、試験のことを考えたくないようで、耳をヘたらせながら食事の方に集中してしまった。

 まあ、試験後の問題を語り合うというのも、試験期間の一種の醍醐味なので、私はメロアに乗っかった。


「まあ、一応解けましたよ。メロアさんも、その言いようだと問題なさそうですね」

「当たり前よ。私は、三年生まで確実に残れるけど、二人はどうなるかわからないから心配なの。私、一人だけ三年生になったら寂しすぎるわ……」


 メロアはぽろっと本音をこぼした。

 彼女の友達は私たちしかない。

 どうも、他の貴族との折り合いがつかないようで、彼女は孤高の存在になっている。

 一匹狼と言った方がいいのかもしれない。

 まあ、大貴族の令嬢なのに、おらおらしていたら周りの人は中々とっつきにくい。


「私は問題ないですけど、ミーナはちょっと心配です……。でも、たぶん、大丈夫ですよ」


 私はドラグニティ魔法学園の獣族に対する待遇の良さを信じて、呟いた。おそらく、キースさんもミーナの実力はわかっているはずなので、落第させると思えない。


「お替り貰ってくる~!」


 ミーナはお盆の上を空にして、また食堂のおばちゃんに話しかけに言った。

 ものすごい食欲。あの食欲があれば、将来有望なのは当たり前と言ってもいい。食べる子は育つ。食べない子は育たない。……私の胸のように。


「ねえ、キララ。昨日、三年生の男子二人がキララを探してたんだけど、なんかやらかしたの? いじめられているのなら、この私が燃やしてあげるけど」


 メロアは真っ赤な瞳を燃やしながら、手の平に炎を出す。無詠唱で『ファイア』が出せてしまっている辺り、彼女の才女っぷりがよくわかる。


「い、いえ、虐められているわけじゃありませんよ。だから、燃やしたりしないでください」


 メロアなら、本当に相手を燃やしかねない。燃やしたら、中々大きな減点を食らうはずだ。


「そう……、虐められていないのならいいんだけれど。もし、他の誰かに虐められていたら、私に言いなさい。どんな相手でも燃やしてやるから」


 メロアは本気で言っている様子。ものすごく頼もしいが、本当に燃やされたらこっちも迷惑するので、笑みを浮かべて「あ、ありがとうございます。頼りにしています」とだけ答えた。

 まあ、もし本当に虐められるようなことがあれば、相手は見目がないということ。

 私の周りに強者が沢山いるのだから、狙うなら周りに強い者がいない相手にしなきゃ。

 私はパンをリスのように食しながら、メロアの優しさを受ける。

 彼女も多くの者にこれだけ優しく出来ればいいのだけれど、彼女が認めた相手くらいにしか優しく出来ない。そこがもったいない。

 彼女にもいい友達を見つけてあげたいのだけれど、なかなかねー。ローティア嬢が一番気が合いそうなのになー。


「おまたせー。三人の分も変わりにお替りしておいた。ほしかったらじゃんじゃん取ってね」


 ミーナは巨大な皿に、大量の肉を乗せていた。

 加えてバスケットにも大量のパンが。無料ではないのだけれど、ミーナの可愛さゆえに食堂の方がサービスしてくれているのか、はたまたメロアの姿が見えたからサービスしておこうと思ったのか……。

 どちらにしろ私が食べることはない。もう、お腹が一杯だから。


 ミーナとメロアは周りの目など一切気にすることなく、食事を再開。ここは冒険者女子寮の食堂じゃないんだけれど。


「ねえ、聴きました? リーファ様とモクルさんが戦うらしいですわよ」

「ええ、聴きました。あの二人が戦うって、なんでなのかしら? やっぱり、あの噂が……」

「マルティさんを取り合うための勝負……。まさか、そんなことはないと思いますが……」


 近くの席で、二年生と思われる者たちが何やら噂話をしていた。

 聞き耳を立てると、リーファさんとモクルさんの戦いの話になっている。やはり、噂が広まるのが早い。どこからどう言う風にもれたのか。さすがに、それは、私でも調べられない。


「なあなあ、聴いたか? マルティとエイト様が戦うらしいぜ」

「ああ、聴いた聞いた。マルティとエイト様が戦ったら、どう考えてもエイト様が勝つに決まっているだろ。なんで、そんなことになったんだろうな?」

「そりゃあ……、あの噂だろ。リーファ様の取り合い……」

「リーファ様の恋人にふさわしいのはどっちか、勝負で決めようってか? ふっ、そんな訳あるかよ。どう考えたって、エイト様の方がリーファ様にふさわしいだろ」


 別の席で話し合っている男子生徒たちの方も、噂について話ていた。

 マルティさんとエイトさんが戦うという話し。こちらの噂も正しい。ほんと、どこにでも耳はあるものだな。

 誰がそんなうわさ話を流しているのやら。


 ――にしても、エイトさん、ビーの喫茶に来ないのかな。自作のポーションがあるんだけれど。使わないつもりだろうか。


 私は一応、森にいるビーにビーの喫茶を監視してもらっている。そのビーからまだ、エイトさんがやってきているという報告は受けていない。

 昨日、自分で自作したポーションを持っているのなら別に必要ないかもしれないけれど……。


「……持って行ってあげた方がいいかな」


 ポーションを持って行くくらいなら、別に何ら問題ないはず。せっかく作ったのなら使った方がいい。


 ――ベスパ、エイトさんの自作したポーションを一本持ってきて。


「了解です」


 ベスパは、ぶーんと飛んで行き、八〇秒ほどで戻ってくる。

 木製の試験管が私のもとにやって来た。木製の品は電気を通しにくいので、内部に高電圧がかかっていても水に触れなければ問題ない。


 ――ついでに、エイトさんも探してくれる。


「わかりました」


 ベスパは光り、他のビーたちから情報を受け取る。相手の位置を知らないと、渡すにも渡せない。マルティさんにびびっているという訳でもないと思うし、今、どこで何しているのやら。


「エイトさんは寮の部屋の中で、蹲っている様子です。どうやら、未だに心が戻っていないようですね。なかなか不味い状況かもしれません」

「そう……。それが、エイトさんの弱さかもしれないね」


 エイトさんは、ニクスさんに心を折られてから二日経っても癒えていない様子。

 まあ、折られた心が大きすぎたのかもしれない。でも、時間は待ってくれない。

 試験に出なければ、単位が貰えないし、マルティさんも不戦勝では納得しないはずだ。


「行くか……。でもなぁ。私が何か言っても仕方ないしなぁ……」


 エイトさんの心を鼓舞するのは、おそらく簡単。

 いや、簡単じゃないかもしれないけど、お菓子で釣れば案外楽そう。それでも、キースさんの考えからすると、エイトさんに自分の強さを理解してもらいたいはずだから、手を貸すのも違う気がする。


「キララ、何をウンウン唸ってるの? 便秘?」

「……生憎快便だよ。別に、ちょっと色々あってさ」


 私はミーナから話し掛けられて、少々焦る。別に便秘という訳ではない。考え事が纏まらないせいで、周りに不審がられてしまった点についてだ。


「なにがあったのよ。私に話して見なさい。この私が、何でも解決してあげるわ」


 メロアの自信は一体どこから来るのだろうか。私にわからない。でも、常に自信がある彼女だからこそ、何かヒントが貰えるかもしれない。


「メロアさんは、心が折れたことってありますか?」

「心が折れたこと? うーん、どうだろう……。骨折は何回もしたことあるんだけど……」


 メロアは心より骨を何回も折ってきたようだ。

 まあ、彼女の性格から考えて昔から危なっかしかったんだろう。医療技術は大して進んでいないが、回復魔法はとても優秀なので折れた骨くらいなら簡単にくっ付けられる。

 この国は骨が折れやすい人が多いはずだ。なんせカルシュウムの摂取があまりないから。


「挫折とか、辛い経験とかでもいいですけど」

「んー、特にないかな……。なんでそんなこと聞くの?」

「まあ、凄い鼻が伸び切っていた者が最近、根本からへし折られて……。その人の心がどんな状態なのか知りたいなと思ったんです。メロアさんが、もの凄い強敵に合って何もかも否定されたら、どうしますか? 君の戦い方はもう古い。このまま続けても、何の意味もないとか、言われたら」

「えぇ……、ものすごくムカつくけど……、完膚なきまでに叩きのめされているのなら、言い返せない。でも、その後練習しまくって逆にボコボコにしてやりたいって思うけどな。今までの自分を全部否定されたら、嫌だもん」


 メロアはパンを頬に詰め込むように食べながら呟いた。

 彼女の芯の太さを再確認させられる。

 彼女は心が折られてもすぐに立ち上がれるタイプの人間だろう。今までの努力を自分が一番よくわかっているはずだから。

 さて、エイトさんは、過去の自分の行いを認めてあげられるだろうか。

 私は木製の試験管を持ちながら、どうしようか再度考える。


 昼食を終え、ミーナとメロアは先に闘技場の方に向かって行った。おそらく、午後一時頃から試験が始まるはず。


「今の時間は……、もう、一二時四八分。エイトさんは今どこにいるの?」


 私はベスパに聞いた。彼は他のビーから情報を受け取る。


「二名の取り巻きが寮の扉を破ってエイトさんの部屋に突撃した後、エイトさんを抱きかかえて闘技場に向っている模様」

「なんか……、青春ぽいね」

「春は、青くないと思いますが?」

「青い子供たちの春って意味だよ」


 私たちも闘技場の方に方向転換し、運び込まれているエイトさんと合流できる地点で待機。

 奥の方からエイトさんを担いだ二名の取り巻きが、走ってきている。


「あぁ、もう、エイト様、しっかりしてくださいよ。試験に遅れたら、単位が貰えないんですよっ!」

「この試験の単位、必修なんですから落とすわけにはいかないですよっ!」


 二名の取り巻きは必死に走り、雨に打たれながらやってくる。

 エイトさんの表情はまあ、干からびた魚くらい悪い。

 これだけ心が弱いなんて……。あんなに、やる気満々だったのに。何か、心に来る言葉があったのかな。

 重圧に押しつぶされてしまったのかもしれない。


 エイトさんの服装はニクスさんと戦った時のまま変わっていなかった。

 そうなると二日間近くお風呂に入っていないし、飲まず食わずの可能性がある。

 もう、体調は最悪だ。

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