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評価の違い

キモいみたいだよお兄ちゃんを選んでくださりありがとうございます。

9話は、専門学校のエピソード後半になります。

よろしくお願いします。

……

……


調理室は静寂に包まれている。


物音一つなく、ただ佐藤講師の足音だけが響く。


佐藤講師は、学生がかつらむきした大根を前の調理台から一つ一つ確認している。


ある学生が調理した大根をまじまじと見たかと思えば、なぞるように大根を触る。

そして、板に挟んだ紙に何か書いている。


ある学生の大根は、少し触っただけで次の調理台に向かった。


佐藤講師の行動に学生全員がハラハラしながら見守っている。


仲が良い友人と手を繋ぐ人もいれば、じっと佐藤講師を見つめる人もいる。


コッコッコッ

佐藤講師の足音が僕に近づいてくる。

ついに、僕の大根を評価する番になった。


佐藤講師は、大根を両手で持ちじっと観察した。


怖い……

僕の足が小刻みに震えた。

緊張を落ち着かせようと僕は両手で服を力いっぱい握った。


「うん。」

佐藤講師が頷き、隆太の方に向かう。


その頷きは何?

えっ……もしかしてだめなの?

僕が思っていると隆太が調理した大根を佐藤講師がまじまじ見る。


「ふーん。」

そう言って佐藤講師は板に何か書きながら元の場所に戻っていった。


隆太を見ると、佐藤講師を鋭い目で睨みつけていた。


講師になんて態度してるんだこの人は!

失礼すぎるだろ!


僕はそう思ったが隆太がこっちを向くと怖くて反対の方へ視線を外した。


「はい、みなさん。お疲れ様でした。今から、みなさんの合否を発表します。」


佐藤講師の言葉にみんなの姿勢がガチガチに固まった。


「なお、帰る前に点数と改善点を書いた評価表もみんなに渡す。合格点は80点以上だ。」


それを聞きみんながざわざわし始める。


そりゃそうだ。

自分の実力が点数になって、改善点も指摘されるのだから。

僕も緊張で、両手が手汗でびっしょりになっている。


「よし、なら発表する。」

佐藤講師は板を見ながら、1人ずつ名前を呼び、合否を発表し始めた。


合格を喜ぶ人、不合格に落ち込む人。合否によって反応が綺麗に分かれている。


「丸山 竜馬(まるやま りょうま)合格。」


「池原 彩(いけはら あや)合格。」


「大久保 莉絵(おおくぼ りえ)不合格。」

先程の女性2人も発表されたが合否が分かれてしまった。


大久保さんは悔しいのか両手を強く握り、目から涙が出ている。

それを見て池原さんは、懸命に大久保さんを慰めていた。


いい友達だな。

これから一緒に成長するのかな。


「次、神崎 優人。」

僕の名前を呼ばれ思わず体がビクッと跳ねた。


「はっ、はい!」


「合格。」

佐藤講師の言葉に僕はしゃがみ込み深く深呼吸した。


「よかった〜」

思わず声が漏れた。


「佐藤 隆太。不合格!」

僕が安堵している横で隆太が不合格を通告された。


「ちょっと待て!」

隆太が佐藤講師に近づき胸ぐらを掴んだ。


周りから悲鳴と、隆太を止めるよう諭す声が響く。


「おい、隆太。離せ。」

佐藤講師はまったく動じず淡々と話す。


「なんで俺が不合格なんだ!なんで俺じゃなくあいつが合格なんだ!」

隆太が僕の方に向かって指を指す。


僕を巻き込むなよ……


「おい!聞いてるのか?なぁ、あね…!痛っ!」

叫ぶ隆太の両手首を佐藤講師が両手で力強く握った。


あまりに痛かったのか、隆太は佐藤講師の胸ぐらを掴むのを止めて、体を縮めながら両手首を押さえた。


「……よし。」

そう言って佐藤講師が前の方へ戻った。


「じゃあ、今から隆太と神崎の合否が別れた理由を説明する。」


えっ、理由聞きたくないんだけど。

僕の思いは届かず、佐藤講師は理由を話し始めた。


「まず、隆太。お前のかつらむきは確かに綺麗にできているところはある。だが、荒い。少しだが、所々大根の薄さが違う時がある。」


佐藤講師の言葉に隆太は歯ぎしりしながら悔しそうな顔をしている。


「次、神崎だが、最初は緊張しているのかぎこちない感じだったが、途中からは綺麗なかつらむきになっている。」


僕の評価を聞き周囲が僕の方を見ている。


僕は目線を合わせないよう下を向いた。


「そして、この評価は大根選びから調理までの評価だ。隆太、お前が周りを押しのけて挙げ句の果てに池原さんを怪我させそうになった。」


「それは、より良い大根を取ろうと──」


「黙れ。」

隆太の言葉を佐藤講師が低い声で遮った。


「……」


「一方、神崎は池原さんが転ばないよう支え、声もかけている。また、最後になっても、鮮度の良い大根を探そうと一本一本確認している。」


「そんなの、たまたまだろ?」

隆太の言葉に佐藤講師はため息をついた。


「いいかみんな。これから料理人を目指すのであれば仲間との協力が大事であることを覚えてほしい。」

佐藤講師の言葉にみんな頷き始める。


「1人で店を切り盛りする人も確かにいる。だが、店の多くは他の料理人・スタッフとも協力しないといけない。これは、社会人としての常識でもある。分かりましたか。」


『はい!』

隆太以外は全員返事をした。


隆太はただただ黙っている。

先程のイライラした表情ではなく何か思い出したかのように目を丸くして口を開けていた。


どうしたのだろうか?

しゃがんだ時どこかぶつけたのか?


その後、佐藤講師の指導のもといろんな野菜の切り方を教わった。


隆太は先程とは人が変わったかのように大人しく淡々と実習に集中していた。


それだけじゃない。

野菜を取りに行く時も大人しく後ろに並んでいた。


周りのみんなも隆太を警戒していたがあまりの変わりように驚いている。


ただ、怖い感じはしないが僕の方をじっと見ているのには変わらなかった。


何が変わったのだろうか?

そんなことを思いつつ僕は調理を続けた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

まだ、文章の改善があると思うので今年中には今まで投稿した作品を再編集していこうと思います。

また、各話ごとの後書きにキャラのプロフィールも時間があれば書いていこうと思います。

今後ともよろしくお願いいたします。

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